「サタンタンゴ」
7時間18分の超超大作。なるほど傑作である。映像の展開、構図の組み立て、ストーリー構成の絡み合せなど、かなりのクオリティの映画だと思います。ではどんな筋かと聞かれても答えられないのは、どこか心象風景的な演出になっているからでしょう。この長さがなければ、数年に一度くらい見直したくなる映画です。監督はタル・ベーラ。
ジメジメした泥に覆われた村。たくさんの牛がこちらに歩いてくる。それを延々と捉えるカメラ。映画は例によって、長大な長回しから始まる。ある部屋の中、次第に夜が明けていく様をフィックスで捉える映像。そこに一人の女が映り、洗面器で自分の股間を洗う。物音がして主人のシュミットが帰ってきたからと間男らしいフタキを逃す。あの牛は一体どこへ行ったのか、そこに視点を移すと映画の全体を捉えられるかもしれません。
シュミットはクラーネルと組んで村人の貯金を持ち出す計画があるのをフタキはたまたま聞き、自分も加えてもらおうとする。ところが一人の女がやってきて、死んだはずのイリミアーシュが村に帰ってきたと知らせる。
村人たちは酒場に集まり、酒宴を始める。一方で翌日イリミアーシュは帰ってくる。ここまでは物語の発端として理解できる。カメラは、まず一方からの物語を描き、時を少し戻して、もう一方からの物語を繰り返しながら展開していく。
中盤に一人の少女が登場し、猫を猫いらず殺したり、酒浸りの老人との絡みが描かれる。そして終盤、この少女が死んでしまい、その席でイリミアーシュは、村人の金を集めて農園を起こす事業を提案、全員の金を集めて、村人たちも含め村を離れていく。
しかし、その先がかなりシュールで、警察署で何やら調書を作成するシーンがあり、もう一度村の場面になり、前半で酒を買いに出た老人が元の椅子に座り、酒を飲んで、外に出ると教会があって、見渡すと村のあったところは沼地になっていて、家に戻り窓に板を打ち付けて映画は終わる。なんともシュールなラストだが、なかなかのものである。
細かい部分をかけないのですが、長回しで見せる映像詩のごとき心象風景のような映画で、時の流れがあるようでない不思議な感覚に陶酔感を覚えます。確かに映画としては傑作だと思います。