くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「5%の奇跡〜嘘から始まる素敵な人生〜」「希望のかなた」

kurawan2018-01-16

「5パーセントの奇跡〜嘘から始まる素敵な人生〜」
実話を基にした物語ですが、全体に非常に軽快でノリのいい作品に仕上がっていて、見ていて全く退屈しないし、障害者を扱った物語ながら、無用な暗さを排除した脚本が良かった。ただ、主人公サリーの実生活の部分の暗部を軽くかわした感がないわけでもなく、ここももう少し丁寧に掘り下げておけば深みのある作品に仕上がったかもしれません。監督はマルク・ローテムント

主人公サリーがホテルの体験実習をしているシーンに始まります。五つ星ホテルで勤めることが夢の彼ですが、間も無く先天性の眼の病気が発覚、健常者の5%の視力しかなくなってしまう。しかし、どうしてもホテル勤務を夢見る彼は家族の反対を押し切り、ミュンヘンのホテルに研修生として応募する。しかも障害を隠さないとどこも入れてくれないので、持ち前の努力で、健常者として受け入れられるのです。

ところが、研修が始まったもののやはりそこには無理があり、やがて彼の周りの人も気がつくに連れて彼を助けるよになる。実話なので決して嘘ではないでしょうが、ややご都合主義的な展開がないわけでもありません。

さらに、そこに出入りしているラウラという女性に恋してしまったことから事態が変わり始める。さらに父親が浮気をして家を出て、家庭も窮地に追い込まれ
サリーはその援助と自分の仕事に翻弄され薬にも手を出して、とうとう大失敗をして、全てがバレて追い出されてしまう。

しかし、職場で知り合ったマックスの力添えもあり、終了テストを受けさせてもらい見事合格。とまぁ、ハッピーエンドの展開。努力に努力を重ねるサリーの姿を嫌味なく演出して行ったのが良かったし、ありがちなエピソードが散りばめられていますが、非常にスタイリッシュにこなして行くので、話が陰に沈まないのがいい。

決して傑作という仕上がりではないけれど、ヨーロッパ映画ならではの明るさが見られる作品でした。


希望のかなた
アキ・カウリスマキ監督のアイロニー満載の作品で、独特のリズム感と感性にいつのまにか引き込まれてしまう。少々、個性が強すぎるすしネタなどの笑いもあるものの、ユーモアの中に、さりげなく忍び込ませる難民問題のメッセージがなかなかの一本でした。

貨物船の積荷の中から真っ黒な顔のカーリドが出てくる場面から映画が始まる。シリアからやってきた彼は早速難民申請をするが、結局拒否され、本国送還が決まる。しかし、送還される日、逃げ出す。

ここにシャツの会社を清算しその金でレストランの経営を始めたヴィクストロムという男がいる。このレストランに集まる三人の従業員もまた難民らしい。このレストラン、最初は無国籍料理の店で缶詰を出したり、寿司屋をやってわさびを山盛りしたりとにかくふざけているが楽しい。

たまたま、ネオナチに襲われて逃げたカーリドがこのレストランのゴミ置場にいたところをヴィクストロムに発見されヴィクストロムの店で働くことになる。

カーリドは生き別れた妹を探していた。程なくして、妹の所在がわかり、再会したカーリドだが、妹を宿舎に送った後、またネオナチに襲われ腹を刺される。しかし、翌朝、妹に難民申請するように アドバイスし、送り出して自分は浜辺で横たえて映画が終わる。

全編が皮肉っぽいものの、ヒューマンドラマとして見せてくるあたりはちょっとクセになる一本。面白かったです。