くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「長いお別れ」「さよならくちびる」「堕ちた天使」

「長いお別れ」

淡々と展開するドラマの中に散りばめられるさりげないユーモアが微笑ましいのですが、もう一歩物足りなさを感じ、テンポに乗り切らない感じで非常に長く感じてしまいました。いい映画なのですが、ちょっと足りない感じです。監督は中野量太。

 

校長先生までした一家の長昇平は、最近、認知症気味になっているところから映画は始まる。献身的に尽くす妻の曜子、アメリカにいる長女の麻里、地元で食堂を作りたいという夢のある芙美がそんな父をなんとか支えようと奔走するのが本編になる。

 

麻里の家庭のギクシャクやら芙美の何気ない日常を描きながら、次第に衰えて行く昇平の姿を捉えて行く。所々に、何気なくユーモアのあるカットを挿入し映画にテンポを作ろうとするものの、どうも今ひとつ根底のドラマが盛り上がって来ないので、とにかく長く感じてしまうのが残念。

 

でも、最後の最後、延命治療をするかどうかの決断の場で、昇平の誕生日会をする曜子たち。アメリカでは、麻里の息子で、日本へ来た時に昇平と心を通わせた少年が校長の前で話をして映画が終わる。

 

不思議な空気感は描けているのですが、ほんの僅かに面白さに昇華しきれなかった感じです。いい映画なんですがちょっと残念。

 

「さよならくちびる」

これは良かった。すごくシンプルな物語なのですが、エピソードの配分がとっても良くて、さりげない青春が切々と語られて行く様がとってもみずみずしい。監督は塩田明彦

 

インディーズで大人気になったデュオハルレオが解散することになり最後のライブツアーに出発するところから映画が始まる。

 

高架下に止めたロージーのシマの車にハルとレオが乗り込んでくる。三人のこれまでがほんのわずかなカットで的確に挿入していきながら、三人はツアーを進めて行く。

 

ハルとレオの出会い、シマとの出会いから、路上ライブ、そして人気を博すまでの素朴な映像がとっても好感。

 

そして、行き違いがあるわけでもないのだけど、シマはハルが好きで、レオはシマが好きでというさりげない恋物語も絶妙。恋人になるわけでもなく、それぞれのこれまでがほんの僅かに描写され、やがてツアーは最終地の函館にやってくる。

 

三人でご飯を食べ、シマは知人の急死で一旦田舎に帰り、最後の舞台で合流。解散ライブということで大いに盛り上がった後、三人は東京に戻ってくる。

 

そして一旦はハルとレオは車から離れるが、間も無くして戻ってくる。そして、シマと三人、またやり直すのか辞めるのか、映画は終わる。このラストもとっても清々しいのです。

 

車を止める高架下の絵も素敵だし、ライブハウスの描写もなんかいいんですよね。素敵な青春映画でした。

 

「堕ちた天使」

典型的な展開のフィルムノワールの一本。どんでん返しで見せるサスペンスですが今となってはかなり無理があるお話であることは否めない。ただ、美しいモノクロ映像と光と影の演出も美しい。監督はオットー・プレミンジャー

 

一人の男エリックが長距離バスに乗っているが、無賃乗車を咎められ、とある町に降り立つところから映画は始まる。立ち寄ったバーで一人の美しい女ステラと出会う。バーには密かにステラに気がある引退した刑事風の男、バーの主人がいる。

 

エリックはステラといい仲になり、結婚を考えるが、金がない。そこで、金持ちの女ジューンに目をつける。そして偽装結婚をして金を手に入れることを考える。結婚をして新婚初夜にエリックはステラに会いに行くが、素っ気なく去って行く。そして、帰って来て夜が明ける。

 

翌朝、刑事がやって来て、ステラは殺されたという。そして、エリックに嫌疑がかかったので、エリックはジューンと逃げることに。ところが、ジューンが捕まる。エリックは戻って来て、実は真犯人は刑事を引退した男だと罪を暴いてエンディング。

 

クライマックスがなんとも荒っぽいのですが、典型的なフィルムノワールの設定と展開が楽しい。