くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「賭博師ボブ」「影の軍隊」

kurawan2017-12-25

「賭博師ボブ」
こちらはユーモア満点のフィルムノワールの傑作。ここまで娯楽に徹して、しかもカメラアングルやカット編集のリズム感が半端なく旨いとなれば、一級品はこういうものだと言わんばかりである。監督はジャン=ピエール・メルヴィル。カメラは名匠アンリ・ドカである。

老年を迎えた主人公の賭博師ボブは、巨大カジノの強奪計画を画策、仲間を集め始め、周到な計画を練っていく。しかし、ほんの少しの仲間の気の緩みから、計画が女にバレ、そこからその友人を通じて警視にバレてしまう。

ボブと旧知の仲でもある警視は止めるように勧めるが、そんな話はないからとさらりとかわすボブ、警視はカジノにも注意するように連絡するも、警備は万全だからと無下にされる。

そして決行の日、ボブは見張りとしてカジノ内部に入って様子を伺っているが、賭博師の性か、つい金をかけて参加し始める。しかも、ツキがツキを呼びどんどん勝ち進んでいく。そして、自分の役割も忘れ夢中になるうちに、莫大な金を手に入れたところで、時間に気がつき慌てて飛び出すが、仲間が突入して来る。それに合わせて警察もむかえうち、若い仲間が撃たれ、ボブも捕まるが、カジノで勝った札束の山も一緒に積み込まれる。なんとも皮肉なラストシーンに思わずニンマリしてしまう。

これが大人のユーモアなのである。お見事!


影の軍隊
ジャン=ピエール・メルヴィル監督の代表作の一本であるが、かなりシリアスな大作という意味でもちょっと彼の作品群の中では異質の一本。とにかく画面が暗いのと二時間余りがちょっとしんどい。

物語は第二次大戦中、レジスタンスが非情の掟の中で抵抗していく様がひたすら描かれていく。しかし、この手の他の作品と違い、派手なアクションもなく、淡々とゲシュタポから逃れて活動する姿を描いていく。

リノ・ヴァンチュラ扮する主人公がドイツ軍に捕まるシーンから映画が始まり、そこから逃亡、次々と仲間がピンチになっては、その度に聡明な女性マチルダの機転などで救われていくが、最後の最後、彼女も捕まり、娘を助けるために組織を裏切ったため殺されてしまい映画が終わる。

ほとんどが夜またはドイツ軍の収容所内のシーンなのでとにかく画面が暗い。しかも、外に出るとつかまりやすいので、特に室内での活動が多い主人公たちの映像も陰影の中で展開する。

さすがにスリリングな展開や構図の見事さは素晴らしいが、ハードな内容と暗さに圧倒されてしまう一本だった。