くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「デイアンドナイト」「モースト・ビューティフル・アイランド」「赤い雪 RedSnow」

デイアンドナイト

それほど期待してなかったのですが、思いの外重厚に積み重ねられた人間ドラマの佳作でした。監督は藤井道人

 

一人の男明石のクローズアップ、涙が溢れている。カットが変わると、父が内部告発をしたものの自殺してしまい、明石が実家に戻ってきたところから物語が始まる。

 

閉鎖した工場を見に行った明石はそこで北村という男と出会う。彼は父に世話になったということだった。やがてマスコミなどの執拗な訪問などが相次ぎ、父の集めた資料などを調べている中、明石は、父を陥れた親会社の男三宅らに復讐心が芽生え始める。

 

そして北村に連絡、彼が運営する児童園を訪ねる。しかし北村は明石に夜の仕事を担当して欲しいと行って連れていく。なんとそこは、車の窃盗団で、他にも女性の不法就労させた風俗店などを北村は運営していた。この違法な金があるからこそ児童園が運営できているのだという。

 

児童園には高校生の奈々という女の子がいて、いつも絵を描いているのだが、明石に興味を持って何かと話しかけてくるようになる。

 

明石は、かつて父が準備したリコール隠しの資料を、知り合いの町工場から盗み出し、マスコミに流すが、三宅はそんな彼の行動を疎ましく感じる。

 

高校卒業を控えた奈々は、東京へ出ていくためもあり自分の両親のことを調べに戸籍を調べる。なんと、東京にいると北村に教えられていたが実は死んでいた。

 

北村は若き日、自分の妻を殺した男を殺したのだがその男には2歳の娘がいて、それこそ奈々だった。そして今日までその贖罪を続けていたのである。全てを知った奈々は北村に詰め寄る。北村は冷たい川に身を投げ死んでしまう。一方、三宅は明石の動きを封じるため彼らのやっている窃盗などを警察にリークし、次々と明石の仲間は捕まってしまう。今まで何も捕まらなかったのにいきなり捕まるということは、三宅も昔から何処かで噛んでいたのかもしれない。

 

明石は最後の対決のための、内部告発資料の原本をネタに三宅を呼び出し、殴りかかり重傷を負わせ捕まってしまう。三宅は殴られながらも、明石の父の告発によって露頭に迷うことになった大勢の従業員の不幸か、万に一つの不具合の結果に終わるだけの不良部品を隠す悪かを問いかける。

 

果たして善と悪は本当にどこに存在するのか。物語のテーマが、じわじわと画面から漂ってくる展開、演出がなかなか見せてくれます。役者の迫真の演技も映画を盛り上げ、しっかりとした出来栄えになっていたと思います。力作でした。

 

「モースト・ビューティフル・アイランド」

都会の裏に潜む暗部を描いた実話に基づく作品で、見終わったあとどっと疲れが出てしまいました。監督はアナ・アセンシオ。

 

不法移民で極貧の生活を送るルシアーナは、ある日知人から、高額な報酬がもらえるバイトを紹介される。セクシーなドレスを着てパーティに出るだけだと聞かされ、教えられたところに行くが、地下で女たちが何かの順番を待つ不気味なところだった。

 

そして自分が呼ばれ部屋に入ると、なんと、毒蜘蛛を体に這わせ、一定時間無事で過ごせるかどうかの賭けをする金持ちたちの余興に場だった。

 

必死で蜘蛛が這うのに耐えたルシアーナは、交代した知人の蜘蛛を自分の手に這わせてなんとか助けてやり報酬をもらい夜の街に消えていく。

 

それだけの話ですが、蜘蛛を這わせるシーンがとにかく肩がこるほどに緊張感があり、見終わってぐったりしてしまった。

 

「赤い雪 RedSnow」

演出、展開がとにかくくどいので、描くべく映像が混濁してしまい、物語も無駄に複雑になって、何を言いたいのかわからなくなってしまった。監督は甲斐さやか。

 

雪がしんしんと降る中、一人の少年が走っている。そして真っ赤な雪の轍に立ちすくんで映画は現代へ。

 

主人公白川一希は漆塗りの漆器を作る仕事をしている。ある時、木立というジャーナリストがやってきてかつての事件を調べているという。かつての事件とは一希の弟が行方不明のままいなくなった事件で、犯人と思われた江藤早奈江が疑われたが、少年の一希が全く喋らず、無罪になってしまった。そして木立は早奈江の娘早百合を見つけたことから事件を再調査していた。

 

早百合は、年配の男と暮らし、寂れた毎日を送っていた。映画は早百合と一希の過去のトラウマを浮き彫りにしながら、実際に何が起こったのかを映し出していく。

 

一希は少年時代の記憶が飛んでいて、弟を見失った後の時間の記憶がなく悪夢にうなされている。早百合は、一希の弟が殺される現場を目撃したはずだと木立に詰められるが告白をしない。

 

最後の最後に、たまらなくなった一希は早百合を殺す寸前まで追い詰めてしまう。そして見えてくる少年時代の記憶。弟ばかりが可愛がられ、嫉妬していた一希は、時々遊びに行っていた早奈江の家に弟を連れていった。もともと幼い男の子が好きだった早奈江は、一希の弟を可愛がり、その後の結末も一希は目撃していたが、喋らなかった。

 

映画は一希と早百合が霧深い湖に船を浮かべ消えていくシーンで終わる。全てが闇に消えていくというラストでしょうか。とにかく、過去と現代を繰り返し、それぞれの描写がしつこいので、とにかく無理やり複雑な作品に仕上がっている。もっと緩急をつけた演出をして見せるところに焦点を当てればいい映画になったろうにと思う一本でした。