くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ひろしま」「星空のマリオネット」「津軽じょんがら節」「

kurawan2018-08-06

ひろしま」(デジタルリマスター版)
四万人以上の広島市民の協力の元に仕上げられた反戦映画の一本。映画の出来栄えはともかく、当時の映画人、知識人、広島市民の原爆反対への熱い想いの結晶という意味では必見の一本だった気がします。監督は関川秀雄

製作年度は1953年、この一年後に「ゴジラ」が作られることになり、日本がようやく戦後復興の兆しが見え始めた頃の人々の不安を叙述に映像に刻まれた形になっている。

広島市民の協力で撮られた、原爆投下の日の惨状シーンの迫力はものすごいが、それに続いての、生き残った少年たちなどの、なりふり構わず生きる姿の方が残酷さを叙述に描写していく。このあたりは、当時を経験しないと絶対に出てこないエピソードであり、姿であると思います。

最後は原爆ドーム前反戦のデモ行進をする大勢の人々のカットで終わります。絶対に許せない原爆投下の問題、これはしっかりと世の中に広めるべき一本ではないかと思います。


「星空のマリオネット」
三人の若者の青春を描く物語。いま見ればまさに当時がノスタルジックに蘇ってくる一本で、当時の若者たちの考えや生き方をまざまざと感じることができました。監督は橋浦方人。

主人公ヒデオは数人のグループの暴走族のリーダー。今日もライバルのチームにいちゃもんをつけては喧嘩をしてしまう。心配な父は、仕事を地元に変わりヒデオと一緒に暮らすようになる。

恋人のアケミとの間に子供ができるが、育てる気もないヒデオは、堕すように勧め、結局、流産してしまう。母はすでになく、ヒデオの父がさみしそうにしているのに見兼ね、アケミをあてがう。やがて父とアケミの間に赤ん坊ができたことがわかる。

仲間のヒロシは不慮の事故で死んでしまう。

どんどん、孤独になり、疎外されていく自分、そしてどうしようもなくもがく自分の姿に嫌気が刺してきたヒデオはトラックに突っ込んで自殺してしまう。

映画はここで終わります。当時の若者の行き場を模索する姿が見事に描かれている作品で、周りの脇役のキャラクターも、若者たちの赤裸々な姿を象徴する個性で描かれています。

やや殺伐とした空気がありますが、青春の群像劇としてなかなかの秀作だった気がします。


津軽じょんがら節」
やはり何度見ても名作。美しい色のコントラストと、バッチリ決まった構図が素晴らしい。さらに背後に流れる三味線、挿入される真っ赤な絵、などなどどれをとっても引き込まれる魅力があります。監督は斉藤耕一、彼の最高傑作に近いかもしれません。

数年前に見たばかりなので、改めて物語は書きませんが、何度見ても素晴らしい名作というのはこういう映画をいうのだと思います。


「君は裸足の神を見たか」
久しぶりに、青春は残酷というテーマのとっても切ない良い映画に出会いました。少々演出があざといのが気になりますが、素直にどんどんのめり込んでしまう物語と、繊細な絵作りに胸が熱くなってしまいました。監督は金秀吉

ハッとするような雪景色から映画が始まります。雪景色のどこかにピンクかグレーが混ぜられたような色彩が隠されているので、ものすごく深みのある雪景色、その美しさに驚かされます。東北のとある雪深い町、親友の茂と真二は新聞を配っている。

自転車屋の息子の真二は不器用な上に内気で純粋、好きな瞳に声をかけられず、親友の茂に相談する。茂は幼馴染でもある瞳に、それとなく真二の気持ちを伝え、付き合ってくれるように頼むが、実は瞳は茂のことが好きだった。

絵の才能があり美大を目指す茂の父は、茂を普通の建築設計の仕事をさせようとしていて、そんな父に茂は反感を持っている。

瞳は豆腐店の娘だが経営は良くなく、近くにデパートが立つ計画もあり、逼迫していた。そんな瞳は茂に頼まれるまま真二と言葉を交わし、やがて三人で付き合うようになる。

茂には憧れの女性春代がいるが、思いが伝えられず、次のコンクールの絵のモデルで描いていた。

瞳はある時、茂に部屋を訪ね、とうとう体を合わせてしまう。その後も、真二に隠れて二人は逢瀬を重ねる。

詩を書くことが趣味の真二は地方新聞に入選、瞳らに祝福されるが、自分の絵が思うように進まない茂はそんな真二を妬み始め、行動も乱暴になり、瞳からも疎まれ始めるにつけどんどんエスカレートしていく。そしてコンクールに落選すると一気に爆発、瞳を連れ出し、無理やり関係しようとする。

そんな瞳と真二は次第に親しくなり、卒業したら結婚しようとさえ言うのである。しかし、茂に乱暴されかけた瞳は学校へ行かなくなる。

瞳は真二の気持ちを裏切ったことの罪悪感に部屋にこもり、酒を飲む。真二がたまりかねて瞳の部屋の前までくるが、自暴自棄になった瞳は茂と関係を持ったと告白してしまう。真二は、外に飛び出し、学校の授業で使った高圧電力の実験装置を勝手に動かしそれに触れて自殺してしまう。

葬儀の場、茂は真二の母に、死んだ原因は自分だと告白、一方瞳は商売がうまく行かず北海道へ夜逃げしていく。どうしようもなくなった茂は、走ってきた列車に飛び乗る。どこへ向かうかもわからない列車が画面彼方には走り去って映画が終わる。しんしんと雪が降っている。

冬に始まる冬に終わる時間軸の中で、三人の高校生の切なすぎるほどピュアな恋と人生の物語が描かれる。ところどころ、あざとい演出の画面カットが気になるが、全体に実に繊細な映画作りになっていて、学生映画のような空気感もあるのが良い。

久しぶりに、残酷な現実に向き合い始める純粋な青春の物語を見たという感じの作品でした。こういう映画大好きです。