くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「イメージの本」「12か月の未来図」

「イメージの本」

全くついていけない。語りだけでセリフはなく、様々な映画のワンカットをつないでいく一方で、別のシーンが絡む。サイケデリックな色彩と、短いカットの連続にリズムも物語もメッセージもつかむことができなかった。正直、観客を意識していない映像作りと言わざるを得ません。監督はジャン=リュック・ゴダール

 

何から始まって、どう展開しているのかをここで語ることは全くできない。そんな映画でした。いや、映画なのか、ただの監督の思いつくままのイメージなのか、それも不明でした。

 

「12か月の未来図」

期待してなかったけれど、思いの外良かった。脚本がいいのかもしれない。よくある展開だが、エピソードの積み重ねが実にうまくできている。それと、余計な横道に無駄にそれず、まっすぐに物語が進むのが良い。監督はオリビエ・アヤシュ=ビダル

 

パリの有名高校に勤めるベテラン教師のフランソワは、あるパーティでのちょっとした言葉から、郊外の中学校へ一年だけの教師として赴任することになる。その中学校は、以前の名門高校とは打って変わっての問題校だった。

 

教師の言葉に耳も貸さず、返事も適当で言うことを聞かない生徒に、フランソワは持てる知識を駆使して対応していく。そしてふとしたことから生徒に勉強の面白さを伝えられたフランソワは、急激に生徒たちと接近していく。特に、何事にも無関心で成績も悪いセドゥとは次第に心が通うようになる。

 

この中学校の最初のカットで様々な子供達がいることを描写、冒頭のパリの高校のカットとの対比で、今フランスが抱える様々な問題を瞬時に見せるシーンがうまい。

 

やがて、クラスもまとまってきた頃、ヴェルサイユ宮殿への遠足を企画する。ところがセドゥが、大好きな女の子マヤと王のベッドで自撮りする事件を起こし、あわや退学の危機になる。何かあれば法的に退学させるというフランスの制度への皮肉が的確なエピソードで描かれるくだりである。

 

一旦は退学が決まったセドゥだが、フランソワの反撃でなんとか止まり、やがてフランソワの赴任期限の一年がやってくる。セドゥはフランソワのそばに座り、フランソワが勤めるパリの有名校に行くにはどれくらい勉強すればいいのか聞く。そして希望に満ちてにこやかに笑う。このカットもうまい。

 

友達の輪の中に飛び込むセドゥのシーンで映画が終わるが、その後の軽いタッチの曲もなかなかです。よくある話といえばそれまでですが、単純な感動学園ドラマに収めなかった深みのある脚本が見事です。いい映画でした。