くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ジャイアンツ」「来る」

ジャイアンツ」

名作という以前に大好きな映画なのです。監督はジョージ・スティーブンス。

 

やっぱり良かった。これだけの大河ドラマなのに全く飽きないストーリー構成と展開のリズムの完成度に圧倒されてしまいます。そしてクライマックスにジェットが酔いつぶれて、若い頃から憧れていた人妻レズリーのことを叫ぶシーンはやはり泣いてしまいました。

 

50万エーカー以上の広大な牧場を経営するテキサスの名家ベネディクト家のビックがメリーランドに馬を買いに来る。その家には美しい娘レズリーがいた。二人は一目で惹かれ合い、わずか二日間で結婚を決めてレズリーはテキサスのベネディクト夫人となる。

 

牧場にはビックの姉ラズが全てを仕切っていて、気の強いレズリーと何かにつけ反発、レズリーが連れてきた馬を乗りこなそうとして落馬し、死んでしまう。

 

この牧場の使用人でちょっと行儀の悪いジェット・リンクはラズに気に入られていたが、ラズの死で牧場をやめることにする。しかしラズの遺言で僅かな土地を手に入れていた。また、ジェットはレズリーにほのかな恋心も持っていた。

 

やがて、時は流れ、ジェットの土地に石油が出る。そして大富豪となったジェットは何かにつけて、まるで復讐するかのようにベネディクト家に楯突いてくるが、実はどれもレズリーへの想いゆえのことだった。

 

ジェットは数々の慈善施設を寄付、この日空港も建設し、アメリカ中の名士を呼び集めパーティをすることになる。そして、ビック達家族も呼ぶが、ジェットは演説の席に着く前にすでに酔いつぶれてしまう。

 

密かに彼に憧れたビックの娘ラズはそんなジェットが見ていられず、パーティの後で一人酔いつぶれているジェットのいる会場に行く。そこで、ジェットは、美しいレズリーへの思いを叫んでいた。

 

ビック達は再びテキサスに戻る。懐かしい居間でレズリーとビックはお互いのここ数日を語り、そして時が流れたことを懐かしむ。子供達もおもいおもいの道に進み、孫もできた。時は流れた。

 

所々に挿入されるメキシコ人への偏見など、時代背景も的確に描きながらある家族の物語を壮大なスケールで描くストーリーは圧巻である。これこそ大作、これこそ名作と呼べる映画だと改めて涙ぐんでしまいました。

 

「来る」

原作があるのですが、明らかに映像として昇華しきった傑作。まさに中島哲也監督ならではの世界、ホラーエンターテインメントと言える作品でした。時間を感じさせないテンポとリズム感に陶酔してしまいました。

 

サイケデリックなイラストとハイテンポな打楽器を使った音楽から映画が始まる。一人の男がマンションの部屋の中に水に入った鉢を敷き詰めている。割忘れた鏡を破る。一本の電話が入り。「呼びましょう。あとは私の仕事です」という言葉。そしてタイトルから物語は本編へ。

 

一人の気のいい若者田原は香奈という恋人と見事ゴールイン。幸せ満点の結婚式。会社の後輩が来客があるからと言ってみると誰もいず、「知紗さんの件で」と伝言を残して消える。直後後輩が謎のけがをし入院。

 

一方、田原の幸せな新婚生活、さらに子供も生まれ、順風満帆、の映像なのだがどこか歪んでいる。子供をないがしろにし必死で良きパパを演じているBLOGの書き込みで必死の田原。どこか疲れが見えている香奈。泣き叫ぶ娘の知紗。

 

そして2年、田原は何かに狙われている気配を感じ、友人の津田の紹介で野崎を紹介され、霊媒師で風俗嬢の真琴に会う。そして何かが田原の家族に迫っていると告げられる。

 

田原の周りで不可解なことが起こり、さらに野崎も不気味な影を感じる。そして、冒頭のシーン。待ち構える田原に二本の電話。それぞれが別の指示をしてくるので混乱していると、とうとう田原は体を半分にされ魔物に殺される。

 

知紗と香奈の生活。見えてくる田原の過去。疲れ切った香奈はとうとう津田といい仲になる。しかし、我に帰り、知紗と逃げた香奈だが、魔物に襲われ、香奈はトイレで死ぬ。そして、真琴も知紗も行方不明になり、ここに真琴の姉で日本一の霊媒師琴子がやってくる。

 

琴子は日本中の実力ある除霊者をマンションの周りに集め、警察の上層部を通じて周りを閉鎖して最後の対決へ。一体何者?

 

そして最後の対決。圧倒的な存在感で立ち向かう松たか子の琴子がまずすごい。そして、野崎はかつて恋人の子供を堕ろさせた過去があったりと子供に対するメッセージが見え隠れしながら、やってくる何かと対決。

 

知紗が呼び込んだ魔物であるかの説明の後、知紗をあちらの国に送ってしまうことで除霊しようとする琴子に真琴や野崎が反発して、苦戦の末、琴子は自分を犠牲に相手を倒す。

 

元の日常に戻り、真琴と野崎は知紗を抱いて今後をどうするかと考えながらエンディング。

 

とにかくテンポが抜群に良くて、短距離走を走り抜けるような面白さがあり、一方で、何かわからない不気味な怖さがあり、子育てや母と子、父と子というきれない絆に何か潜ませたメッセージもある。

 

津田や最初に入院する田原の後輩のその後をほっぽり出したキャラクター設定は少し雑だが、映像を楽しむエンタメ映画としては最高の好みの作品でした。やはり中島哲也は好きですね。