くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「マンハント」「東の狼」「犬猿」

kurawan2018-02-15

マンハント
完全に香港テイストのガンアクション映画として仕上がっていました。監督はジョン・ウー、まさに彼の映画です。ただ、ストーリー性はほとんど無視して展開するので、原作である「君よ憤怒の河を渡れ」の中身はほとんど意味をなしていません。しかもクライマックスは完全にB級SFタッチになるところがまた香港映画的で楽しい。

世界的な製薬会社が開発した新薬を巡って、その国際弁護士として雇われているドゥが殺人事件に巻き込まれるところから物語が始まる。

手際よく、見事な活躍を見せる捜査一課の矢村はドゥを追ううちに彼が無実であることに確信、彼とともに製薬会社の不正を暴くために行動する。

サスペンス説明は手際よいカットで説明してしまい、ほとんどが、薬品会社が雇った殺し屋たちとのアクションシーンが次々と繰り出される。個人的には冒頭の最初のガンアクションが一番面白かったのですが。

結局、ラストはハッピーエンドになるのですが、ワイヤーアクションを多用し、次々と吹き出す銃声と銃弾がまさにジョン・ウー監督の世界である。

二丁拳銃が出るわ、刀のシーンが出るわ、カーアクションに水上バイクのシーンはあるわ、例によって鳩が舞うシーンも満載。ション・ウーファンにはたまらない映画になっていますが、全体の仕上がりは彼の作品の中では中の下という感じだったかと思います。

ついでに言えば、日本の俳優(今回の場合福山雅治)がいかにスケールが小さいかを目の当たりにしました。


東の狼
東吉野村を舞台にした明らかに映画祭向けに作られた地味な映画ですが、こういう真面目な作品もたまに目にしておくのもいいかと言える一本。エグゼクティブプロデューサーに河瀬直美が参加というだけでちょっと見に行きました。監督はカルロス・M・キンテラ。

東吉野村に100年以上前に絶滅した狼を追い求める老ハンターアキラが主人公。地元の猟師会の会長であった彼は、間も無くその職を辞そうとしていた。予算のほとんどを夜間カメラに使い切り、狼の存在を証明しようとするアキラ、やがて彼が会長を辞してから一年後、カメラに狼が映る。

物語は狼にかつての恋人を重ね合わせるシュールなシーンが無理やり挿入されるが
物語の芯はしっかりと綴られている。ただ、藤竜也の存在だけで十分に最後まで見せてくれる。本当に真面目な一本でした。


犬猿
明らかにミニシアター向きのこじんまりとした作品で、展開の詰め込み方は凝縮されていて面白いのですが、作品全体に緩急がなくリズム感が作り出されていないために、ラストのふっと息を抜く展開からの再度元の木阿弥に戻る面白さが際立たなかった。監督は吉田恵輔

印刷の営業をする和成が駐車場で絡まれるシーンから映画が始まる。ところがチンピラの一人が、和成は卓司の弟だからと言うだけで、びびって手を引いてしまう。和成の兄卓司は強盗事件で刑務所にいたが、出所してきたのである。

和成が出入りする印刷工場の社長由利亜は、段取りもよく仕事ができるがいかんせんブスである。妹の真子は見た目が可愛いが何をやっても要領が悪い。

こんな兄弟と姉妹が絡み合って、それぞれの僻みから、どんどん話が面倒になってくるのが本編。

和成に気がある由利亜は真子の助けもあり、一緒に食事に行くことになり、由利亜はどんどん和成に引かれて行く。しかし間も無くして真子は和成と交際するようになる。

一方の卓司は輸入ドラッグで大儲けし羽振りが良くなるものの、実は違法ドラッグであることがわかり、警察からマークされ始める。

地道な弟和成と適当な卓司の対比、真面目だけの由利亜と顔だけの真子の対比で、どんどんそれぞれの兄弟の感情がすれ違い高ぶって行き、とうとう爆発、恨みを買っていた卓司はチンピラに刺され、自分を卑下して落ち込んだ由利亜は自殺未遂を起こす。そしてそれぞれの兄弟姉妹に救急車を手配され、病院で四人一緒になって、ほのぼのした子供時代が写される。この作品で初めて見せるほのぼのシーンで、それまでにも匂わすシーンはあったが、少し弱かった。

結局退院後、またそれぞれいがみ合って映画が終わる。作り方としては面白いし、そう言う展開なのだろうと納得するのですが、もうちょっと脚本の完成に一呼吸置いて欲しかったです。