くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「赤線地帯」「雨月物語」

「赤線地帯」(4K復元版)

40年ぶりくらいの再見、溝口健二監督の遺作にして、名作。全く、人間描写のすごさに圧倒されてしまいます。明確に色分けされた登場人物、そのそれぞれに描かれるドラマの圧倒的なリアリティ。カメラが、色街で働く女たちの心の中にまでは切り込んで行くのではないかというような視点の鋭さ。まさしく、死を前にした鬼気迫る溝口健二の演出が最後の輝きを放っているように思います。


物語は今更なので書きませんが、何度見ても、ただただスクリーンから訴えかけてくる迫力に打ちのめされますね。


売春禁止法が成立する直前の緊張感あふれる時代描写も見事。


いくところがなく、止むに止まれずこの道に入り、死に物狂いで働くものの、二進も三進も改善してこない現実。そんな彼女たちに追い打ちをかけるように、さらなる惨めさを突きつけていくストーリー展開。


ラストシーンの、初めて店に出た女性が、客引きを見よう見まねでする圧巻のエンディングに溝口健二の真骨頂があるきがします。本当に素晴らしい一本です。


雨月物語」(4K復元版)

何度も見た名作中の名作。夢幻の世界、世の中の儚さ、人生の機微、まさに日本的様式美の真髄が見事に描かれています。


一見、流麗なカメラワークのようで、斬新なカット繋ぎや暗転の妙味、陶酔感を誘うような映像のリズム感にただ、引き込まれてしまいます。


シンプルなドラマ展開に織り込まれた幻想の世界の不可思議さは、唯一無二の仕上がりを見せて、何度見直してもその不思議な魅力にはまり込んでしまいます。


映画史に残る名作とはこのレベルを言うのでしょうね。素晴らしかった。