くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「オーシャンズ8」「地の群れ」「肉弾」

kurawan2018-08-16

オーシャンズ8
大好きなアン・ハサウェイほか豪華女優陣が一堂に会して、豪華な宝石をだまし取る豪華な映画なので、出来栄えの良し悪しはどいでもいいのですが、まぁ映画としては普通の娯楽映画という感じでした。監督はゲイリー・ロス

主人公デビーが出所してくるところから映画が始まる。巧みに万引きをして、必要品を手に入れ、上手く騙してホテルの部屋に入る。そして5年間練りに練った犯罪を実行するためにかつての仲間に声をかけ始める。

そして揃った7人、狙うはカルティエが50年間も保管だけして来た時価15000万ドルのトゥーサンと呼ばれるネックレス。そしてそれをメットガラというファッションイベントでダフネ・クルーガーというセレブ女優につけさせ、すり替えるというもの。一方でデビーを陥れたクロード・ベッカーに罪を着せる計画を実行に移す。

今時なので、テクニカルなプロがそのスキルで見事に作戦は成功。ところが、途中で気がついたダフネも加わって来て、分け前が減るのかと思いきや、実は展示されていた宝石もごっそり手に入れていて、大団円。

クロードを陥れることにも成功、保険の捜査員も軽妙に巻き込んで、軽いタッチの娯楽が終焉する。

今更、珍しくもない鮮やかさですが、作品が豪華なので、それだけで十分見応えがありました。


「地の群れ」
とにかく、重いし、暗い。1970年という製作年、熊井啓がATGで初監督をしたということを考えれば納得もいくものの、かなり陰にこもった作品でした。監督は熊井啓

昭和16年、一人の女が若者を責め立てている。どうやら妹を妊娠させられたらしく、この女は朝鮮人か、中国人か。そしてタイトル。

のちにわかるが、この若者は宇南というのちの医師である。

時は1970年、この映画の制作年の佐世保。原爆被爆民の差別、部落差別が当然のように世の中に存在し、その抑止力などなく、ただ隅に追いやられ、誰もが見て見ぬ振りをしている状況が描かれていく。自らも被爆に悩む医師として、宇南の苦悩も描かれていく。

被爆民の多く住む地域の若者が部落の女を強姦した事件を核にして、戦後の苦しみをいまだにひきづる人々の苦悩が淡々と描かれていく。

ラストシーン、近代的な団地の中に逃げ込んでくる被爆民の地域に住む信夫の姿を、何事もないように編み物をする女たちが微笑みで見守るシーンで映画が終わる。熊井啓の鋭すぎる視点が一気に画面から漂ってくるシーンである。

映画は非常に充実した作品で仕上がっているが、今ではとても作れないテーマとレベルの映画だと思います。そう何度も見たくなる映画ではないですね。でも考えさせる一本でした。


「肉弾」
独特の映画ですが、なるほど、代表作と言える一本、というか岡本喜八らしいユーモア満点の映画だった。もう少し終盤の畳み掛けが上手く仕上がったらもっとメリハリが効いていた気がするけれど、それでも面白い映画でした。監督は岡本喜八

一人の若者が魚雷にドラム缶を縛った乗り物に乗って敵艦が来るのを待っている場面から映画が始まる。日が眩しいので、傘を広げると、そこには「あけぼの楼」という遊郭の店の名が描かれている。物語は、この若者がこの状況に至る話が語られていく。

士官候補生で軍隊に入ったものの、戦況は悪化、爆弾を抱えて敵戦車に飛び込む肉弾兵の任務が与えられる。最後の外出許可が出て、若者は女郎屋へ向かう。途中の古本屋で聖書を手に入れ、そのまま新地へ。

ようやく見つけたおさげの女学生の店に行くが、彼女は店の女将で、出て来た女郎は化け物のよう。逃げ出すように店を後にし、持って来た傘を着て雨をしのいでいるところへ、古本屋の帰りの女学生の女将に再会。二人は防空壕で一夜を明かす。

若者は海岸で一人穴を掘って爆弾を抱えて特攻する練習をしていると、一人の少年がやってくる。そしてその少年とのやり取りの後、3人の看護婦と出会ったり、モンペのおばさんと出会ったりとシュールでコミカルなシーンが展開。そして広島の街が空襲に会い、遊郭なども全て破壊され女学生の女将も死んだらしいと知らされる。

そこへ上官から、状況が変わったから近くの特攻ボートの基地へ行けという。しかしそこにはすでにボートはなく、近くに魚雷の基地があるからそこへいけと言われる。そして、今の状況となる。

やがて終戦のビラが撒かれるが、メガネを壊した若者は読めず、近づいて来た汚物処理の船に向かって魚雷を発射するも魚雷は沈んでしまう。汚物船の船長に終戦を教えられ、引っ張って東京まで連れて行ってもらうことになる。

しかし、結んでいたロープが切れ、若者のドラム缶は置いてけぼりとなる。そして時は流れ昭和43年。海岸沖に白骨になった若者を乗せたドラム缶は浮かんでいた。

海岸で穴を掘ってのやり取りのシーン、ドラム缶の中のシーンがややしつこくて、馬鹿馬鹿しくなってくるが、かなり独特の物語の面白さがある映画でした。