くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「かぞくいろ RAILWAYS わたしたちの出発」「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」「黄色の部屋」

「かぞくいろ RAILWAYS わたしたちの出発」

このシリーズの中では一番良くできた映画だった。普通の展開とラストではあるが、それぞれが丁寧に演出されている。若干、脚本の荒いところもあるがこの程度なら良いかと思います。監督は吉田康弘

 

晶と夫の連れ子の駿也が、九州の義父節夫の元を訪ねてくるところから映画が始まる。息子修平の死も知らなかった父修平は、駿也の亡き母の後妻にきた晶のことも初対面で驚く。

 

東京の家を追い出されたという晶と駿也は節夫と暮らすようになる。列車が好きな父修平だったが駿也も大好きで、この地に残るローカル線に心惹かれる。そんな駿也の姿を見た晶は運転手になることを決意、必死で勉強して見事試験にパスをする。

 

しかし晶は見習い期間に鹿を跳ねたことで気持ちが不安定に。一方、駿也も学校で両親のことを作文にするというイベントで父を生きてるかのように作文に書く。そしてその帰り、駿也は晶にひどいことを言ってしまい、晶は東京へ一人戻る。しかし、気を取り直した駿也は晶に謝り、節夫を含め三人で新たな旅立ちを決意する。

 

運転手として独り立ちした晶が初運転をする日で映画が終わる。節夫の家の向こうに一両の列車が走るロケーション設定がまずとっても良い。それと、何気ないドラマを丁寧に演出していった空気が好感。取り立てる作品というほどではないが、見て損のない映画でした。

 

「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」

難病者の殻を被ったヒューマンドラマという感じの作品で、素直に考えさせられたし、良かったです。監督は前田哲。

 

せっかく付き合っているのに最近会ってくれない彼氏の田中が二股でもかけてるんじゃないかと、田中の言っているボランティアの現場に恋人の美咲がやってくるところから映画が始まる。

 

その家には筋ジストロフィーで身動きの取れない鹿野という男が、ボランティアに好き勝手なことを言っていた。たまたま夜当番が来れなくなり、仕方なく田中に付き合った美咲は、いきなり夜中にバナナが食べたいと鹿野に言われ夜の街に飛び出す。

 

そしてようやく買ったバナナを鹿野の前に叩きつける美咲にすっかり鹿野は一目惚れしてしまう。20歳までの命と言われていたのにすでに34歳の鹿野、ボランティアにはわがまま放題を言っているのだが、誰一人として嫌な顔をしない。そんな姿に、鹿野のわがままで田中とのデートが潰れていく美咲はとうとう切れてしまう。

 

しかし、鹿野は謝罪の手紙を美咲に渡してもらい、なんとか仲直りするが、実は美咲と田中が恋人同士であることは知らなかった。

 

医学生で大病院の一人息子の田中は、教員を目指す美咲にすっかり惚れ込み、自宅に連れて行くというが、その場で、美咲は教育大生であることは嘘だと打ち明ける。ショックを受けた田中は、美咲と距離をおき始めるが、落ち込む美咲に、鹿野は、嘘を現実にしたらしいと、大学にチャレンジすることを勧める。

 

鹿野の体調は一進一退だったが、一生懸命生きる鹿野にどんどん惹かれる美咲。しかし、心の隅には田中が存在した。

 

やがて、鹿野は自発呼吸が難しくなり、人工呼吸器をつけざるを得なくなるが、一旦は声が出なくなった鹿野だが、美咲が見つけてきた克服例を看護師たちに黙って実行。とうとう喋れるようになる。

 

そしてそのパーティで鹿野は美咲にプロポーズするが、やはり田中の事が気になる美咲はことわる。

 

しかし、体が弱ってくる鹿野について、担当医は今の内に好きなことをさせるようにと言い、久しぶりにドライブする。しかし、美咲も田中も来ない。そこで鹿野は、死にかけた芝居をする。そんなこととは知らない田中と美咲は慌てて飛んでくるが、鹿野の茶番だと気がつく。そして鹿野は田中と美咲が恋人同士だと知り、言葉をかけてやる。

 

一旦は医者になる夢を諦めた田中だが、もう一度目指すことを決め、7年後、鹿野がなくなったシーンに続いて、医者になった田中が往診に回るシーン、美咲が小学校で教えるシーンが出てエンディング。

 

コミカルに処理した演出が功を奏し、中盤、あざといフラッシュバックはあるものの全体が爽やかな仕上がりになっていました。

 

「黄色の部屋」

ちょっとシュールな前衛的な構図と影の組み合わせがなかなかの雰囲気を醸し出した推理サスペンスで、ガストン・ルルーの原作らしいちょっと不気味な空気感も漂う一品でした。。監督はマルセル・レルビエ。

 

ある真夜中、一人の金持ちの令嬢が襲われ、悲鳴と銃声が響く。しかし、彼女が襲われた黄色の部屋は密室状態で、犯人は逃走。

新聞記者のルルタビーユは、この謎を説くべく調査を開始、敏腕の警部も参加し、真相に臨む。

 

このルルタビーユという男は、実に身が軽くひょうきんなキャラクターで登場するので脇役かと思ったが、次々と謎を明らかにしていき、真犯人はもう一度、回復した令嬢のところに来ると断言する。

 

そして、ルルタビーユたちは待ち構えるが、警部が自室に招待し食事をしたところ全員が眠らされてしまい、唯一ルルタビーユの社の編集長だけが、水しか飲まなかったので助かる。しかし犯人がやってきて、なんとか目を覚ましたルルタビーユが後を追うが、森番が殺される。

 

クライマックスは法廷となる。犯人と思われた男は死んでしまったが、謎を明らかにするべく裁判が行われる。そこへ、アメリカで真犯人の証拠を集めたルルタビーユが登場。真犯人は警部で、実はその正体は世界的な犯罪王だと指摘する。しかも、その男と令嬢はアメリカで夫婦だったと示す。

 

こうして映画は終わるのだが、よく理解できていない部分があったままのエンディングになった。製作年が1930年ということもあり、今の感覚で見ると理解できないところがあるのですが、令嬢の家の光と影を多用し、奥に深い斜めの構図などなかなか見ごたえのある絵作りが素晴らしい。まさにフィルムノワールという一本でした。