くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「レニ」「アタラント号」「新学期操行ゼロ」「競泳選手ジャン・タリス」「ニースについて」

「レニ」

レニ・リーフェンシュタールのドキュメンタリー。監督はレイ・ミュラー

 

美しい深海の撮影をしているレニの姿から映画が始まり、交互にヒトラーの映像が交錯して、映像は、女優時代のレニ・リーフェンシュタールの姿になる。

 

山岳映画に出演、自らアルピニストになりながらの体当たり撮影。やがて、自らも映画を撮るようになり、ヒトラーとの出会いから、問題作「意志の勝利」を撮影。

 

しかし、その映像は決してナチス擁護でも反ユダヤでもない映像芸術である。やがて、傑作「オリンピア」を撮影するにがこのドキュメンタリーの最大の見せ場となる。

 

とにかく圧倒される撮影技術と感性に画面にのめり込んでしまう。かなり以前にこの作品を見たことがあるが、今再見したらもっと圧倒されているかもしれない。今回、断片的ながら見直した映像シーンだけでも食い入ってしまう。

 

やがて終戦とともに、非難を浴びて映画づくりができなくなり、ようやく、カムバックしたときに目をつけたのはアフリカ。さらに、その先は海の中に潜っていく。

 

映画はそこで終わる。すでにレニ・リーフェンシュタールは亡くなっているが、この映画ではまだ生きていた。全く素晴らしい才能であると思うし、たまたま生きた時代と国が彼女を非難の的にしてしまったという感じである。私もそれは全く同感。見る値打ちのある一本でした。

 

アタラント号」(4Kレストア版)

ロマンが凝縮された映像表現の傑作。ジャン・ヴィゴ監督の唯一の長編にして傑作をリマスター版で見ることができました。

 

一人の男ジュールとその息子でしょうか、少年が走っている。今日は彼らが載っている船の船長ジャンの結婚式。二人は船長らを祝福するべく船に行って音楽と花束を準備して待つが、少年は花束を川に落としてしまい。とドタバタ劇のごとく映画は幕を開ける。

 

そこへジャンと妻のジュリエットがやってきて、四人はアタラント号に乗り込み早速川を漕ぎ出す。しかし、狭い船の中、ジャンとジュリエットの新婚生活はなかなかそれらしくならない。さらに田舎者のジュリエットにはジュールの自由奔放な性格も、興味津々である反面疎ましい。

 

ようやくパリまで来て、ジャンとジュリエットはダンスホールへ行くが、そこでジュリエットは陽気な御意商人に口説かれる。それを良しとしないジャンはさっさと船に戻るが、夜のパリを見物したいジュリエットは、一人パリの街へ。

 

ジュリエットが一人でて行ったことに腹を立てたジャンはさっさと船を出してしまう。取り残されたジュリエットは、カバンまでひったくられ、なんとか寝るところを見つけて生活を始めるが、一方のジャンは愛するジュリエットと別れ、意気消沈してしまう。

 

そんなジャンを見かねたジュールは、パリへジュリエットを探しに行って、無事発見し連れて戻る。やっと新婚生活になる二人。アタラント号は川を進んで行って映画が終わる。

 

オープニング、霧が晴れてアタラント号が見えてくる美しいシーン、途中霧に覆われて展開する小さなトラブル。ジャンとジュリエットのロマンティックな水に中で好きな相手が見えるというエピソード。蓄音機を直してレコードを聴いたりガラクタいっぱいに部屋に住むジュールの部屋など、隅から隅まで寓話のような映像が展開する様はまさにファンタジーです。これがジャン・ヴィゴの個性なのでしょう。

 

「ニースについて」(4Kレストア版)

リゾート地ニースの日常を切り取った映画ですが、ときにオーバーラップや逆回し、スローモーションなどカメラテクニックを駆使した映像の遊びがとにかく楽しい。

 

ジャン・ヴィゴ監督の個性が爆発した作品でとっても楽しかった。

 

「競泳選手ジャン・タリス」(4Kレストア版)

ジャン・タリス選手がいかに早いかを、徹底的にカメラが捉えるのですが、例によって、ジャン・ヴィゴ監督らしい逆回しやスローモーションなどを駆使して映像の遊びのように描いていきます。

 

ラストは、水着姿から服装がオーバーラップして外套を着たジャン・タリスが水の上を歩いて去って行きます。

 

「新学期操行ゼロ」(4Kレストア版)

これまた、楽しい短編。列車に乗っている悪ガキ二人。なぜか、死体が目の前のあり、列車を降りると学校の寮。

 

とまぁ、あれよあれよと、寮の中で何かにつけ規則規則で縛り付ける先生に悪ガキ中心に反旗を翻して大暴れするという作品。

 

クライマックスの有名な枕投げのシーンを含め、全編、例によってのカメラ遊びで描かれるテンポ良い展開で描かれていく、あるようでないストーリーが楽しい映画でした。