くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「孤狼の血」「ランペイジ 巨獣大乱闘」

kurawan2018-05-22

「狐狼の血」
これはなかなか見せてくれる一本でした。原作が「仁義なき戦い」と同じ柚月裕子なので、物語の展開や構成はよく似ていますが、脇役の使い方が実にうまいので、奥の深い人間ドラマとサスペンスフルな展開がしっかりと描けています。監督は白石和彌

豚小屋で一人の男がリンチの上、半殺しになるところから映画が始まる。ショッキングなオープニングの後、大学卒の日岡が呉原という町の警察に赴任するところから物語が幕を開けます。彼の相棒につかされたのが大上という粗暴な男で、やりたい放題の言動に戸惑いながらも、必死でついていく日岡、実は彼は本部から大上の内定を頼まれた監察官だった。

この街には尾谷組と五十子会を上部組織に持つ加古村組との抗争が相次いでいた。大上はその横暴な振る舞いで彼らを抑え、特に尾谷組の組長、さらに若頭の一之瀬と懇意にすることで、抗争を防ごうとしていた。そしてもちろんその本当の目的は彼らの一掃でもあった。

懇意にしているクラブのママ里佳子の存在や日岡と親しくなる桃子の登場など女性の配置も良く、ちらっと顔を出すジャーナリストの中村獅童の存在感も光る。

ふとした殺人で加古村組と尾谷会の抗争に五十子会が暗躍する気配の中、なんとか阻止しようとする大上に過去の殺人事件の容疑が再燃し、そのまま謹慎となる。当然抗争ははじまるが、次第に見えてくる裏に存在する真実に日岡が目を向け始めるこの辺りからが実にいい。

そして、間も無くして行方が分からなくなっていた大上が他殺体で発見され、日岡はようやく大上の意思を継ぐべく動き出す。

17年前の殺人事件は当然大上の仕業ではなく里佳子が自分の夫の復讐のためにしたことで、それをうまく隠蔽したのが大上だった。さらに日岡が本部から執拗に手に入れるように言われていた大上の日記帳というのは、警察関係者のスキャンダルをまとめたものだったことがわかり、日岡は自分の立場に馬鹿らしくなる。

そして、大上の仇を討つべく、真犯人と目される五十子会の組長を殺すために尾谷会の一之瀬を手引きし、殺させたうえ、代役を立てようとする一之瀬本人を殺人で逮捕する。

最後に日岡はその報告も兼ねて大上の墓参りをするが、そこに現れたのは日岡が恋人と思っていた桃子であった。これもまた大上の策略であったことを知りあっけにとられる日岡の姿で映画が終わる。

なるほど、面白い。どんでん返しの影に大上を配置し、しかも物語の終盤で大上を殺してしまい、物語を日岡に移してエンディングへ進む展開も見事。リンチシーンなどえぐい場面もあるものの、うまい映像演出で巧みに見せる手腕もうまい。

一本の映画としてしっかりとまとめられている作品で、かなりのクオリティの仕上がりだったと思います。


ランペイジ 巨獣大乱闘
面白くないわけではないけれど、この手の娯楽映画としては中の下のレベルの作品だった。客入りが悪いのも納得の映画だった。監督はブラッド・オペイドン。

宇宙ステーションで何やら研究が行われ、そのステーションが不具合で壊滅、すんでのところで一人の研究者が何かのサンプルを持って脱出、しかし大気圏突入時に爆発し、三つのサンプルだけ地球に落下。それは自然保護区に落ちたのだが、そのサンプルから出たガスで生き物が巨大化を始める。

この自然保護区の学者デイビスは、可愛がっているホワイトゴリラのジョージが巨大化、凶暴化したことで何か異常事態が起こっていると思うが、程なくして、ステーションで研究をしていた悪徳企業が私設軍隊でジョージを捕獲連れ出してしまう。

間も無くして巨大化した狼とワニ?がシカゴに迫ってくる。ジョージも飛行途中で暴れて飛び出しシカゴへ。こうしてシカゴで3匹の巨大動物が大暴れ、それを阻止する軍隊と、デイビスたちは巨獣を鎮めるべく解毒剤を手に入れようとするが企業の悪徳姉弟に阻止され、なんとか一本手に入れるもピンチになる。

そして、その一本をジョージに飲ませて他の二体と戦わせることに。そして解毒剤を悪徳社長の姉に持たせ、そのまま凶暴なジョージに食わせる。ここはさすがに笑った。

あとは大人しくなったジョージがデイビスと一緒に二体の怪物と戦いやっつけて物語は終わる。

軍隊のものすごい攻撃でも死なないのに、ジョージが棒を突き刺しただけで死んでしまうのはあまりにあっけないが、まぁこの手の物はなんでもありの世界だからいいとしよう。

デイビスの周りに登場する脇役があまりに雑に出てきて消えるので、それだけでもこの作品のレベルが見えてしまった。動物のCGなど今更珍しくもないし、町の破壊もアベンジャーズで散々見ているし、一体なにが売りなのだろうという思う映画だった。