くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「恋多き女」「心と体と」「オー・ルーシー!」

kurawan2018-05-07

恋多き女」(ジャン・ルノワール監督版)
なるほど名作ですね。l
オープニングからラストシーンまで全く隙がない。徹底的にコメディであり、ラブロマンスであり、画面が美しい。色彩、構図ともに完成された映画というのは見ていて心地よいものです。監督はジャン・ルノワール

ポーランド公女エレナがパリの革命記念日の群衆を見下ろしているシーンから映画が始まる。好きでもない婚約者とピアノの連奏をしているが、外が気になるエレナは、パレードを見に行ってしまう。

そこでアンリと出会う。群衆に押されながらを繰り返すコミカルな演出と、さりげないエピソードをちりばめた軽快なリズムにまず圧倒される。

アンリと仲が良くなったエレナは、一度会いたいと思っていたロラン将軍に会わせてもらう。そこでロラン将軍に幸運のヒナギクを渡す。間も無くロラン将軍は陸軍大臣に推挙されるが、政治の陰謀の中、間も無く失脚、しかし国民の圧倒的な支持の中返り咲きを図るという物語を背景に、ただ陽気なパリの恋物語が展開して行く。

群衆シーンが次々と出てくるが、その画面処理のうまさに、これが才能だと圧倒されてしまいます。そして次々とエレナの周りで起こる恋の物語、やがてロラン将軍と親しくなったエレナは将軍と逢引をするのですが、密かに愛するアンリが駆けつけ最後はハッピーエンド。

20世紀初頭のパリの空気感が見事に画面に漂ってくるし、ラブコメディのタッチが、時にサイレント映画のドタバタ劇のように繰り返されるリズムの良さは本当に見事です。ラストの処理もあっさりとほのぼの終わらせてくれ、それでいて映画を見たというゴージャスな雰囲気に浸らせてくれます。これが名作ですね。


「心と体と」
これはかなり優れた作品でした。映像の空気感が見事であるし、登場人物の心の変化が映像で表現されている。それでいて、どこか切ないほどに訴えかけてくるものが、次第にまるで霧が晴れるように見えてくる。素晴らしい映画でした。監督はイルディコー・エニュディ。

雪が降る森の中、オスとメスの二頭の鹿が体を寄せ合い、戯れている。実はこの映像は主人公マーリアが見る夢である。

ブタベスト郊外の食肉工場、片手が不自由なこの工場のボスエンドレは、見かけない一人の従業員を見つける。聞いて見ると、代理で入っている検査員だという。生真面目なくらいに厳しい検査をするこの女性マーリアは人とのコミュニケーションが取ることができず、いつも一人で仕事をしていた。

ある時、この工場で交尾促進の薬が不正に持ち出される事件が起こり、警察がメンタルセラピストによる面接で犯人を見つけようとする。その面接で、エンドレは夢について聞かれるが、なんとマーリアと同じ鹿の夢を見ていたことがわかる。

その偶然に、エンドレはマーリアに近づこうとするが、人と接することができないマーリアは戸惑ってしまう。しかし何気無く近づきながら、エンドレはマーリアと一緒の部屋に寝たりする。

結局体を合わせるすべもなく、元に戻るが、いつのまにか、マーリアはエンドレに惹かれ始めていた。そして何とか接することができるように精神科のアドバイスなどを受け、必死で頑張るが、食堂でエンドレから、やはりそういう関係になるのは難しいと言われる。

ショックを受けたマーリアは浴槽で手首を切って自殺を図る。しかし、意識がなくなる前、エンドレに催促されて買った携帯がなる。そしてエンドレから愛を告白され、それに応え、エンドレの家で二人は体を交える。そして、エンドレにコミュニケーションができるようになったマーリアはエンドレと暮らす。
そして二人は鹿の夢を見ないようになり、鹿がいなくなった森が撮されて映画が終わる。

マーリアもエンドレもこれという感情を見せず、淡々とした姿で最後まで描かれて行くが、心の奥で惹かれあって行く様子がじわじわと伝わり、そのさりげないエピソードの積み重ねがラストで一気に盛り上がりを見せる展開が見事。絵作りも美しいし、素晴らしいラブストーリーだった気がします。


OH LUCY! オー・ルーシー!
くだらないキャラクターというのが時々映画に登場するが、そに典型のような主人公の映画だった。どこまでいっても共感できないし可愛くない。展開もしつこいし、嫌いなタイプの映画だった。監督は平柳敦子

独身でかつて自分のボーイフレンドを姉綾子にとられた節子は独身のまま退職だけを待つOLになっている。ある時姪の美花から連絡があり、相談があるからと行くと、自分が受講している英会話スクールの残りの授業を買い取って欲しいという。

仕方なく無料体験に出かけた節子はそこでジョンという風変わりな教師と出会い、ルーシーというアメリカ名をもらう。ちょっと興味を持った節子はトムという中年男性とも知り合い、スクールを続けようと決心しいそいそ出かけるが、なんとジョンは辞めていて美花とアメリカに行ったことを知る。

自暴自棄になった節子は会社でも大人気ない言動をし、いたたまれないまま、美花を追ってアメリカに行こうとする。美香の母の綾子もそれについてくる。

そしてアメリカでジョンに会ったものの、すでに美花とは別れているし、妻子がいることもわかる。そして美花を探しているうちに節子はジョンと体を交える。もうヤケクソ女のヤケクソ行動にしか見えないので、ひたむきな純情ドラマに思えなく、どんどん嫌気がさしてきます。

そしてたまたま美花にあった節子は、ついジョンとSEXしたことを言ってしまう。そして美花は崖から飛び降りて大怪我を負い、またまたいたたまれなくなった節子はジョンに迫るがジョンにあっけなく振られ、帰ってみたら会社のリストラにあっていた。

絶望した節子は常備薬を無茶飲みしたところにトムが訪ねてきて一命を取り留め、トムに抱きかかえられて列車を待つ二人のカットでエンディング。

主人公のヤケクソばかりの行動がやたらしつこいし、何かあれば抱いて抱いてと迫るのはいかにも醜い。その上、後ろ向きな人生にしか見えず最後まで共感できないまま終わった。ラストが何かの救いの意味なのだろうがそれも弱く、後味の悪い作品でした。