くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「やっぱり契約破棄していいですか?」「北の果ての小さな村で」

「やっぱり契約破棄していいですか?」

面白い展開なのに、要所要所の詰めが雑なために、物語全体が甘い仕上がりになってしまったのが本当に残念。監督はトム・エドモンズ。

 

自殺の名所の橋の上で一人の青年ウィリアムが今にも飛び込もうとしている。そこへ奇妙な老人レスリーが現れ、なにやら名刺を渡して去る。一方ウイリアムは意を決して飛び降りるが、通りかかった船の上に落ちてしまい助かってしまう。

 

落ち込んだウィリアムが貰った名刺を見ると、暗殺者とある。実はレスリーは老年を迎えていてノルマが達成できずターゲットを探していた。ウィリアムはレスリーに会い、自分を殺してくれるように依頼する。ウィリアムは人生に絶望し自殺未遂をくりかえしていたが死ねなかったのだ。

 

そんな時、ウィリアムの小説を出版したいという連絡がエミリーという女性から入り、話し合ううちに二人は引かれ始める。ところがレスリーはウィリアムに銃口を向けていた。そして引き金を引くが、なんとたまたま前を通ったボーイを撃ってしまう。

 

レスリーはボスからいい加減に引退するように勧められる。またウィリアムはレスリーにに契約を破棄するように求めるが、レスリーは引退も契約破棄も拒否する。レスリーのボスは暗殺者をレスリーの元に送るが、すんでのところでその男もレスリー暗殺を失敗、返り討ちにあい死んでしまう。

 

ウィリアムは、レスリーに提案をする。死んだ暗殺者を殺すように依頼したことにしてレスリーのノルマを達成させ、お金はウィリアムが払うことにすれば契約を破棄してくれるかと。

 

間も無くしてレスリーのボスがレスリーの家にやってきて、引退の記念時計を渡そうとするがレスリーは拒否。しかしレスリーの妻が言葉巧みに引退を受け入れさせことなきを得る。

 

何もかもうまくいったウイリアムとエミリーが二人で歩いている。目の前で少年が道路に飛び出す。走ってきた車に引かれそうになるのをウィリアムが飛び出し助け、自分が車に衝突。エミリーが駆け寄るところで映画は終わる。ウィリアムは無事な感じのエンディングなのだが、このラストはなかなか秀逸。

 

レスリーの暗殺組織の諸々がもうちょっと思い切ってシリアスを徹底したらちょっとしたコメディに仕上がった気がするのですが、ちょっと工夫不足という感じです。面白い映画なのですが今一歩のめりこめませんでした。

 

「北の果ての小さな村で」

これは本当に見る価値のある作品でした。これというドラマはないのですが、ありのままのグリーンランドを捉えるカメラが実に美しく、都会に住むものの考え方のギャップが素朴な映像だけで描かれていきます。監督はサミュエル・コラルデ。

 

デンマークに住むアンダースは実家の農場を継ぐのが嫌でグリーンランドの小さな村に教師として赴任することを選ぶ。

 

ところが現地についてみると、いかに自分が自然の中で暮らす人々のことを理解していなかったことを目の当たりにし、村人から全く受け入れられない現実を知る。

 

一時は挫折してしまうアンダースだが、地元の猟師と知り合い、地元の人と同じ生活を楽しむことで次第に生徒たちからも受け入れられるようになっていく。

 

そして、猟師について雪原を走り、大自然の厳しさを目の当たりにする一方、白熊の母子と出会い、命の偉大さを知る。

 

こうして感想を書くとありきたりなのだが、この物語が映像だけで描かれているから素晴らしい。冒頭、氷山が散らばる海を走る小舟のカットから、点在する村の家々のカット、さらに吹雪や真っ白な雪山の数々など眼を見張る。オーロラの神秘的な映像からクライマックスの犬ぞりのシーンは圧巻。

 

実在の人物の物語ですが、まるでドキュメンタリーを見ているような感覚に浸りました。