「まく子」
大林宣彦監督は扱いそうなファンタジーですが、映画の仕上がりとしては普通でした。多分脚本が弱いのと、脇役が光っていないために平坦な仕上がりになったかなという感じです。監督は鶴岡慧子。
温泉町で暮らす主人公慧が学校から帰ってくるところから映画が始まる。彼の家は旅館で、父は女好きで浮気をしているらしいが、家庭は至って平和である。帰り道一人の少女に声をかけられ、翌日彼女が転校生だと知る。
彼女の名前はコズエで、慧の旅館に母と住み込みできた。コズエは自分が宇宙から来た異星人だと慧は告白される。こうして、本当か嘘かわからない展開で物語がスタートするが、慧は大人に変化していく自分の体に戸惑っている。
そんな慧にコズエは自分たちの星では体は変化しないのだという。この街には手作りの神輿を河原で壊すさいせ祭りというのがあり、そのシーンが中盤に描かれ、祭りの日に旅館に放火があったりする。
やがて、コズエが帰る日が来て、街の人たちが丘に集まり、見送るファンタジックなシーンがクライマックス。のはずだが、帰ったあと新しい転校生が来てまた慧の旅館に住み込み、実はその転校生が祭りの日に放火したのだと告白。
慧はコズエと枯葉を撒いて遊んだ城跡に連れて行き、同じように撒いて映画が終わる。どうもポイントが二箇所になった感じで、原作の流れを重視しすぎた感じですね。もう少し、映像として視点を絞って再構成すれば面白くなったかもしれません。
「あなたはまだ帰ってこない」
映画のクオリティはなかなかなのですが、とにかく陰気でうっとおしい映画でした。ほとんどが主人公マルグリッドの心のつぶやきなので、ぶつぶつ語る物語展開にうんざりしてきます。監督はエマニュエル・フィンケル。
1945年4月から物語が始まる。主人公マルグリッドは夫ロベールを待っている。すでにドイツはパリから去って、戦況が変わっているのに、収容された夫が帰ってこないのだ。そして時間は一年前に遡る。
レジスタンス運動に身を投じていたロベールはゲシュタポに逮捕され収監されてしまう。マルグリッドは、危険と知りながらゲシュタポの手先ラビエに近づき、夫の行方の情報を得るべく危険な関係を築いていく。
しかし、やがてドイツは劣勢になり、フランスから撤退してしまう。帰ってくると思われた夫はいつまでも帰ってこず、夫の仲間のディオニスに支えられながら日々を暮らす。しかし、心身とものボロボロになったマルグリッドは、本当に夫が帰ってくるのを待っているのかさえわからなくなってくる。
物語は彼女の苦悩の様子を彼女の一人台詞でほとんど語っていくので、とにかくどんどん隠にこもっていく展開となっていく。物語が暗い上に演出もそういう流れなので、沈む一方の空気感にとにかく息苦しくなってくるのです。
結局、ロベールは瀕死の病気のまま帰ってきて、やがて体も回復、マルグリッドはロベールと海岸に行くシーンの後、彼女は夫に離婚を申し出、ディオニスと暮らしたいと持ちかけたという語りで映画が終わる。
とにかく暗いです。うっとおしいです。その印象だけが心に残る映画でした。
これは面白かった。散りばめられるユーモアの数々と、主演のブリー・ラーソンが少々太めでドタドタ走る姿がヒーローらしくないのだけど、ぶっ飛んで破格に強いので圧倒されて吹っ切れてしまう。爽快そのものの一本でした。監督はアンナ・ボーデン、ライアン・フリック。
クリー人であるヴァースは両手から出る破壊力を制御するべく訓練をしている。自在に変身することができるスクラル人に捕まっているソーを救うべくチームに加わり向かうが、実は罠で、ヴァースはスクラル人に捕まって過去の記憶を引き出されてしまう。
しかし、ヴァースは自らの力で脱出し宇宙船を破壊するのですが、惑星C53すなわち地球に落下してしまいます。
そこでシールドという地球外の敵を想定した組織のフューリーと出会います。一方、ヴァースを追ってきたスクラル人達は、ヴァース達が隠れているマリアのところを襲うのですが、実はヴァースはかつては地球人で、クリー人で地球に潜んでいたローソン博士が開発したエネルギーキューブのテスト飛行をしていて、クリー人に襲われ墜落。その時エネルギーエンジンを破壊した際のエネルギーをヴァースが浴びて、強大な力を得たことがわかる。
そしてクリー人こそが敵で、スクラル人との戦争を止めるべくローソン博士が新エネルギーを開発した真相がわかる。
あとはフューリーとヴァース、実は本名キャロルとスクラル人がクリー人と対決するという展開になっていく。
とにかく、力を自在に操れるようになったキャロルがやたら強い。弾道ミサイルさえも軌道を変えるし、巨大宇宙船も破壊してしまう。爽快そのものなのです。
そして、ローソン博士が唱えていたマー・ベル計画をそのまま自身の名前とし宇宙の平和のためキャロルが旅立ち映画は終わる。
一見猫だがやたら怖い宇宙猫や、そこかしこのちょっとしたお遊びギャグが楽しい映画で、この手のシリーズの中では白眉の一本だった気がします。