くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「デッド・エンド」

「デッド・エンド」

さすが、ウィリアム・ワイラー監督という一本で、綺麗に決まった画面と丁寧に紡がれるストーリーのは見事です。1930年代のアメリカ、貧困と富裕層の分離が進む社会背景を的確に描きながら、ヒューマンドラマを描く分厚いストーリーはリリアン・ヘルマンの脚本の素晴らしさでしょう。

 

貧民街のま側にそそり立った巨大マンション。明らかに育ちが違う人々が住み、一方ではその日の暮らしに困る人々が住む。日常茶飯事に起こる小さな犯罪の中で、壁を作って格差を見せつける巨大マンションの住民。

 

ある時、貧民街の少年トミーがマンションに住む判事の弟をペンで刺す事件が起こり、何がなんでも捕まえろと息巻くセレブたち。一方、難しい立場ながら、任務をこなそうとする警官の姿。そこに、ギャングで懸賞金のかかっているマーチンが整形した顔で故郷の貧民街に帰ってくる。そして一山当てようとセレブの息子の誘拐を画策するも、結局阻止され、その争いの中で撃たれて死んでしまう。

 

犯罪者の移り変わり、世相の変化、そして間も無くやってくる第二次大戦への世界の情勢の変化がじわじわと見えてくるカメラワークが絶品。

 

結局、トミーは捕まり連れていかれ、カメラはゆっくりティルトアップして、巨大なマンションの姿を遠景に捉えて、手前に貧民街を写して映画が終わる、見事な構図である。一級品の作品の仕上がりの良さを見せつける映画でした。