くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ゼロの焦点」(1961年版)

kurawan2018-05-17

ゼロの焦点」(1961年版)
とにかく映像のキレが抜群にいい。寸分の隙もなくどんどん展開して行くストーリ展開のリズムに引き込まれてしまいます。時代色による色褪せなどものともしない迫力、これが名作というものでしょう。クライマックスの能登金剛の断崖での真相暴露シーンはのちのサスペンス劇場の原点になった映画、いつか見ればと思っていた一本を見ました。監督は野村芳太郎、脚本は橋本忍山田洋次

主人公鵜原禎子が夫憲一の金沢出張に送り出すシーンから映画が始まる。この場面に遡り、最近結婚したばかりの新婚であること、月のうち10日は金沢出張があり、東京と金沢を往復する生活になることなどが見事に挿入され、物語の舞台説明が一気に行われる。この脚本の秀逸さにまず惹かれます。

そして、帰って来ない憲一、それを心配する禎子、そして禎子が金沢に行くと浮かび上がってくるもう一人の人物、憲一の兄宗太郎の金沢登場から、死、そして田沼久子の死、全てが一本の意図糸でつながったと思われた展開で一旦物語を収め、一年後、禎子が金沢に行き、全ての真相を明らかにするラストシーンへ、まさに畳み掛けて行くという言葉がぴったりのリズム感で締めくくる様がなんとも言えない職人技さえ感じてしまいます。

もちろん、戦後間も無くの混乱期に存在したパンパン、つまり売春婦という存在が物語のキーになるのは、今の時勢では流石に時代色なのですが、そんな部分を脇においても決して映画として色あせていないサスペンスに仕上がっているのが見事です。

それぞれの登場人物のドラマ性もしっかりと描写され、単純なサスペンスだけで終わらせず、奥の深いドラマに仕上がっています。真相告白シーンの二転三転する展開も見事で、これがサスペンスと言わしめる出来栄えでした。見て良かったです。