くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「アランフエスの麗しき日々」「ヒトラーに屈しなかった国王

kurawan2018-01-26

アランフエスの麗しき日々」
ペーター・ハントケの舞台戯曲を映像化したものですが、全編会話劇だあるために、正直しんどいです。ただ、カメラワークやカットの切り返し、音楽の変化などでリズムを作り出していくヴィム・ヴェンダース監督の感性はなかなかであるが、ひたすら会話の内容を追いかけていくことになるのは終盤嫌になってきた。

まず情景を延々と捉える静かなカメラワークから映画が幕を開ける。夏の午後、涼しい風が吹いている庭に一組の中年の男女が座っている。その奥の部屋に、今回の話を書いているであろう作家らしい男がタイプライターを打っていて、この構図で物語が始まる。

といっても庭の男女が、椅子に座ったまま、会話をするのを捉えていくのである。性的体験に始まって、夏の時代、子供時代などどんどん静寂の中の会話劇が熱を帯びてくる。時折、作家のカットに切り替えしながら、時にカメラが動いたり引いたり繰り返していく。

後半は少しづつ男性が立ち上がったりし始めるが、基本的にシチュエーションは動かない。まさに舞台劇の典型的な展開なのであるが、詩的な演出で見せようとする監督の意図は映像として表現できているのではないかと思います。ただ、単純にしんどいです。そういう映画でした。


ヒトラーに屈しなかった国王」
ドキュメンタリータッチの手持ちカメラを多用した緊張感あふれるサスペンスフルな映像がなかなか見ごたえがあるし、ドラマ性もしっかり描けていてなかなかの佳作でした。監督はエリック・ポッペ。

ノルウェーが独立に至った史実の説明から映画が始まる。この場面からのメインタイトルがやたら長い。そして時は第二次大戦、ヒトラーノルウェーに侵攻してくる。

ヒトラーは交渉する一方とイギリスからの擁護という名目ながらみるみる武力で迫る。一気に緊迫感溢れる本編へのなだれ込みはなかなかの脚本である。そして、政府のクーデターから国王たちは一気に逃亡生活になるが、時間を細かく説明してわずか三日間の物語としているため、どんどん期限が迫る感じである。

ノルウェーに好感を持つドイツ公使が必死でドイツの武力を抑えようとするが、ヒトラーの猛攻でみるみるノルウェーは占領されていく。そして、公使は国王との直接交渉で、なんとか国民を守るように迫るが国王は断固としてヒトラーの提案を拒み、結局、爆撃攻撃にあってしまう。

信念を貫いた国王として尊敬されているとテロップは出るものの、この決断のために民間人に死傷者が出たことは確かだし、実際国王たちは終戦までイギリスに逃れているのである。物語の是非はともかく、映画としてのクオリティはなかなかの一本でした。見ごたえありです


「シークレット・デイ」
未体験ゾーンの映画たちで見た作品。目当てはダイアン・レインダコタ・ファニングである。しかしながら、ちょとした作品で、一般公開しても大丈夫だったのではと思える出来栄えの映画でした。少々、ミステリーがやりすぎかと思えなくもありませんが、掘り出し物だったかも。監督はエイミー・バーグ。

少女ロニーが家に駆け込んでくるシーンに映画が始まる。そして彼女と友達のアリスが友達のパーティに行くことになる。いかにも不良っぽいロニーに対し、デブながら普通の子というイメージのアリス。しかし、会場でロニーが憎たらしいことを言ったので、帰らされる。帰り道、玄関先に置き去りにしている赤ん坊を見つけたロニーは・・・とタイトル。

タイトルバックで、赤ん坊がさらわれ殺された記事。二人の少女が捕まり少年院に送られた記事が出て本編。

ロニーは娘になっているがいかにも不良娘という感じ。アリスは仕事が見つからず、ふらふらしていて、かなり太ってしまっている。ある日、黒人の少女が行方不明になり、女刑事ポーターが担当する。彼女はかつて、ロニーたちが誘拐したとされている赤ん坊を発見した担当官だった。

早速、ロニーとアリスに疑いの目を向け捜査が始まるが、やたら、アリスの母親がしゃしゃり出てくる。捜査が進むにつれ、アリスは少年院で職員との間に赤ん坊ができて取り上げられた事実が判明。ポーターはそれを緒に、今回誘拐された赤ん坊はそのアリスの相手だと見抜く。そして、7年前の事件の真相は実はアリスが主犯で、アリスはロニーに犯行を起こさせたことがわかる。

ロニーが、母親に泣きつき、母親はアリスにも応分の罪を与えるために、アリスがいた証拠も残したのだ。つまり全ての犯人はアリスだった。

映像がフラッシュバックされ、7年前赤ん坊をみているのはロニーではなくアリスであるカットでエンディング。

つまり、7年前、まんまと罪を暴かれたアリスとその母親は、今回の事件でかつての事件も無罪だったと司法取引したのである。ロニーは終盤お風呂場で自害してしまう。

とまぁ、なかなか練り込んだ作品で、原作がしっかりしているのだろいう。なかなか見ごたえがありました。