くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ラブ×ドック」「モリーズ・ゲーム」

kurawan2018-05-14

ラブ×ドック
もっとしょぼい映画かと思っていましたが、終盤に行くに従ってどんどん良くなって来る展開にとっても好感な作品でした。オープニングからは、若干センスの悪さが表立ってるように思えなくもないのですが、それが次第に映画の中で溶け出して広がって行く感じが楽しい。結構好きかもという映画でした。監督は鈴木おさむ

スイートショップを営む主人公郷田飛鳥が、店の従業員で一回りも若い星矢から告白される。そこから彼女が語るこれまでの二つの恋の物語がコミカルに描かれていきます。冒頭のサイケデリックに近いケーキの色彩が映画を品なく見せているのですが、それが、次第に薄まって行くストーリー構成はなかなかいただけます。

五年前、洋菓子の学校に通う飛鳥はそこで中年のオーナー淡井と不倫関係になる
しかし、ある時彼の妻から突然懇願され我に帰った飛鳥は、淡井と別れる。

飛鳥には親友でシングルマザーの千種がいて、彼女とつるんで連れて行ってもらったスポーツジムのインストラクター野村と一夜を共にしてしまい、野村に気があった千種と喧嘩別れしてしまう。さらに野村からは素気無い一言を浴びせられ意気消沈してしまう。

そんな時、飛鳥は、自然と星矢と親しくなり恋に落ちて行く。しかし、星矢が元カノの相談に乗っている現場を飛鳥がみてしまい、それがきっかけで別れる。

ところが、星矢は行きつけの熱帯魚屋で偶然千種とその娘と親しくなりいつの間にかプロポーズする。そして、二人が結婚することを星矢から聞かされる飛鳥だが、それほど美人でもなく、子持ちでもある千種は星矢の思いを断ろうと決心し、予約していた結婚式場をキャンセル。

その経緯を、野村が、たまたま恋人が結婚プランナーだったことから聞きつけ、かつての態度を謝ることも兼ねて飛鳥に知らせに来る。

さまざまな恋をし、歳を重ね、少し成長した飛鳥は、かつて千種が提案したケーキと星矢が提案したケーキを取り混ぜたケーキを持って千種と星矢を呼び出し、二人を結びつけようとする。こうして星矢と千種はハッピーエンド。親友を取り戻した飛鳥はは、これまでの経験は無駄ではなかったと思い、前に進む決心をする。

物語の中心の陰にちらほら登場するラブドックなる怪しい恋愛クリニックの冬木医師が、詐欺で捕まる終盤のエピソードも絡めて、さりげないスパイスと、滑りっぱなしのボケとツッコミが、最後には小気味好いリズムに仕上がって映画を締めくくる。このなんとも言えない満足感が結構楽しかったなと思い起こさせてくれるのです。小品ですが、見て楽しかったなと思える映画でした。


モリーズ・ゲーム
スキーのアスリートから私設ポーカールームの運営へ転身した実在のモリー・ブルームの実話を基にした作品で、全編会話の応酬と主人公のナレーションで目まぐるしく展開して行く映像は、まさにモリーの波乱の半生をそのまま映し出したようでなかなか面白かった。監督はアーロン・ソーキン

ベッドで目を覚ました主人公モリー・ブルームにFBIがこれから突入するから出てくるようにという電話がかかるところから映画が始まる。

幼い頃から厳しい父にスキーの訓練を受け、トップコーチの指導のもとに練習を重ねていたが、オリンピック出場をまえに大怪我を負い引退する。しかし、たまたまロースクールに通い始めるまでの1年間にアンダーグラウンドなポーカールームのアシスタントについたことから、この世界に魅入られ、自らポーカールームを経営し始める。

こうして、有名人やセレブの情報を蓄積しながら、彼女のポーカールームは盛況を極めて行くが、ロシアンマフィアとか関わったことから、歯車が狂い始める。一方彼女にはFBIの捜査が迫り、彼女の持つ情報を得るために、巧みに彼女は逮捕される。

モリーは冒頭の逮捕により弁護士を雇う。最初は形式的に彼女の減刑のために動くのだが次第に彼女の素顔が見えて来る。

ポーカールームに集まるセレブたちがギャンブルに溺れかけるのを親身にアドバイスしたり、決して違法にならないように務めたり、彼らの情報は自分が有罪になるとわかっても決して司法取引にも応じない。

そんな彼女の姿を見つめる弁護士は、裁判で彼女が望むままに罪状認否で有罪を宣言させる。しかし、判事は逆に彼女を有罪にする必要もないとほぼ無罪に近い求刑で裁判を締めくくる。

ポーカールームでのモリーの態度が実に颯爽としていて、結果的に全てを失い、一人でスケートリンクで滑る彼女の前に厳しい父が現れる。そしていつの時も愛していたと抱きしめる下りがとてもきれいです。

裁判の結果を見て、喜びの中家族で食事をするモリーの脳裏に、かつてのスキーでの大怪我、そして、怪我を負いながら一人立ち上がって歩く彼女にかぶせて、「彼女は何かの形で蘇るでしょう」というアナウンサーの声が被ってエンディング。

モリー以外の名前は全て仮名であると最初にテロップが入るように、徹底的に自分以外の人の情報を表に出さず、映画も彼女のナレーションと目まぐるしい展開のポーカールームでの出来事などを描写して行く。スピード感あふれる映像のリズムで突っ走ったという演出が実に彼女の生き方を語っているようで、ストレートに共感することができます。トップクラスとは言えないまでも、いい映画でした。