くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ロープ/戦場の生命線」「スリープレス・ナイト」「ジュピ

kurawan2018-02-14

ロープ/戦場の生命線
紛争地帯の平凡?な日常を描いたちょっとした佳作、想像した以上に面白い作品でした。監督はフェルナンド・レオン・デ・アラノアです。

井戸の底から死体が引き上げられようとしている、カメラは井戸の底から空を見上げている。このオープニングが面白い。引き上げられていく死体がロープがちぎれて落下。作業していたのは、紛争地の衛生管理を請け負うボランティア団体。リーダーのマンブルゥらは、ロープを手に入れるために、心当たりに向かって行く。途中、一人の少年ニコラを拾い、かつての恋人も同乗することになって、ロープを探しに行く。

売店で断られ、倉庫を管理している男には国旗のロープを依頼するが断られ、ニコラの言葉で彼の家に行くと、狂ったように吠えている犬のロープだった。しかも麻酔薬を使うもどうしようもない。

ニコラ に、家の中にあるサッカーボールをとってきて欲しいと言われ、マンブルゥらが入って行くとなんと、両親が首を吊っていた。しかし、そのロープを取り現場に引き返す。

そして引き上げ作業を再開するが、和平が決まり死体を勝手に動かせなくなったと、軍から作業中止を命じられる。そして、再び次の現場に向かうマンブルゥたちに雨が降り出す。

これまでマンブルゥたちが関わった人々のショット、そして雨で水が溢れ井戸から死体が浮き上がり外に引き上げる地元民たちのカット。なんとも皮肉だが、これが戦場の現実だと言わんばかり。この風刺がなんとも面白い。

映画の中にウィットが散りばめられ、地雷のエピソードなども秀逸。ラストの締めくくりにニヤッとさせるあたりはなかなかの佳作。楽しめました。


スリープレス・ナイト
過去作品のリメイクだということですが、ノンストップアクションとしてめまぐるしい展開に飽きずに最後まで見ることができました。面白かったと言える一本。監督はバラン・ボー・オダー

カジノの夜、派手なカーアクションから映画が幕を開ける。そして、二人の男ヴィンセントとショーンが25キロのコカインを強奪するが、何者かに襲われ銃撃戦となる。そして、なんとか脱出したが、そのコカインは麻薬組織のボス、ノヴァクに渡すためのものだったため、ヴィンセントたちが追われることになる。

ヴィンセントは潜入捜査官で二年間の潜入捜査をしていたのだが、この事件で息子が誘拐されてしまう。一方ヴィンセントが潜入捜査官であることを知らないブライアントがヴィンセントたちをマークし始め、物語が錯綜して行く。

息子を救出したかと思うとまたピンチになり、一方、麻薬組織と内通する警察官がわからないサスペンスも挿入され二転三転して行くアクションシーンが連続。

格闘シーンにカンフーを交えた迫力あるシーンを演出する一方でカーチェイスも面白く、全編ほとんど退屈しない。

結局ラストは、ブライアントにもヴィンセントの役割が理解され、ブライアントが組んでいた警官が内通者だとわかるのだが、実はまだ警察署内に内通者がいたというエピローグでエンディング。

オリジナル版の出来栄えがどういうレベルかわからないが、リメイクされるだけあって、なかなか面白かった。


ジュピターズ・ムーン
非常にメッセージ性がしっかりしたSF映画の秀作。いやSF映画というジャンルに入らないかもしれません。監督はコーネル・ムンドルッツォ

主人公アリアンがどこかに搬送されている。どうやら彼は難民で、父とともに国境を越えてハンガリーへ向かっている。ところが川を渡るところで国境警備に見つかり、警備局のラズロに撃たれる。その直後、アリアンは空中に浮かぶのである。

やがて難民キャンプに収容されたアリアンは、手術ミスで人生に悲嘆している医師のシュテルンと出会う。アリアンは彼の前で浮遊したため、シュテルンは訴訟費用の捻出のために彼を利用しようと考える。

一方、ハンガリーへ潜入した難民の中にテロリストがいるという情報もあり、難民を執拗に追うラズロ。やがて地下鉄で爆破事件が起こり、犯人はアリアンの父とアリアンではないかという推測でラズロはアリアンたちを追い詰めていく。

一方のシュテルンは、アリアンを使って金を稼いでいるうち、彼の存在が何か意味があるものではないかと考え始める。そして、いつの間にか彼を守り、逃がそうと奔走するようになる。

空中浮遊するアリアンの姿は、どこか天使を思い起こさせるイメージも次第に人々の中に芽生え始める。

そして、最後の最後、追い詰めたラズロの前で、窓から空中に飛び出すアリアン。守りきったシュテルンはその場に倒れ、ラズロは一度は銃口をアリアンに向けるが、引く。街では、空中に浮かぶアリアンの姿を見つめる人々がいた。まるで、地面ばかり見ている自分たちは、空に目を向けなければいけないと言わんばかりのメッセージでエンディング。

若干宗教がかってはいるが、延々と長回しのカメラや地面すれすれのアングルなどテクニカルな撮影も素晴らしく、映画としてのクオリティはなかなかのものです。ハンガリー映画という特殊性もまた見所だったと思います。