くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「検察側の罪人」「ペンギン・ハイウェイ」

kurawan2018-08-24

検察側の罪人
薄っぺらい。サスペンスドラマのレベルの一本。とにかくキャストの力不足が思い切り表に出た作品でした。演出も力が入っていない感じで、原田眞人監督作品と思うと情けなかったです。

検事になったばかりの沖野がベテランの最上検事から最後の訓示を教室で受けているシーンから映画がはじまるのだが、このシーンからまず完全にリアリティがない。検事に見えない検事役なら何とかなった木村拓哉がエリート検事役になるとこんなにも精彩にかけるかと、唖然としてしまった。しかも、対する沖野を演じた二宮和也も全然ダメで、その時点で映画のレベルが見えてしまった。

モダンな加工をしたビル群の絵のタイトルバック。そして、一人の容疑者を取り調べる沖野の薄っぺらさ。そして次々と登場するキャラクターが全然浮き上がって来ないし、個性が埋没。

物語の核である、最上が学生時代に遭遇した一人の少女の惨殺事件、そしてその時効ののちもその犯人と思われた人物松倉を執拗に追い続ける最上の異常さも全然出ていないし、とにかく最上のキャラクターがペラペラでリアリティがない。

松倉を陥れるために、今回の事件の本当の容疑者を殺そうとするくだりも全然迫力がないし、そんな最上に目をつける橘の潜入ジャーナリストぶりも全然。さらに最上の異常さを追い詰め、執念で真実を暴露しようとする沖野の仕掛けるクライマックスも鮮やかさに欠ける。

しかも、無罪になった松倉を遠回しに狙って最後の事故に見せかけて殺してしまう最上の策略も唖然とするほどに稚拙。

原作はおそらくもっとしっかり描写されているのだろうが、その空気感を全く掴めずに演じた役者の力量不足で映画が完全に駄作になった感じである。おそらく原田監督もどうしよう見なかったのだろう。

こういう映画を作って、大々的に宣伝して、ヒットするかのようにしようとする制作サイドの姿勢を疑うような映画だった。


ペンギン・ハイウェイ
大好きな森見登美彦原作の小説のアニメ版。原作があまりにも独創的でファンタジックなので、かなり不安だったが、それなりに、原作の味をちゃんと汲んだ仕上がりになっていたので嬉しかった。残念ながらアニメーションの出来は平凡だったのはちょっと残念。

原作のキーワードになる海辺のカフェ、お姉さんのおっぱい、ペンギン、などなどが次々と出てきて映画が始まる。

主人公の小学生アオヤマは歯医者の助手のお姉さんに憧れている。なぜかこの街にペンギンが出るという噂が広がり、たまたま、アオヤマはお姉さんが投げたコーラの缶がペンギンに変わることを目撃、その研究を始める。

森の向こうの空き地には、液体の巨大な玉のような物体が浮かんでいるのを発見したアオヤマのクラスメートのハマモトさんたちと研究を始める。

実はこの球体はこの世界の裂け目らしく、それを修復する力があるのがペンギンだとわかるのだが、慕うお姉さんがそのペンギンを作り出せるということから、お姉さんは人間ではないと結論するアオヤマ少年の悲しさがたまりません。

最後は、ペンギンが球体を破壊して、お姉さんは消えてしまう。いつか大人になって、偉くなって、お姉さんと再会することを夢見るアオヤマのシーンで映画が終わる。

ほぼ原作に忠実で、その不思議世界がアニメという形でうまく映像になっています。アオヤマ少年の、憧れの大人の女性への切ない気持ちや、まだ恋とも友達とも判別がつくかつかない頃の小学生たちの感覚もちゃんと描かれています。

球体の不思議感、ペンギンが大量に登場するクライマックスの造形もうまいし、一級品とまでは行かないまでもいい感じの仕上がりでした。良かったなぁ。もう一度原作を読みたくなりました。