くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「半世界」「雪の華」

「半世界」

これは良かった。軽妙な脚本と演出のリズムにどんどん乗せられていくのですが、登場人物がどれもとっても人間臭いし素敵、しかもラストは思いもかけぬ感動を作り出す一方で、何か訴えかけてくる人生の機微を感じてしまう。ちょっとした秀作でした。監督は阪本順治

 

幼馴染の瑛介と光彦が山道を歩いて、ある木の根元にたどり着く。子供の頃、そこに宝物を埋めたので探しにきたのだ。そして三ヶ月前に遡る。

 

一人炭焼きをして暮らす絋は、車で運転中、幼馴染の瑛介を見かける。瑛介は自衛隊に入りこの村を出ていたのだ。久しぶりに再会した幼馴染に絋は同じく幼馴染の光彦も誘い、三人で昔話に盛り上がろうとするが、瑛介はどこか影があり、家に引きこもってしまう。

 

しかし、絋は無理やり瑛介を炭焼きの手伝いに駆り出す。次第に打ち解けていく瑛介の姿の一方、絋は妻初乃に任せきりの息子明の問題が浮き上がり始める。

 

学校でいじめられているらしい明に瑛介が男として接していく下りは、ある意味よくある流れだが、ここから次第に瑛介の自衛隊での出来事が次第に頭を持ち上げてくる脚本の展開が実にうまい。

 

ある時、光彦が経営する中古車屋でトラブルがあり、瑛介が持ち前の格闘技でチンピラらを痛めつけたことがきっかけで、瑛介は絋の炭焼き小屋を離れ、近くの漁港で働き始める。

 

競争が激しく、次第に経営も圧迫してくる炭焼きの仕事をなんとかしようと、初乃は同窓会と偽って一人大手の旅館に炭を売りに行く。ところがそんな頃、一人炭焼きをしていた絋は胸が苦しくなりその場に倒れてしまう。そして、絋はそのまま他界。

 

大雨の降る中、初乃、光彦、瑛介らに見送られる葬儀に場面になる。明をいじめていた悪ガキのリーダーが道端で見送っているショットなど、細かいところに配慮された脚本の緻密さが、ボディブローのように胸に熱いものを感じさせてくる。

明は結局炭焼きの仕事を引き継ぐ一方で目標にしたボクサーにも挑戦している姿で映画が終わる。

 

石橋蓮司などを始め脇役に芸達者を配置した上に、テンポの良い洒落たコミカルなセリフと演出が実に物語に味わいを深め、本当に奥の深いドラマに仕上がっています。阪本順治らしいと言えばそうですが、彼ならではの作品じゃないかと思います。よくある葬式シーンなのに、初乃のちょっとした仕草に涙が溢れてしまいました。いい映画でした。

 

雪の華

いかにも作り物というピュアなラブストーリーを期待して見に行ったが、期待通り、本当に素直ないいお話のラブストーリーに心が洗われてしまいました。やはり岡田惠和の脚本は素敵です。監督は橋本光二郎

 

主人公美雪がフィンランドでオーロラを待っているが、見れなくてがっかりする場面から始まる。

 

カットが変わり、医師の検査結果を聞いているシーン。残り一年を悔いのないように生きてくださいと言われ、これまで自分の人生が不幸の連続だったことを振り返る。幼い頃から体が弱く、これという幸運もなく今日まで来た。そんな落ち込んだままに歩いていた彼女は、後ろから来たひったくりにカバンをひったくられる。もう踏んだり蹴ったりとその場にしゃがみ込んだが、なんとたまたま前にいた青年が犯人を追いかけてカバンを取り戻してくれた。

 

そして数日して、たまたま街でその青年を見かけた美雪は、あとをつけ、勤めているカフェにたどり着く。そこで、店長らしき男がカフェの経営が苦しくて、間も無く閉店するというのをその青年と話しているのを耳にする。

 

美雪はその青年悠輔に、100万円あげるので一ヶ月だけ恋人になって欲しいと頼む。かなり無理のある展開で、かなりくさいのですが、そこは割り切って見るところです。

 

そして、訳もわからず悠輔は美雪と交際らしきことを始める。しかし、いつの間にかお互いに本当に惹かれ始めていた。

 

そんな時、担当医からそろそろ入院して治療に専念するように言われ、美雪は最後のミッションとして、悠輔とフィンランドに行くことにする。そして無事旅行から帰り、すべての契約が終わり日常に戻る二人。

 

ところが、悠輔は弟が怪我をして連れて行った病院で、美雪と担当医を見かける。美雪は最後の望みで再度フィンランドへオーロラを見にいく挑戦することにしたのだ。

 

一人旅立った美雪を追って悠輔もフィンランドへ飛ぶ。そして、オーロラを待つ美雪のところに駆け寄った悠輔は、命の限り恋人でいようと抱きすくめる。空には、奇跡のような赤いオーロラが広がりエンディング。

 

わぁ、歯が浮くようなラブストーリーです。でも、バッチリの美少女でもない中条あやみがなかなかいい感じだし、嘘っぽいながらも夢の世界に入り込める魔力のある映画になってると思います。

 

エピローグは、悠輔のカフェで車椅子でいる美雪。悠輔は美雪を抱き上げる。美雪はもしかしたら長生きするかも、暗転。

 

これでいい。こういう感動もありだと思います。映画の出来不出来より、たまには素直に感動しましょう。