くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「サニー/32」「女ざかり」「転校生 さよならあなた」

kurawan2018-02-19

サニー/32
面白そうな内容だったので見に行ったのですが、どこか歯車が噛み合っていない感じで、伝えたい部分と描く映像が微妙にずれている気がしました。監督は白石和彌

中学教師の赤理は平々凡々と暮らしていたが、時折ストーカーらしき人物からのメッセージに怯えていた。しかし、その怯えは一方で冒険を楽しんでいるという裏腹の気持ちも混在していたのです。

かつてこの地に小学生による同級生殺害事件があり、その少女が可愛らしいということで、サニーの愛称でネット上でもてはやされていた。そして、サニーの現在の姿だと思われた赤理は二人組の男小田と柏原に拉致され、サニーとして弄ばれる。

この導入部から今ひとつ彼らの動機が見えてこない。そして、彼女を見世物にしようと柏原たちが連れて来た男女が絡んで、殺人が起こり、話が混乱、そこへドローンを使うネットオタクの少年が参加することで話がエスカレート。しかも、一線を超えた赤理は自らサニーと名乗り、拉致した人間たちを逆に操りネット上で神格化されて行く。

かなり強引な展開で、いつもの暴力シーンなども存在し、白石監督らしいと思うのだが、赤理は、一人の教え子がかつてのサニー事件のようなものを起こしそうな不安があり、助けようとしているナルシストの面も描かれ、これがかえって映画の流れをブラしている気がします。

そんなある日、もう一人ネット上に本物だと名乗るサニーが現れ、この展開も、果たして必要なのかという挿入で、さらに赤理がネットのサニーに問いかけや相談をする下りになると、どんどん物語が甘くなって行く。

やがてふとしたことから殺し合いがエスカレート、警察沙汰になり、かろうじて逃げた赤理と小田、そしてネットオタクの少年が走り去って映画が終わる。赤理の心配していた教え子も何事もなく終わる。

全体が甘くなってしまい、迫力に欠けてしまったという感じの仕上がりでした。濃い役者を揃えたにもかかわらず本当にもったいない。


「女ざかり」
細かいカットの切り返しを繰り返して行くハイスピードな展開で見せるなかなかの秀作。大林宣彦監督作品としては見せられる映画でした。吉永小百合がまだまだ美しいのもいいです。

主人公南弓子が、新聞社の論説委員になるところから映画が始まる。もともと希望していた部署なので、ワクワクして最初の仕事にむかうが、最初の社説でちょっとした書き違いから、どこからともなく、彼女に権力が忍び寄り、配置転換の話になってくる。

物語は、そこから、娘のつてや愛人のつて、果ては大女優だった叔母のつてを頼って解決して行くのが本編。

散りばめられるセリフの数々が知的で、細かい切り返しのカットの連続のスピード感があれよあれよと物語を妙な陰湿にせずに進んで行く。また大林監督独特の遊びシーンも満載され、ちょっとした笑いの種を楽しむのも面白い。

ラストは、うまく解決したものの、そういう日本の新聞社の姿に疑問を感じ、一旦会社を辞めることを決意する。

結構シリアスな物語だが、さらっと軽いタッチで作り上げた手腕は大林タッチというところだと思うし、なかなか楽しかった。


「転校生 さよならあなた」
大林宣彦監督の代表作をセルフリメイクした作品ですが、やはりオリジナルの名作には映画としては及ばなかった感じです。やたら、カメラを斜めに構えた前半部分が正直見苦しい。ただ、蓮佛美沙子は、さすがに見事。新人賞を取るだけの名演技です。

物語は、前作尾道から長野に変わり、幼馴染の一美と一夫がある神社の神水に落ちて入れ替わります。あとは、お互いの体のドタバタに思春期の揺れ動く心の機微そして恋の物語が絡んでくるが、どれ一つとっても前作を超えなかった。

前作が引っ越していって別れ別れになるが今回は一美が不治の病で死んでしまうラスト。病死というのはやや安易な処理の気がしますが、これもまた手段かもしれません。

ただ。中盤から後半ラストまでやや、精彩にかけて、間延びしてくるのが残念。まぁ、前作が傑作だから難しいところでしょうね。