くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

「アルキメデスの大戦」「パラダイス・ネクスト」「サマーフィーリング」

アルキメデスの大戦」

それほど期待していなかったが、なかなか面白かった。脚本の構成がいいのとやはり菅田将暉がうまい。監督は山崎貴

 

開巻、大和が沈められるスペクタクルな場面から映画は始まる。そして9年前、新型艦建造に、空母建造を推進する山本五十六らと巨大戦艦建造を目指す嶋田らの攻防が続いていた。時代は航空機の戦いに変わっているという山本らの空母建造費提案に、巨大にもかかわらず安価な建造費を出してきた嶋田らに、山本らは対抗する手段を模索する。

 

そんな時、料亭で豪遊する櫂と出会う。彼は帝大数学科の天才と言われていたが、家庭教師で入っていた尾崎造船でのトラブルで中退させられていた。しかし天才的な数学力に目をつけた山本らは、最終決定会議までに嶋田らの見積もりの不正を暴くために櫂を引き入れる。

 

図面も資料も全くない中、櫂らは戦艦の本当の見積もりを算出していく。物語は櫂らが様々な手で戦艦の全容を把握していくまでがサスペンスフルに展開。薄っぺらくなりがちなストーリー展開をなかなか重厚に描いたのは見事。

 

そして、嶋田らの妨害にもめげず、最後の最後で、実際の建造費を決定会議で披露し、山本らを有利にするのだが、戦艦の設計見積もりをした平山が、公にする数字を小さくして外国を欺くためであると大逆転をする。しかし、さらに櫂は戦艦の構造上の欠陥を数式で暴露するに至り、平山は設計を取り下げ、その場を去って去る。全て山本らの思惑に進んだかに見えたのだが。

 

そして9ヶ月後、平山は自分の設計工場に櫂を呼ぶ。そして、二十分の一の戦艦の模型を見せ、これを作ることが敗戦間違いない日本を滅亡から救う手段だと説明する。

時は真珠湾攻撃の2年後、巨大戦艦大和に立つ山本長官の姿があった。

 

ラストの二転三転がもう少し鮮やかであれば傑作になりそうだったが、なかなか物語の奥の深い作り込みが見応えのある映画でした。まあ、山本長官役の舘ひろしが、見た目より貫禄がないのが残念。やはり山本長官は三船敏郎やね。

 

「パラダイス・ネクスト」

よくわからない。物語をシュールにしているのはわかるが、ストーリーは作者の頭の中にあるだけで、外に伝えるように出力されていない感じです。監督は半野喜弘

 

台湾のある食堂。島という男が食事をしているがそこへ牧野と名乗る男が勝手に向かいに座り話しかける。やがて二人は紹介されていた部屋に行くが、そこには変な親子が先に住んでいる。仕方なく他を探す。

 

その途中、シャオエンという女性と知り合う。なぜかこの女性はかつての島の恋人に瓜二つらしく、その恋人は死んだらしい描写がある。そして、その女性を通じて牧野も絡んでくる。

 

三人は遊ぶようになり、ある時三人でドライブに行くと、シャオエンは殺されてしまう。その遺体を小舟に乗せ、牧野もその船に乗り、海に流されていく。

 

突然、シャオエンを殺した変な男が車の中に現れたり、島に恨みのあるらしいかつての恋人の父親らしい声もあったりとどれもが中途半端な描写で出てくるので、結局、物語が繋がらない。わざとこんなブツ切れにしたのかと思うような演出に参ってしまう。という感じの映画でした。

 

「サマーフィーリング」

最愛の恋人を亡くした一人の青年の立ち直りまでを描いただけのシンプルな物語なのに、抜群の映像と音楽センスの良さに最後まで引き込まれてしまう素敵な映画でした。監督はミカエル・アース。

 

朝のベッドで全裸の男女が寝ている。このカットと構図がまず美しい。女性サーシャは一人先に起き、恋人のロレンスに触れた後服を着て仕事場のアートセンターに行く。そこで仕事をこなし、退社して、芝生敷かれた公園を歩いていて突然倒れる。

 

病院、どうやらサーシャは亡くなったようで、失意に落ち込むロレンスの姿、友達らのシーンが続く。そして五日後のベルリン。サーシャのいなくなった部屋で一人目覚めるロレンスの姿。

 

サーシャの妹のゾエが、落ち込んだロレンスに声をかけてきたり、両親のいるパリに誘ったりする。一年後のパリ、さらに一年後のニューヨークへとロレンスの姿を捉えていく展開が実にリズムよく、背後にかかる曲も何気なくハイテンポになっていく構成も素晴らしい。

 

ゾエの両親が持つパリの湖畔の家の壮大なほどの美しさがストーリーの転換点となり、パリからニューヨークへ移ることで、カメラに捉えられる景色に賑やかさが加わっていく。まさに映像センスの良さというほかありません。

 

そしてニューヨークで新しい恋人に出会うロレンスは、その女性と一夜を共にして映画は終わります。本当にシンプルな物語なのにこれほど純粋に美しく描かれると、下手なラブストーリーは見ていられなくなりますね。素敵な映画でした。本当に素敵な映画でした。