くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「世界の涯ての鼓動」「存在のない子供たち」「ブレス あの波の向こうへ」

「世界の涯ての鼓動」

正直、退屈な映画だった。全体に緩急ができていないのだと思う。出会いで盛り上がる二人の感情が見えないし、その後の死に直面する物語も普通、さらにラストに至っての再度の盛り上がりが甘い。それなりに静かな展開を意識した演出なのだろうが、その中にも波は必要だと思います。監督はヴィム・ヴェンダース

 

物語は、どこかに監禁されているジェームズのカットから始まり、時間は遡る。海辺のホテルでダニーとジェームズは出会う。二人は意気投合し、すぐに愛し合うようになる。ジェームズはMI6の諜報員で間も無くソマリアへ行く予定だった。一方のダニーは生物数学者で、近々深海艇に乗る予定である。

 

それぞれが一歩間違うと死に直面することを覚悟している緊張感もあり、孤独を感じていた。やがて二人はそれぞれの地へと別れていく。

 

しかし間も無くしてダニーはジェームズと連絡がつかなくなる。ジェームズはソマリアに着いた途端監禁され生死をさまよっていた。ダニーはこれから臨む深海艇への恐怖心から孤独感に囚われていく。

 

やがて、ジェームズは組織のリーダーから生かされることを選ばれ、外に出される。そして、ある海岸に連れていかれた時、メンバーたちの会話から近くに米軍がいることを知り、GPSを起動させる。

ダニーは深海艇に乗り、調査を進めるが突然電源が落ちるトラブルが起こる。

 

やがて米軍のヘリはやってきてジェームズは助かり、ダニーの深海艇も再起動できて浮上を始めて映画は終わる。

 

美しい景色を随所に織り込んだ映像が、物語の緊張感と対照的になっているのですが、展開に緩急が弱く、心理ドラマとしても盛り上がらないのが何ともしんどかった。

 

「存在のない子供たち」

映画としてはめちゃくちゃに良かった。ただ、手放しで褒め上げていいものだろうかと考えてしまいます。あまりに悲しくて、あまりに壮絶で、あまりに切なく残酷。これが現実なのだと思うと、いたたまれなくなって涙が止まらなくなってしまうのです。だから、何かしないと、何か動かないとと思うけれど、どうしようもない自分を見た時に、手放しで作品として褒められなくなる。監督はナディーン・ラバキー。

 

中東の裁判所の法廷で物語は始まる。幼い少年ゼインは両親を訴えたのだ。罪状は無責任にも自分を産んだこと。物語はここから遡ることになる。

 

大勢の兄弟とその日暮らしをする家族の元で、学校へもいかせてもらえず仕事をするゼイン。仲の良い妹サハルの面倒を見ながら、持ち前の才覚で兄弟をまとめていたが、ある時サハルは無理やり結婚させられ連れ去られる。

 

サハルと一緒に家を出るつもりだったゼインは、なけなしの荷物をゴミ袋に詰めて家を出てバスに乗る。そして途中、遊園地のあるところで降り、しばらくそこで暮らすが、食べ物もそこをつく。そんな時、ラヒルという移民の女と知り合い、彼女の子供ヨナスの面倒を見ることで一緒に暮らすようになる。

 

ところが、ラヒルは市場へ行ったきり帰ってこなくなる。ゼインは必死でヨナスの面倒を見るが、ついに堪り兼ねて、置き去りにしようとする。しかし、気を取り直し、かねてより、赤ん坊を欲しい人に斡旋している男にやむなくヨナスを預け、その男の手はずで海外に行くべく自宅に身分証を取りに戻る。

 

ところがそこでサハルが死んだことを知る。逆上したゼインは包丁を持って、サハルが嫁がされた男の元へ走る。そして包丁で刺す。

 

逮捕されたゼインは、刑務所からテレビ局に電話し、両親を訴えたいと告げる。

一方ラヒルは市場で不法移民として逮捕され刑務所にいた。ゼインの姿を見かけたラヒルはゼインに息子の行方を聞く。そして、斡旋された先を探してもらうべく依頼する。

 

法廷ではゼインの裁判が続く。ラヒルの息子は発見され母の元に戻される。ゼインは晴れて身分証を手に入れることになり、その写真を撮るときに笑顔をするカットでエンディング。

 

手持ちカメラを多用したドキュメントタッチのカメラワークもさることながら、無我夢中でヨナスを育てるゼインのシーン、そして思い詰まって置き去りしようとする姿に涙が止まらない。こんな現実があることの切なさに胸が熱くなってたまりませんでした。映画を傑作と褒めるよりもこの現実をまず心に留め置きたいと思います。素晴らしい作品でした。

 

「ブレスあの波の向こうへ」

原作があるので概ねは変えられないのだが、脚本が悪いので、前半と後半が分断されてしまって、ラストで何とかまとめようとしたものの描ききれなかった感じの仕上がりでした。面白くもなくワクワクもなく、切なさもないのはちょっと残念です。監督はサイモン・ベイカー

 

親友同士のパイクレットとルーニーが川で戯れている場面から映画は始まる。やがてサーフィンに興味を持った二人はなけなしの金でぼろぼろのボードを購入。スウェットスーツも着ずにサーフィンを始める。

 

そんな二人の前にサンドーというサーファーが現れ、二人を様々な入江に連れて行く。彼は伝説のサーファーとして有名だった人物で、テクニックを教えながらより危険なチャレンジを二人に与えていく。

 

この辺りのドラマ部分がまず弱く、サーフィンシーンはなかなかのものですが、どうも良くない。というのもこの後ルーニーとサンドーが海外に行き、パイクレットは取り残されるが、サンドーの妻イーヴァと関係を持って行くという青春ドラマに流れて行くからである。

 

やがて、サンドーたちが帰ってくるが、パイクレットは彼らと行動をともにしないことにして映画は終わる。

 

パイクレットの成長の物語であるはずが、サーフィンシーンに力が入りすぎ、さらにイーヴァとのシーンにも力が入りすぎて、結局ポイントがうやむやになったように思います。真面目ないい映画なのですがもうちょっと描くべきものを絞ったら良かったと思います。