くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ナチュラルウーマン」「長江 愛の詩」

kurawan2018-03-12

ナチュラルウーマン」マリーナ、オルランド
いわゆるトランスジェンダーの物語である。個人的に苦手なジャンルなのですが、この作品は素直に見ることができました。アカデミー賞外国語映画賞受賞作品。監督はセバスティアン・レリオ

映画が始まると、イグアスの滝を真上から捉える。そしてとあるサウナ、一人の老人が横たわっているシーンから幕をあける。そして次のカットで、その老人オルランドが会社で、自分が作った白い封筒を無くしたと困る場面。この封筒は、恋人マリーナにプレゼントするイグアスの滝への旅行の切符だったようです。

オルランドはあるクラブで歌うトランスジェンダーの女性マリーナと同棲していた。かつては妻もいて、娘もいる会社のオーナーである。

オルランドとマリーナはいつものように愛を交わすが、直後、オルランドは体調を崩し、マリーナが病院へ連れて行くが間も無く死んでしまう。

ところが、トランスジェンダーであるマリーナへの親族の対応は厳しく、さらに警察まで入り込んできたりする。このあたりの描写がどぎつすぎず、さりげなくマリーナに襲いかかる演出が実にうまい。

物語はそのまま、オルランドが火葬されるまでを描いて行くが、マリーナはオルランドが残した一本のキーの意味が気にかかっていた。そして、たまたまそれがサウナのロッカーのキーだと知り、サウナへ向かうがロッカーには何もなかった。

親族に疎まれながらも、最後の最後、火葬される直前にオルランドに会えたマリーナ、そして舞台上で絶唱するシーンで映画は終わる。

美しい幕切れで締めくくるが、映画が実に力強い。なかなかの一品。


長江 愛の詩
全編が映像時のような美しい画面で、悠々と流れる長江を舞台にした不思議なファンタジー。とにかく大画面で見てこそその真価が理解できる見事な映画でしたが、物語というものが淡々と流れるので、正直しんどくて眠くなってしまいました。しかし、リー・ピンピンの見事なカメラは必見、監督はヤン・チャオ

父を亡くしたガオは、父の跡を継いで貨物船の船長となる。花火が上がる夜の上海で一人の女性アン・ルーと出会う。不思議な魅力を秘めた彼女に惹かれる中、ガオは違法な品物を運ぶ仕事を請け負い長江を遡ることになる。

かなたに上がる花火のカット、水面の揺らめきを受けて輝く船のシーンなど、眼を見張るほどに美しい映像が次々と映し出される。

やがて、ガオは船の中で一冊の詩集を見つける。それは父が20年前に綴ったものだった。ガオはその詩集を手にし、長江を遡るが、行く先々でアン・ルーの姿を見つける。それは幻想なのか現実なのか、次第に若返るように見えなくもない。

淡々とあるのかないのか進んで行くストーリーだが、長江の景色が実に美しく捕らえられているし、大きな画面を有効に使った構図も実に美しい。

やがて乗組員が誰もいなくなり、ガオは一人船を長江の源流にまで進めて行く。
そこで、アン・ルーの母の墓を見つけ、その脇に共に眠ると書かれたアン・ルーの記名を見つけて映画が終わる。

果たして幻想だったのか現実だったのか、めくるめくような陶酔感の中で終わるこの映画の魅力は、その映画的な映像とファンタジックなストーリーでしょう。それほど長くないのですが、劇的な展開はほとんどなく、荷物がミステリアスながら、結局わからないままに終わる。これも映画の醍醐味というものですね。