「ボストンストロング ダメな僕だから英雄になれた」
重傷を負ってそこから立ち直るヒューマンドラマはたくさんありますが、この映画は素直に勇気付けられたし、胸に残る何かがありました。それは、まず物語の組み立てが実にうまい。そして主演のジェイク・ギレンホールが本当にうまい。しかも周りの脇役の描き方がストレートであるために物語全体が盛り上がって非常に優れたリアリティと映画的なドラマに仕上がっているためです。本当に良かった。監督はデビッド・ゴードン・グリーン。
レッドソックスが大好きな主人公ジェフが鳥の加工工場で働くシーンから映画が始まる。スポーツ観戦バーにやってきた彼は、ひと月ほど前に振られたエリンを見つけ、もう一度声をかける。彼女は次のボストンマラソンに出るためのカンパを集めに来ていた。
そしてボストンマラソンの日、ジェフは彼女にもう一度認めてもらおうとゴール側でエリンを待つ。ところが、テロが起こり、爆弾が爆発ジェフは瀕死の重傷を負い病院へ搬送される。そして、膝上から両足を切断されてしまう。しかし、意識が戻った彼は犯人を目撃したとFBIに報告、その情報を元に犯人が捕まったことからジェフは一躍ヒーローに祭り上げられる。そして彼を助けたカウボーイハットのカルロスとともにボストンの人々の英雄となり、次々とイベントに駆り出される事になる。
しかし、両足を失ったジェフの苦痛は半端ではなく、イベントに顔を出す事に苦痛をあらわにし始める。しかし彼の家族は息子がヒーローになった事にはしゃぎ、次々とジェフを連れまわす。唯一彼の気持ちを知るエリンは必死で彼を支える。しかしことあるごとにジェフの母と衝突するようになる。
次第に自暴自棄になって行くジェフ、そんな時エレナは妊娠していることがわかる。そしてそのことをジェフに伝えたが、育てる自信がないと泣き崩れる。それを見たエリンは嫌気がさし、彼を車に残して帰ってしまう。
一人でどうしようもないジェフは車から這い出て彼女を追うが、扉のところで入れない。苦しむジェフの心に、爆発にあった時の記憶が蘇る。そして苦しんでいるのは自分だけではないと思い起こし、カルロスが助けにきてくれた記憶も蘇り、彼と会う事にする。
実はカルロスの息子は二人とも亡くなっていた。ジェフは次第に勇気を持ち直し、前向きな気持ちになり、リハビリにも積極的になる一方、嫌がっていたイベントにも出場、レッドソックスの始球式にでる。その姿はかつての彼の姿ではなく前向きに生きることを決めた笑顔だった。
それを見たエリンはかすかに希望を持つ。そして、ジェフは義足で立てるようになり、もう一度エリンと待ち合わせ、ゆっくりと手を握り映画が終わる。
展開はよくあるパターンだが、中盤のジェフの周りの家族がジェフをないがしろにして騒ぐ姿などの緩急のある展開とクライマックス、自分に目覚めるジェフの展開からラストの処理が実にうまい。それを引き立てる脇役の存在も上手いので、本当に考えさせられてしまいます。いい映画でした。
「ミッドナイト・サン タイヨウのうた」
非常に低予算で作ったというのがいたるところに見える作品ですが、登場人物誰もが非常にいい顔をしているので、わかりながらもどんどん引き込まれてしまった。日本映画「タイヨウのうた」のリメイクですが、オリジナルは見てません。監督はスコット・スピアー。
主人公ケイティは太陽の光を浴びることができないXPという病気である。彼女は幼い頃から家にこもり窓の外を見ているカットから映画が始まる。
彼女は窓から見えるチャーリーという少年に憧れていた。やがて、時が経ち、高校の卒業式の日、ケイティは一人で母親のギターを持ち駅のホームに歌を歌いに行く。そこへ、高校の卒業式のパーティに嫌気がさしたチャーリーがやってきてケイティは憧れていたチャーリーに偶然出会う。こうして物語が始まります。
チャーリーを演じているのはアーノルド・シュワルツネッガーの息子パトリック・シュワルツネッガー。
ケイティはその場は逃げ帰ったが、歌詞を書いているノートを忘れ、後日ケイティの親友の仕業でチャーリーと再会、二人は急速に近づく。ただ、夜しかデートが重ねられないケイティはそれでも病気のことをチャーリーに言えずにいた。
ある夜、二人は盛り上がったのだが、美しい夜明けを見せようとチャーリーがケイティと過ごしてしまい、ケイティは慌てて帰宅、しかし少し光を浴びてしまう。そしてそれがきっかけで、彼女の病気が一気に進み、余命いくばくもなくなる。
全てを知ったチャーリーはそれでもケイティと付き合うが、ある夜、自分が管理しているヨットの最後の整備の日だからと夕方から出かけようとすると、最後に太陽を浴びたいとケイティが言い出す。ケイティの父も彼女の親友もそれを認めケイティはチャーリーと最後のヨットに乗る。
カットが変わると、すでにケイティは亡く、チャーリーは怪我でやめていた水泳をケイティの励ましで始めていて、その記録も良く、その道に進むためケイティの父に挨拶に来る。一人運転するチャーリーの車のラジオから、ケイティが生前チャーリーの計画でスタジオ録音した曲が流れる。
父もまたそれを聞き、親友もケイティの歌声を聴いているカットで映画が終わる。
カメラ撮影もそれほど凝ったこともしていないのですが、ケイティの周りの登場人物が実に素晴らしく、そのために映画が締まっている。だからラストの畳み掛ける処理も一気に観客を引き込んでくれるので素直に涙を誘ってくれました。良質の一本でした。