「コレット」
シドニー=ガブリエル・コレットの半生。それほど期待してませんでしたが、なかなか良質な映画でした。主演のキーラ・ナイトレイの演技が抜群で素晴らしかった。監督はウォッシュ・ウエストモアランド。
19世紀の末、ガブリエル・コレットがプレイボーイながら彼女に恋しているウィリーと結婚することになる。こうして物語が始まる。
ゴーストライターを使い本を出版するのを仕事にしているウィリーだが、いまひとつパッとしない上に、女好きでいつも貧乏暮らし。しかしガブリエルの文才に気がついた彼は彼女に本を書かせる。そして、ガブリエルが書いたクローディーヌシリーズはベストセラーとなる。
一方で、ガブリエルは、自らの存在を表に出していくことになり、自由奔放な人生を始める。そんな彼女に作品を書かせることだけを求めるウィリーはやがてガブリエルから見放されていく。
ガブリエルは、男装の女性と恋に落ち、やがてパントマイムの世界にものめり込み舞台巡業を始める。金に困ったウィリーはクローディーヌシリーズの版権を譲ってしまい、それに怒ったガブリエルは、彼の元を去り、コレットの名で新しく本を出す。
過去の作品の権利も取り戻すというテロップの中映画は終わるが、自らの意思に目覚めていくコレットの心理変化を見事に演じたキーラ・ナイトレイの演技が素晴らしく、作品を牽引していく。
実在の女性の物語ですが、映像の端々へのこだわりも見られ、音楽センスもなかなかで、映画として非常に良質な仕上がりになっています。いい映画でした。
「小さな恋のうた」
沖縄のバンド、MONGOL800の曲からインスパイアされた作品で、可もなく不可もなし、これという貶すところもないあっさりとした綺麗な青春映画でした。監督は橋本光二郎。
高校生のバンドながら、熱狂的なファンもいるグループがライブしている場面から映画が始まる。東京のプロデューサーからも声がかかるようになった矢先、メンバーの一人で作曲していたメンバーが交通事故で死んでしまう。
残るメンバーが意気消沈する中、亡くなったメンバーの妹が、未発表の曲を発見、さらに米軍基地にいる少女と亡くなったメンバーとの淡い恋も明らかになるにあたり、未発表曲を学祭で演じることになるというのがストーリー。
交通事故の場面や終盤の屋上のライブシーンなどに、適当さが見られない工夫のある映像演出があるのはとっても好感で、何気ない普通の作品なのに、その丁寧な作りに小品ながらの個性が見え隠れするのがとってもいい。
インスパイアされた曲のイメージに任せる部分もないわけではないけれど、見て損のない一本に仕上がっていたと思います。
「男と男の生きる街」
典型的なアクション映画で、映画にしよう映画にしようという意気込みが見られる一本。監督は舛田利雄。まさに舛田利雄でした。
西成で一人の画家が殺される。新聞記者の主人公がその事件を追うが、そこに、かつて父親を殺された事件も絡んできて、さらに姉のフィアンセの刑事も絡んでくる。
黒幕は麻薬や武器を扱う悪党商社の男で、なにやら胡散臭い連中が周りを囲んで、クライマックスへなだれ込んでいく。
てんこ盛りの見せ場の連続ですが、どこかまとまりのないのは、この時代の典型的な形。でも、軽く楽しむには十分なところが映画が娯楽であった時代の空気でしょうか。
「アリバイ」
フィルムノワールの一本。かなり古さを感じさせる犯罪映画でした。監督はピエール・シュナル。
クラブで透視術を芸にしているヴァンクレール博士の舞台から映画が始まる。会場にアメリカ時代に忌み嫌っていたギャングのゴードンを見つけ、ステージの後、彼を追いかけて銃で撃ち殺す。そして、クラブのホステスエレーヌの部屋に行き、一晩一緒にいたことにして金を渡してアリバイを依頼する。
翌日、それが殺人のアリバイと知ったエレーヌは、真実を話そうとするが、脅しをかけるように、エレーヌの友人がクラブで殺される。
警視は部下であるローランをエレーヌに近づけ、彼女の心を奪った上で、真実を話させるという作戦に出る。かなりの強引な展開ですが、物語は、ローランに惹かれていくエレーヌの物語とヴァンクレール博士の圧力が描かれサスペンスを生んでいく。
そして最後の最後、エレーヌの目の前でローランを逮捕させ、切羽詰まったエレーヌはが真実を話すことになる。全てがバレたヴァンクレール博士は自害する。って意外とやわな悪役だ。
そして、エレーヌとローランは晴れて本当の恋人になってエンディング。相当強引な映画ですが、これもありでしょうか。単純に面白かったし、ヴァンクレール博士役のエリッヒ・フォン・シュトロハイムの存在感に圧倒される一本でした。