くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ホース・ソルジャー」「アイ、トーニャ 史上最大のスキャ

kurawan2018-05-08

ホース・ソルジャー
普通に面白い戦争映画という感じの映画でした。ダイナミックなカメラワークはなかなか見せてくれるし、兵士一人一人のキャラクターも丁寧に描かれているために、塊に見えない。実話という枷もあるのですが、アクション性も、スペクタクル性も兼ねた娯楽映画として見ることができました。監督はニコライ・フルシー

9・11のテロの映像がテレビに映し出される場面に、主人公であるネルソン大尉らのカットが被って映画が始まる。現役を退き、内勤の申請も受理されたネルソンは、テロ事件に対し、もう一度第一線に復帰を希望、かつての仲間と一緒にアフガニスタンに向かう。こうして物語の本編が始まります。

テロ集団の拠点マザーリシャリフ奪還に向かったネルソンら12名は現地のドスタム将軍の援護をしながら、目的地を目指す。ただ、荒れた山々が広がる大地を進むためには馬で行くしかなく、乗り慣れない馬に跨りドスタム将軍の部隊と一緒に、テロ集団の反撃をかわしながら進む。

次々と繰り返される銃撃戦に、空爆の指示を行いながら一掃して行く展開は非常にわかりやすいし、時に大きく俯瞰でダイナミックに捉える映像カットが物語にリズムを生んで行きます。
ピンチを繰り返しながら、最後はマザーリシャリフを奪還して映画が終わる。

特にどの部分にこだわったとい映像作りになっていないものの、手慣れた演出を見せるニコライ・フルシー監督は、報道カメラマンだけあって視点が実に的確なのが見応えがある原因かもしれません。

もっとつまらないかと思ったけれどなかなか見ごたえのある映画でした。


アイ、トーニャ 史上最大のスキャンダル
これは稀に見る傑作だった。トーニャ ・ハーディングの素直なファンもいるだろうに、ここまでストレートに、いやもちろん脚色もあるだろうが、徹底的に描ききるとはアメリカというのはすごい国だなと思う。また、カメラワークも抜群で、氷上のトーニャ を捉えるカメラ、もちろん一緒に滑っているのだろうが、室内を長回しで見せる映像などスタディカムとデジタル処理を駆使した絵作りも抜群。そして、キャストも素晴らしい。ここまで描かれれば、ぐうの音も出ないと言うものである。監督はクレイグ・ギレスビー。

映画が始まる。クソのようなインタビューを元にした物語だと言うことわりのあと、トーニャ をはじめ彼女に関わった人たちの言いたい放題のインタビューが展開。もちろん役者が演じているのだが、この導入部から一気に引き込まれる。

幼い頃から、異常に厳しい母ラヴォナからスケートの教育を受けたトーニャ 。何かにつけ罵倒され殴られる品の悪い母親の描写と、それに文句を言いながらも従って行く、と言うかゆがんで行くトーニャ の姿。

やがて思春期になり、初めての恋人ジェフとの出会い、そして恋、と言う展開も、やたら暴力的なジェフの姿に、とてもほのぼのしたものはない。さらに、ジェフの友達で誇大妄想癖のあるショーンの登場で、物語はどんどん拍車がかかる。

やがて結婚からトリプルアクセルの成功、オリンピック出場へと突き進むが、どう見てもスポ根映画ではなく、ひたすら暴力と悪態の連続。そして、クライマックスはナンシー・ケリガン襲撃事件へと展開して行く。

実話とはいえ、この辺りのサスペンスフルな展開も実にうまく、少々くどいところもなきにしもあらずだが、引き込んでくれる。

主人公トーニャ を演じたマーゴット・ロビーも上手いが、アカデミー賞を取った母親役のアリソン・ジャネイ以下脇役が実に素晴らしいので、映画に隙ができない。そしてグイグイとメインの襲撃事件を描きながらも、さりげなく母親ラヴォナが最後に泣かせるのかと思いきや、そうではない終盤の登場も憎い。

そして、リレハンメル五輪でのトラブルから、裁判での判決で永久にスケートをすることを禁じられるラスト。一時は泣き崩れるトーニャ だが、エピローグで、たくましくも女子ボクシングングをし、殴り倒されて血を吐いて起き上がる映像でエンディング。
この手のお決まりで、実際の人物の映像がエンドロールに被って行く。

これだけストレートに描かれると、果たして本当の出来事かと疑ってしまう。もちろん映像化にあたりの脚色は入っているだろうが、真正面からトーニャ ・ハーディングを捉えている感が圧倒的なリアリティとなって迫ってくるから、もう感激するしかないのです。これが映画作りというものだと思います。最高でした。