くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「食べる女」「クワイエット・プレイス」

食べる女

期待していなかったのですが、これがまたとっても素敵な映画でした。物語の構成はとってもいいし、オーバーラップしながら展開するストーリーがとっても良くできています。それに一番のいいところは、最後がみんな幸せになる感じ。やっぱり映画はこうでなくちゃと思います。監督は生野慈朗。

 

二人の少女が地面に耳を当てて水の音がするかどうか見ている。音がしないからと走り去った後にトン子がやってきて耳をすます。カットが変わり、作家で一人暮らしのトン子の家で編集者のドド、多実子、美冬が集まってご飯を食べている。誰もがそれぞれの人生があり、男関係もあり、これからを考えているいわゆる女子トークから幕を開ける。昔ながらの中庭と井戸、縁側があるこの景色がまずいいんです。

 

ドドは免許の書き換えの場所で田辺というやたら料理のうまい男に出会う。ドドたちがよく行く珠美のバーでは飲んだくれていつも男と一夜の関係を持ってしまうあかりがいて、この日もいきづりの男と出て行く。やがて仕事の場で知りあった好青年といい仲になる。

 

多美子にはとにかく良い性格の彼氏がいるようだが、何かが足りないと悩んでいる。冒頭の少女の一人は料理好きで、ある時、道でトン子の飼っている猫を見つけ、ついて行ってトン子の家に行き、そこで井戸をもう一度掘ろうとしているトン子に出会う。

 

もう一人の少女の母ツヤコは耳タレで、離婚して二人の子供を育てている。

 

ここに、国際結婚をした夫婦がいて、アメリカ人の妻リサは、夫が料理ができなくても良いと言ったことを真に受けて冷凍食品ばかり出し、とうとう夫に逃げられる。意気消沈したリサはたまたま美冬と出会い、トン子の家に下宿して美冬の小料理店で仕事をするようになる。

 

こうしてそれぞれの様々な物語をさりげないカットの切り返しで描いて、次第に一つにつながって行くのだが、その構成が実にうまい。

 

やがてリサは一人前の料理ができるようになり、トン子のところを出ることに。トン子は下宿屋でもするかと張り紙をしたら、ツヤ子の娘が是非住みたいからと家族で移ってくる。

 

ドドはせっかく良い仲になった田辺が突然北海道に転勤してしまう。

 

そして今夜は、ドドたちは美冬に店に集まり、リサの独り立ちのお祝いをする。そして、トン子の下宿に来たツヤコの娘二人を見ようと女だけで出かけたところへ、田辺がやってくる、リサの夫も戻って来てくれとやってくるが女たちはいない。

 

やがてトン子の原稿も書き終わり、ホッと一息して外を見れば満月。卵かけご飯にかわってみんなが食べるシーンでエンディング。

 

とにかく素敵なんです。出てくる脇役の配置もいいし、誰もがいい人だし、嫌な思いをすることなく、人生ってこんなに楽しいんだなとつくづく元気になってしまう。何度も言いますが本当に素敵な映画でした。

 

クワイエット・プレイス

細かい見せ場や伏線が緻密に組み立てられて実によくできた構成なのですが、大元の背景が雑になっているために、せっかくがぶち壊されたという感じの映画でした。監督はジョン・クラシンスキー。

 

荒廃した街、隕石が落ちて来てそこにいたのだろうか、化け物のクリーチャーが人間を襲い始め、ほとんどの人類が滅亡している。ことが起こって89日目のテロップ。街のドラッグストアで物品を物色するリーとエヴリン夫婦と三人の子供の家族。音を立ててはいけないようで、裸足である。

 

一番幼い男の子が、スペースシャトルのおもちゃを取ろうとして落とし、すんでのところで受け止める。父のリーは、電池が入っていて音がなるからダメだと電池を抜いて取り上げるが、姉リーガンが内緒でおもちゃだけを与える。しかし男の子はそっと電池を持って帰る。

 

橋に差し掛かった時、一番後ろの弟がスペースシャトルのおもちゃに電池を入れスイッチを入れてしまう。慌ててリーが走り寄ろうとするが、クリーチャーが弟を食い殺してしまう。そして時は400日を超えたテロップがでる。

 

道に砂をしき、家の中にも音が出ないようにして、周りには警報の赤電球がつくようにした森の中の一軒家にリーたちは暮らしている。妻のエヴリンは妊娠しているようである。リーガンは自分のせいで弟が襲われたと悔やんでいて父も自分を憎んでいると思っている。どうやら耳が聞こえないらしい。

 

ある時、父と息子のマーカスが食料などを集めに出かけ、リーガンは、一人死んだ弟の供養に行った時、エヴリンに陣痛が始まる。出産予定の地下室に行き途中で階段に釘が出ていて、踏みつけ大きな音を出してしまう。クリーチャーがくると判断したエヴリンは警報の赤ランプをつけ、クリーチャーに備える。

 

異常を察したリーはマーカスに花火を上げさせ、その音でクリーチャーが家を離れた隙にエヴリンは出産、そこへリーが駆けつける。そして、一安心して、子供達を探しに行く。ところが、水漏れが起こっていて、みずびたしになりその音でクリーチャーがやってくる。

 

マーカスは帰り道でクリーチャーに追われなんとか逃げ延び、リーガンと落ち合い、近くの穀物貯蔵等へ行き父を待つが、なかなか来ない。リーガンは父が作った補聴器をつけていて、そのスイッチを入れると高周波の音が出てクリーチャーが近づけないのだが、それに気がつかない。

 

穀物貯蔵塔のてっぺんのパネルが外れマーカスが落ちて音が出てしまい、その音で、エヴリンに迫っていたクリーチャーがやってくる。リーガンの機転でマーカスを助け、またあの雑音が出てクリーチャーは逃げてしまう。そこへ父がやってくる。

 

ところが帰り道、クリーチャーに襲われ、トラックに子供達を隠し、自分が犠牲になって子供達を助ける。

 

そして、エヴリンの元にマーカスとリーガンがやってくる。そして、一匹のクリーチャーが迫ってくるが、リーガンの補聴器の雑音で追い払えるとわかり、マイクから流してクリーチャーを悶絶させ、起き上がったところへエヴリンがライフルを撃って破壊する。って撃ったら死ぬんかい!

 

その音で、まわりのクリーチャーが集まってくる場面がモニターに映し出され、迎え撃とうと構えるエヴリンとリーガンのカットでエンディング。

 

たしかに練りこまれていて、次々と見せ場が出てくる。しかし、最後にライフルで吹っ飛ばせるのなら、人類が危機に陥るほどの状態になるだろうか?さらに、ピンチの連続なのだが、水漏れにしても、出産時のピンチにしても、砂を巻いて裸足で歩くほどに慎重に身を守ってるのにずさんすぎる。それより、いくら弟を亡くしたからといって子供を作るのはあまりに甘くないか。

 

まぁ、そういう粗さは無視すればいいと思っていたが、いかにも詰まっていない気がして気になって仕方なかった。結局、よくできたB旧ホラーという感じの映画でした。