くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ギルバート・グレイプ」「野ゆき山ゆき海べゆき」

kurawan2018-02-22

ギルバート・グレイプ
30年ぶりくらいに見直したのですが、やはりいいですね。ラッセ・ハルストレム監督もジョニー・デップレオナルド・ディカプリオも、ジュリエット・ルイスも誰もがこの時が頂点だったのではないでしょうか。静かに流れる時間の中で描かれるなんともいえないヒューマンドラマの美しさに、自然と胸が熱くなってしまいました。

兄ギルバートと知恵遅れの弟アーニーが、毎年恒例の、この街を通るトレーラーハウスの行列を待っているシーンから映画が始まります。この導入部がまず素敵。

ところが、一台のトレーラーが故障でこの街に一週間止まることになり、乗っていたキュートな娘ベッキーとギルバートは親しくなる。

ギルバートは人妻と関係があったが、それもまた時の流れの中に埋もれて行く。ギルバートたちの母親ベティは、夫が17年前に自殺して以来食べ続け、今やほとんど動けないほどの巨漢になっている。

時々、給水塔に登って騒ぎを起こすアーニー。そんなアーニーを献身的に世話をする兄ギルバートの姿が淡々と描かれるが、ベッキーと出会ったり、幼馴染が次々と前向きに進んで行くのを見て苛立ちを覚え始める。街にはハンバーガーショップやスーパーなどが押し寄せ、時の流れを感じさせる。

やがて、ベッキーの車も治り、旅立ちの日がアーニーの18歳の誕生パーティの日。ふとしたことでアーニーを殴ってしまったギルバート。彼一人に負担をかけてきたベティはギルバートにベッキーを紹介された日、自ら二階に上がり、ベッドに横になる。そして彼女は死んでしまうのである。

母を笑い者にしたくない子供達は家を焼く。やがて一年が経ち、再びやって来たベッキーの車にギルバートとアーニーが乗り込んで映画が終わる。

一見、いがみ合っているように見える家族が、実はしっかりとした絆で結ばれている。その空気感が素晴らしいし、ポツンと建つ主人公たちの家を捉えるカットや広がる大地の姿などさりげないシーンにも引き込まれます。今にも壊れそうで壊れない家族の絆が、母の重さで壊れかけている家の描写に重ね合わせる脚本もみごと。

それに、ディカプリオの演技が抜群に光っていて、この作品を完全に牽引しているからすごい。やはりいい映画というのはこういうのをいうのでしょうね。


「野ゆき山ゆき海べゆき」(カラー版)
ファンタジックな反戦映画という雰囲気の一本で、現実を童話のように彩って行くノスタルジックな作品でした。映画としてとっても素敵ですが、戦争反対を真っ向から押してくる圧迫感もないわけではありませんでした。監督は大林宣彦。完全オリジナルのモノクロ版と普及版のカラー版があり、今回はカラー版

第二次大戦中、瀬戸内の小さな町を舞台に、少年たちが繰り広げるわんぱく模様にからませて、戦争のバカらしさを訴えて行く展開になります。

小学生の主人公須藤の学校に一人の転校生大杉がやってくるところら映画が始まる。彼はお昌という美しい姉と暮らしている。須藤は彼女に一目惚れするが、彼女には筏の船頭の早見がいた。

クラスのガキ大将と大杉が喧嘩になるが須藤は夏休みにわんぱく戦争というゲームを考え実行。いわゆる戦争ごっこである。

一方、戦況は悪化してきて早見のところにも赤紙が来る。またお昌は四国の女郎屋へ売られて行くことが決まる。

お昌は早見と駆け落ちするつもりをするが、早見は戦地に行くことを選ぶ。須藤らはお昌を奪取すべく悪ガキらと実行するも結局逃げ場のないお昌らは女衒の元に行く。

お昌が女郎屋へ行くのを知った早見は脱走して、お昌を小舟に乗せるが持ってきた陸軍中尉に撃たれる。船の上でお昌は自ら火をつける。

後日、戦況に悪化で少年兵を募る中尉の演説台を須藤らが壊して、大人は地獄に落ちる。キノコ雲とともにエンディング。

まさにファンタジー仕立てである。鷲尾いさ子のデビュー作で、さすがに美しかった。