くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ALONE/アローン 」「天命の城」

kurawan2018-06-27

「ALONE/アローン」
とにかく、クライマックスは時間稼ぎにしか思えないほどくどくどした展開に参ってしまった。監督はファビオ・レジナーロ。

2人の兵士が小高い丘から砂漠を見下ろしている。テロリストを狙撃するため待ち構え、ターゲットらしい人々が近づいてくる。しかし、スナイパーのマイクはその人たちが結婚式を行うようで、しかも確実にターゲットと確信できないためためらってしまう。そのため光の反射で敵側に居所がバレ反撃に会う。

なんとか逃げ果せた二人だが、砂嵐に巻き込まれた時に地雷原が埋められた地域に入り込んでしまう。そして間も無く相棒のトミーが爆死、自分も地雷を踏んで動けなくなってしまう。

物語は、味方が通りかかる50時間余りをひたすら動かずに耐えるマイクの姿の展開となる。なぜか、巧みに地雷を避けて近ずく現地の男、小さな女の子、幻想なのか現実なのかわからないままに、夜は狼たちを撃退しながらなんとか目標の時間まで耐えたがすでに体力は限界になっていた。

父親との確執や恋人との日々などがスローモーションとフラッシュバックで繰り返し繰り返し映される終盤は、正直時間稼ぎにしか見えないし、何を見せたいかがどんどんぼやけてしまう。

そして限界にきたマイクは救命灯に手が届かず一か八か足を外したら、なんとそれは地雷ではなく地元の少女が巧みに入れ替えたブリキ缶だった。何度も登場する地元の男との会話に伏線が埋められているが、では幻想だったのか現実だったのか、彼はなんだったのか、うやむやのままラストは恋人と再会してエンディング。

やりたいことがわからないわけではないが、ちょっと間延びしすぎだった気がします。


天命の城
韓国映画の歴史大作ということなのでほとんど期待もしていなかったが、思いの外しっかりと仕上げられた人間ドラマになっていました。2時間半ほどあるのに全く退屈しなかったのは、脇のエピソードがしっかりと描かれていたためではないかと思います。監督はファン・ドンヒョク

物語は明朝を征服せんとする清国が李朝朝鮮へ侵攻してきた1636年の丙子の役を舞台にしている。

清の攻撃に李朝の王と朝廷は南漢山城へ立てこもることになる。冬が来てその激寒の中、城の中は食料の不足、兵士の士気の低下と絶体絶命に落ちいって行く。物語はそんな状況の中で、大臣同士の確執や保身、王の苦悩が如何にもな展開で進んで行く。

ひたすら国の民と朝廷を守るために和睦の手段を見つけようとする文官のミョンギル、一方冷静な判断で軍を統括して行く軍人のサンホンなどのドラマを中心に、大臣たちの見栄と大義名分の中で王の地位を守るかの正論を唱えながらも身の保身を訴える大臣の姿なども語って行くが、この作品のいいところは、冒頭で渡航を案内した老人を、その機密保持のためにサンホンが殺してしまい、その孫娘が偶然に城に逃れて来てサンホンが苦悩する人間ドラマや鍛冶屋の兄弟を巧みに使った庶民の心の変化を描写する脇のエピソードがしっかりしていることである。

また、清朝側の描き方も真摯で、朝鮮側も極端なデフォルメではなく、あくまで、それぞれの人々が正当な姿として素直に描いているのは実に好感。保身や見栄を主張するだけのような大臣たちであるが、そこも、人間としてわからなくもないレベルの描写に抑えられていて嫌悪感が出ない。

ラストは屈辱的な形ながらもかろうじて李朝の王位は守られて、サンホンは自害、引き取った少女は鍛冶屋のもとに預けられ、春がきてタンポポが咲いて映画が終わる。わずか47日間の物語だが丁寧な事細かな人間ドラマが描けているのがこの映画の優れているところだと思います。見応えのある1本でした。