「ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男」
画面、色彩がとにかく上品で美しいし格調がある。それだけでもこの映画を見た値打ちがあるというものですが、それ以上に、ゲイリー・オールドマンの圧倒的な演技力と存在感が映画を支配している迫力を堪能してしまいます。大作の貫禄、そんな空気が漂う作品でした。監督はジョー・ライト。
1940年、ナチスドイツがヨーロッパを席巻し、次々と侵攻を広げている。時のイギリス首相チェンバレンは、その弱腰の政策から退陣に追い込まれ、後任には戦時内閣として難題を押し付けられたのが、当時与党内で嫌われていたウィンストン・チャーチルだった。こうして物語が始まる。
あとは、ダンケルクでのイギリス陸軍が救出される出来事をクライマックスに、自らの判断に常に迷いながら苦渋の決断から、信念を持った決断に至り、ドイツとの和平を望む閣僚を退けて、断固抗戦を提案するラストシーンまで描かれていく。
時に、周囲の意見に迷い、苦しみ、そして、何かが間違っているという不安から、揺れようとする自分の心に叱責して、ついに最後の決断をする。この人間ドラマの映像がとにかく圧倒的に迫ってくる。
それはゲイリー・オールドマンの演技力もさることながら、狭い作戦室内の空間と、前半の格調高いイギリスの室内を対比させる演出の素晴らしさにもあるかもしれません。
戦場のシーンはほとんど描かず、ただチャーチルの人間のみにカメラが迫っている構図の取り方のすごさにもこの映画のうまさがあるのかもしれません。できる監督とはこういうのをいうのでしょうね。感心しました。良かった。
「ヴァレリアン 千の惑星の救世主」
壮大なCG映像とスケールで広がるSFドラマなのですが、とにかく長いし、ストーリーテリングがしっかりできていないし、キャラクターの存在感も子供っぽくて、最後まで退屈映画だった。リュック・ベッソン監督作品といっていいのかという出来栄えでした。
自然に取り囲まれた理想郷のような世界、そこにいかにもCGで作られた端正な種族がのどかに暮らしている。突然、空が破れ巨大な宇宙船が落下してきてこの星が滅ぶ。
時は宇宙開発が進み出した地球上の姿、そしてどんどん開発が進み巨大な宇宙ステーションアルファが建設されるが、やがて巨大化したステーションは地球を離れ、宇宙中の種族が住むメガステーションになる。
ところがその中心に何やら接触できない危険領域が拡大してきていることが判明。人間界の政府捜査官ヴァレリアンとローレリーヌは何者かに拉致された司令官を救出する途上、その謎に遭遇し、真相が明らかになってくるというのが物語。
このヴァレリアンとローレリーヌがなんとも子供っぽくて、なかなか感情移入できなかった。
実は中心部ではかつて滅ぼされた族が新たな星を建設中で、そのために必要な再生機と呼ばれる生き物の最後の一匹を探していた。この再生機が不当に取引されていると、奪取したヴァレリアンたちの活躍が前半で描かれ、この再生機を司令官が持っていると思って拉致したのだ。この辺りの展開も非常に弱い。
結局、星を滅ぼすきっかけを作ったのが司令官だったという真相からハッピーエンドに至るまでのお話もいかにも安っぽくて、本当にCGのみが売りの映画だったと終わってしまいました。「スター・ウォーズ」の原案にもなった原作らしいですが、流石に雑な映画でした。