くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「狼たちの午後」「天国でまた会おう」

狼たちの午後

1972年、アメリカニューヨークで実際に起こった銀行襲撃事件を扱ったシドニー・ルメット監督の名作。緊張感あふれる展開が終盤まで続き、一瞬の静のシーンの後のラストシーンへの畳み掛けが見事な映画でした。

 

ニューヨークの何気ない景色の描写から映画が始まり、やがてある銀行の店先、一台の車に三人の男が乗っている。予定通り閉店間際の銀行に入り、サルは支店長に銃を突きつける。ソニーはロビーでタイミングを計るが、なんともう一人が怖気付いて、やめると言って出て行ってしまう。しかも金庫の中には大した金額も入っていなかった。

 

間も無くして警察に取り囲まれ、ソニーたちは行員たちを人質に立てこもることになる。しかし、そもそも簡単に済むと思っていたソニーたちは戸惑うばかり。ベトナム帰りのサルはいまにも切れそうになるのをソニーは必死でなだめ、やがてやって来たモレッティ刑事と交渉を始める。

 

ソニーはいくつかの要望の後、妻を呼んでくれという。なんとソニーはホモで男性と結婚していた。まだまだゲイは疎まれていた時代、周囲の好奇の目にさらされていく。

 

そして、FBIのシェルドンは、サルは危険なので始末を任せて貰えばソニーはなんとかすると持ちかけてくる。ソニーはバスで空港に行き、そこから外国に逃げる計画を立て、人質と共に空港へ向かう。

 

空港に着いたが、運転していた男は、タイミングを見て隠していた銃でサルを撃ち、ソニーは逮捕されてしまう。このクライマックスの細かいカット編集は見事だが、この直前、ソニーの実際の妻や母親との電話などの会話シーンでそれまでの緊張感に静の場面を作っていく構成のうまさが秀逸。

 

実話を基にしているとはいえ、しっかり娯楽作品に仕上がっているのは流石にシドニー・ルメットと脚本のフランク・ピアソンの才能ゆえでしょう。いい映画でした。

 

「天国でまた会おう」

不思議な感覚のちょっとシュールでファンタジックな色合いなのですが、物語は親子、友人との人間ドラマの空気感がなかなかの映画でした。監督はアルベール・デュポンテル

 

1920年ロッコ、一人の男アルベールがある詐欺を働いたかどで逮捕され尋問を受けている。そして時は1918年、第一次大戦末期、爆弾で穴がたくさん空いた大地を一匹の犬が走っている場面から映画が始まる。巧みに穴を避けて、ある塹壕へ入り込んで駆け抜ける。この犬は伝令で、本部の指示を前線で戦うプラデル中尉のところに運んできたのだ。

 

誰もが停戦を望んでいて、この伝令も停戦命令だったが、戦争好きのプラデル中尉は、命令を無視し、気に入らない二人を真昼間に偵察に出す。間も無くして二人は殺され、フランス軍は攻撃を仕掛け、ドイツ軍が反撃してくる。

 

仕方なく飛び出したアルベールは、偵察に出た二人は後ろから撃たれているのを目撃。撃ったのはプラデル中尉だと知る。銃撃をかわしていたアルベールは、穴に落ちるが、そこにあった馬の死体の空気で助かり、そこへ駆けつけたエドゥアールに助けられる。しかし直後に爆撃で、エドゥアールは重傷を負い、顔の下半分をなくしてしまう。

 

必死で看病するアルベールに、エドゥアールは、父の元に帰りたくないと懇願し、アルベールはエドゥアールが死んだことに偽装しフランスへ戻る。そして二人で貧しい生活を始める。エドゥアールは画家で芸術家でもあるので、自分の顔にかぶる様々な形のマスクを作りかぶりながら生活を始める。

 

そんな時、プラデル中尉は、富豪の令嬢と結婚し金持ちになっていることを知る。また、ある財団の総裁が計画している軍人の慰霊碑の資金をだまし取ろうとエドゥアールは計画。最初は乗り気でなかったが、プラデルはその計画に乗る。なんとその総裁こそ、エドゥアールの父親だった。

 

一方、墓地の事業で私服を肥やすプラデルは、総裁に反感を持ち、自らの悪事を正当化するために画策を重ねていた。しかし、そんなプラデルを陥れようとアルベールとエドゥアールは計画、まんまとプラデルを失脚させる寸前になるが、そんな時、慰霊碑の詐欺が露見し、総裁はプラデルの尻拭いをする代わりに犯人を探すように命じる。

 

そして、とうとうプラデルはエドゥアールを見つける。そして総裁はエドゥアールと再会し、息子が生きていたことに二人は抱き合うが、直後、エドゥアールは窓から飛び降りて自殺する。

 

一方、詐欺で大金を手にしたアルベールは、総裁の家で知り合ったポリーヌと恋に落ち、アフリカに逃げ結婚しようとしていて、逮捕されたのだ。

 

事の次第を聞いた捜査官は、最後にアルベールにあることを告げる。前線でプラデルに殺された若い兵士は自分の息子だったと。そして、アルベールを逃がしてやる。

 

アルベールはポリーヌとエドゥアールの手伝いをしていた孤児のルイーズを伴い晴れて自由となっていずこかへ歩き去って映画が終わる。

 

エドゥアールが次々と変える仮面が非常にシュールで芸術的な色合いを作り出し、人間ドラマなのだが、ファンタジックな様相を生み出す。流麗な流れるようなカメラワークも美しいし、街並みのショットも素敵な作品で、クオリティの高いフランス映画という感じの一本でした。