「古都憂愁姉いもうと」
決して名作とかそういう類の映画ではないのですが、地に足がついた日本映画という佇まいを見せる作品でした。俳優陣がしっかりしているというのもありますが、やはり、スタッフも含め、その根底から築きあげた上での技が見られるという感じでした。監督は三隅研次です。
京都の老舗料理店を営むひさ子ときよ子の物語ですが、八千草薫演じる旅館の女将志麻や作家の結城がやたら出てくるのでどっちが主演かと思ってしまう。それほど登場人物が豪華というのもこの映画の楽しみである。
妹のひさ子には許嫁の明男という青年がいるが、どうも最近煮え切らず、そんな二人の縁談を仕上げようと奔走するひさ子に明男は猛烈なアタックをかけ、二人は駆け落ちすることになってしまう。
物語の発端がかなり強引だが、要するのこの後、喧嘩別れになった姉妹を周りの人々が仲を取り持っていく話で、古き良き人と人とのつながりの暖かさがじわざわ感じられる。
ラストは全て丸く収まってエンディング。たわいのない話ですが、一つ一つの仕草や立ち居振る舞い全てがしっかりと大人の映画になっているのは流石に見事なものです。
導入部の長回しでしっかりと役者の演技を捉えるカットや、その後の京都の街並みを巧みに使った演出、安易な濡れ場シーンでごまかさない大人と女の機微などはぜひ見習ってほしい作品です。これが映画ですね。
「愛染かつら」(木村恵吾監督版1954年)
何度も映画化されている定番の恋愛映画で、今回見たのは鶴田浩二と京マチ子のコンビ版。こういう古い映画の良さは、なんだかタイムスリップしたような錯覚に陥るところですね。その意味で楽しいひと時でした。
物語は今更です。大病院の若先生と看護婦の恋愛物語で、すれ違いドラマがこれ見よがしに展開してラストのハッピーエンドへ強引に持っていく。
映画作品としてのこれというポイントもないですが、レトロ感満載の人物描写や時代背景、人々の考え方などを見ているとそれだけで、タイムスリップした感じで時間を遡ることができます。