くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「新聞記者」「サイド・ストリート」「トゥルー・クライム殺人事件」

「新聞記者」

これは久々に見た傑作だった。サスペンスとしても人間ドラマとしても見事に仕上がっているし、何と言ってもカメラが抜群にいい。冒頭の手持ちカメラからfixに移ってからの構図のうまさも群を抜いています。冒頭からラストまで引き込まれてしまいました。監督は藤井道人

 

東都新聞のデスクで、かつて父が誤報の責任を取って自殺した経歴のある吉岡が仕事をしている。政府の理不尽な施作に憤る記者たちの姿を手持ちカメラで捉える冒頭。

 

ここに内閣府調査室に勤める杉原という男がいる。外務省にいたがここに配属され、政府の様々な情報管理と操作を担当しているが、その強引さに不信感を持ち始めている。妻は臨月だがほとんど家に戻れないほどに忙しい。上司の多田は冷酷なほどに政府を守るべく強硬的な指示をしてくる。

 

そんな時、東都新聞に羊の絵を看板にした謎の文書がFAXされてくる。新設大学に関する政府特区に関する資料だった。

一方、杉原にかつての上司神崎から電話が入る。そして、食事を共にする時間を持つ。

 

ある時、内閣府で同期の都築と久しぶりに会う。彼がふと漏らした、内閣府調査室が神崎をマークしているという一言が気になった杉原は、神崎と再度接触しようとするが程なくして神崎は自殺してしまう。

 

杉原は神崎が関わっていたと思われる大学新設の問題を調べ始めるが、一方吉岡も上層部の圧力に逆らって、送られてきた資料からその送り主が神崎らしいと突き止め調べ始める。そして、たまたま神崎の通夜の席で杉原と会い、さらに内閣府を張っていて、杉原が内閣府の関係者と知り協力を求める。

 

そして神崎の自宅で、羊の絵の資料一式を発見。それは、軍事的な化学兵器の開発も可能な医療大学校新設の資料だった。

 

杉原は裏を取るために都築の部屋に忍び込み、資料を撮影、都築が入ってくるのを時間稼ぎするために吉岡は都築を街頭で引き止める。その姿をじっと見る多田の姿があった。

 

そしてその資料を元に吉岡は記事を作成、とうとう新聞記事となる。そして、もし政府上層部から圧力がかかり誤報と言われたら杉原の実名を出すように言う。そんな頃、杉原には第一子が生まれる。

 

そして、退院の日、家に帰った杉原はたまっていた郵便物の中に神崎からの手紙を見つける。それは明らかの遺書に近いものだった。

 

そして記事が出ると、予想通り政府からの圧力がかかる。吉岡は杉原の実名を出す旨知らせに内閣府に走る。時を同じくして杉原は多田に呼ばれる。記事について杉原がやったことではないだろうと言う念押しと外務省に戻してやると言う言葉だった。

 

黙って部屋を出る杉原、道を走る吉岡、二人のアップにカメラが変わる。そして交差点で吉岡は杉原を認め声をかけようとする。杉原は言葉を発しないが「ごめん」とつぶやく。そして暗転エンディング。

 

人間の表と裏をしっかり描きながらも、サスペンスとしても政府の暗部を探り出していく。特に素晴らしいのが田中哲二扮する多田の姿。一見官僚的に冷酷に事務をこなしているかに見えるが、彼の過去がどことなく見え隠れするのだ。

 

終盤、吉岡の電話で、かつて彼女の父が疑われた誤報事件は誤報ではなかったと告げたり、杉原に対してバッサリと人事権を行使しているようにも見えない。その微妙さが見事に演技に出ているのは素晴らしいと思いましす。

 

ノンフェクションとはいえ単純な政治サスペンスでもなく、人間ドラマをしっかり描いた点で傑作と言いたいです。

 

「サイド・ストリート」

なるほど面白い。まっすぐに展開する物語ながらあれよあれよと話が前に進んでいく。有名なクライマックスのカーチェイスシーンも見応えあるし、フィルムノワールなので小品ながら、楽しい一本でした。監督はアンソニー・マン

 

主人公ジョーは臨時の郵便配達人で、いつものように郵便を配達する。ある事務所へ配達した時にたまたま、札が床に溢れたのを目撃。妻が臨月で金もいるし贅沢をさせてやりたいジョーは思わずその事務所へ入り込み、二百ドルだけ盗もうと考える。

 

ところが引き出しを開けると三万ドル入っていて、思わず全額盗んでしまう。このシーンの少し前に、一人の男が銀行から三万ドルを引き出し、なにやら脅されているらしい女に手渡し何かの写真を取り戻すシーンがある。そしてその男は殺されてしまう。

 

警察は殺人事件を追い始める。ジョーは盗んだものの怖くなり、二百ドルだけ使い、残りを行きつけのバーに預ける。ところが後日バーに行くと包みがただのネグリジェの変わっている。慌てて従業員の家に行ってみれば殺されていた。

 

ジョーは妻に別れを告げ逃げる決心をするが、最後は犯人も捕まりハッピーエンドで終わる。

 

クライマックスのカーチェイスは、ビル群の上からのカットと路上の車のシーンを交えての編集が見事なシーンでした。一本の筋で進んでいく物語が実にシンプルで面白い一本でした。

 

トゥルー・クライム殺人事件」

これは面白かった。くっきりとシルエットを多用した画面作りと、二転三転していくストーリーの妙味にミステリーの醍醐味を味わうことができるフィルムノワールの傑作でした。監督はマイケル・カーティス

 

ある部屋で秘書が電話を取っている。ドアが開いて男のシルエットが壁に映し出され、次の瞬間秘書は殺され、そのままシャンデリアに吊るされる。

 

ラジオで犯罪ドラマを語るヒット番組のナレータービクターが仕事を終えて帰ってくると、友人たちがサプライズで誕生日パーティを開いてくれた。秘書が死んで数日なのに元気つけようと言うのだ。そこに、マチルダの夫と名乗るスティーブが現れる。マチルダはビクターが後見人をしている富豪の娘で、先日事故で死んだのだ。

 

ティーブはほんの数日しか新婚生活はなかったが愛していたとビクターに近づく。この物語にビクターの妻や親戚たちが絡んでくる。

 

そこへ、死んだと言われていたマチルダが帰ってくる。ところがスティーブのことを覚えていない。しかしそのままビクターたちのところに戻って来る。実はスティーブは冒頭で死んだ秘書の幼馴染で、どうしても自殺したのが信じられず調べるために潜入したのだ。

 

さらにビクターは殺人を犯すためのトリックに録音盤を利用して次のターゲットも殺してしまう。さらにマチルダも殺そうとするが未遂に終わり、トリックを知ったスティーブも亡き者にするため、使用人を使って彼をゴミ焼却場で処分しようとする。

 

クライマックスは警察とのカーチェイスの末にスティーブは助かり、マチルダも危ないところで助かる。スタジオで番組収録するビクターのところに警察がやってきて、観念したビクターは最後の放送ですと告白して映画が終わる。

 

とにかく面白いし、光と影の演出が見事な一本でした。