くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「億男」「ここは退屈迎えに来て」

億男

お金について考えさせられてくると、どんどんこの映画の魅力にはまり込んでしまう。映画の出来栄えより感情移入させられる作品でした。私はこの映画を褒めたいです。監督は大友啓史。

 

派手なホームパーティのシーンから映画が幕を開ける。ポールダンスをする美女、酒や女の乱痴気騒ぎで騒ぐ若者たち。そんな一角に九十九というIT企業で成功した男はいた。さらに傍らには一男という大学時代からの親友。実は彼は宝くじで三億円を当て、この日九十九の提案でパーティを開いて参加していた。

 

一人の美女あきらが一男と無理やりLINE友達になり去る。しこたま飲んで酔いつぶれた一男は翌朝目を冷ますと、九十九もいない。さらに預けていた三億円も消えていた。九十九に連絡するも通じず、唯一の手がかりのあきらに連絡を取る。

 

こうして物語は始まる。時は二週間前、今は別居している娘とのひと時の時間に、商店街の福引きで宝くじが当たる。三千万円の借金返済に昼は司書、夜は食品工場で働く一男だが、そんな一男から妻と娘は離れていた。

 

ところが、手にした宝くじが三億円に当選。同時に、大金を手にした人たちの不幸な末路の噂や情報が集まってくる。悩んだすえ、IT企業で大金を手にしている親友の九十九を訪ねる。そして冒頭のシーンとなる。

 

あきらを通じて、九十九が起業したバイカムというフリマサイト関係者を回り始める一男。九十九を始め、バイカムの売却で誰もが大金を手にしていた。

最初はバイカムのエンジニアだった百瀬。競馬場のVIP席で派手に遊ぶ彼に百万円もらい競馬をする一男。大穴を当てて一億円手にするも次のレースで全て失う。しかも百瀬は、馬券を買ったふりだけだったという。

 

次にあったのは、千住という男。今は、セミナーやカリスマ投資家として公演などで金儲けをしている怪しい男。彼もまた金に踊らされながらも、その一つの意味を一男に教える。

 

最後は九十九の秘書だった十和子。言ってみれば慎ましいアパートに切らしていたが、一男の帰り際壁一面に隠した大金を見せる。

 

三人と会い、それぞれの生き様を見るうちに、金の本質が次第に見え隠れしてくる。三億円あたり借金を返せば妻も帰ってくると思ったが、離婚届を急かす妻の姿を見る。

 

一男と九十九は学生時代モロッコに出かけた。その物語が後半の三分の一となる。そこで九十九はビジネスのヒントを掴み企業を決意したのだ。

 

金の何かを何気なく見えてきたように思って夜の列車に座る一男の前に九十九は金を持って現れる。そして金を置き、まだ見えない金の持つ意味を探すために消えていく。

 

一男は、戻してもらった金で、娘が欲しがっていた自転車を買って、妻と娘の住むアパートに届ける。

こうして映画が終わります。

 

所々にまるで行間を読むように、お金の意味が漂ってくる。人間が勝手に作り上げたもので、何もかも振り回されるようになった人達、その哲学的なメッセージにいつの間にかはまってしまった。脇役の面々は、アニメチックな装いでかなりデフォルメされているが、その非現実さもまた面白い。

 

映画の出来はともかく、私的にハマる作品でした。

 

ここは退屈迎えに来て

なんとも言えない映画。切ない青春ドラマのか、いまを考え悩む若者の心を描いた作品なのか、様々な女性を描写して、そのメッセージを観客に委ねたような一本でした。嫌いじゃないですが、こういう映画なんだろうなと感じるものが描ききれていなかった感じの作品。監督は廣木隆一

 

主人公?の私は10年東京にいて、今は田舎に帰り地元のミニコミ誌のライターをしている。車を運転んしているのはそのカメラマン。二人は地元のラーメン店に行き取材を終える。私は、あるとき出会った高校時代の友達との勢いで、高校時代に憧れた椎名という男の子の今に会いに行くことにする。

 

カメラマンの車に乗った三人は椎名がいま勤めているという教習所へと向かう。その途上、時間が高校時代に遡り、椎名の取り巻きの様々な高校生の姿が描かれていく。

 

密かに椎名に憧れる男子生徒、椎名の妹、中年の男性と付き合っている女子高生、そのほか様々な高校生の姿を当時と今を交錯させながら、ラストで一つになるわけでもなく、教習所へ着いた私と友達のシーン、さらに東京に行った椎名の妹のカットでエンディング。

 

なんかこういう時の流れ、青春への回顧をさりげなく描いたのだろうと思いますが、どうも不完全燃焼で、どの誰かという焦点を定めない脚本は映像としてはどうなのだろう、と思わせる映画でした。