くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウエスト」(ウエスタン)オリジナル完全版

「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウエスト」

死ぬまでにスクリーンで見たい映画の一本をようやく見ることができた。しかも完全版。こういう、映画らしい映画、大作らしい大作がどうして消えてしまったんだろうと思う。映画を見たという感動に浸ることができる。極端なクローズアップと超遠景で捉える広大な西部の景色、そして、無駄なく決まった画面の構図、男のドラマの中に忍ばせるさりげないロマン。これが古き良き映画なのです。エンニオ・モリコーネの切ない雄大な音楽に引き込まれてしまいました。監督はセルジオ・レオーネ

 

西部に向かって鉄道が伸びて行こうとする時代、あるのどかな風景、一人の男マクベインが鳥を撃って、それを息子が拾い、二人で家に帰る。姉と兄が食事の準備で待ち、兄は今日やってくる新しい母を迎えに駅に行こうと支度している。ところが、突然ガンマンが現れ、全員皆殺しに会う。リーダーの男はフランクと言った。

 

ある駅に三人のガンマンがやってくる。一人また一人と画面に現れるカットがまず素晴らしい。そしてくどいほどの描写で静寂と緊張感が描かれる。やがて一台の汽車がやってくる。三人は身構えるが誰も降りてこない。汽車が通り過ぎると一人の男が立っている。彼はハーモニカを常にくわえている。三人のガンマンが身構えるが早いかこの男の銃が一瞬で三人を撃つ。この男も肩に銃弾を受ける。

 

駅に汽車が入り、一人の女性ジルが降りてくる。しかし、迎えに誰もこない。仕方なく馬車に乗り家に向かう。途中、御者が酒場に寄る。ジルも降りるが、そこにお尋ね者のシャイアンが保安官を殺し手錠のまま入ってくる。隅にはハーモニカをふく男。

 

ジルが家に着いてみれば、夫となる男も子供達も殺されていた。どうやらシャイアンという男が犯人らしい。しかし、証拠はシャイアンの一味が常にきているロングコートの切れ端で、実はシャイアンに罪を着せようとしているフランクの雇い主モートンの仕業だった。モートンはマクベインの土地を望んでいた。彼は結核で、松葉杖を離せず、自分専用の汽車で移動していた。彼の夢は西まで鉄道を敷き、死ぬ前に海を見ることだった。

 

一方、ハーモニカの男はフランクに恨みがあり、彼を追ってここに来たのだ。そんな時、一人家にいるジルのところに、保安官から逃げてきたシャイアンが立ち寄る。そして、自分がマクベインを殺したのではないとジルにいう。シャイアンは美しいジルに心なしか気持ちが揺れる。

 

物語はシャイアンとハーモニカがジルを通じてフランクたちを追い詰めていく物語だが、登場する人物誰もが生きることに一生懸命な姿を全編にわたって描いていく。マクベインは、かつてここに鉄道が来ることを予測してこの土地を買った。そして、ここに駅のみでなく一つのマクベインの街を作ることが夢で、鉄道がすぐそばまで迫っていて夢の実現が近かった。ただ、鉄道がここを通る時に駅ができていることが条件だった。

 

ハーモニカはマクベインの夢を叶えるため、シャイアンの懸賞金を手に入れて土地を手にし、駅舎の工事を始める。一方、フランクはモートンの金で寝返った部下たちに命を狙われるが、ハーモニカの機転で助かる。

 

やがて三人はジルの家にやってくる。ハーモニカはかつてフランクに兄を殺された恨みを晴らそうとしていた。その時、フランクがハーモニカにくれたハーモニカがその決意を忘れさせないために吹いていたのだ。そして決闘の末フランクを倒し、真実をフランクに話す。

 

ジルは、密かにハーモニカに恋していたが、ハーモニカはジルに別れを告げる。その後を追ってシャイアンも去るが、シャイアンはふとしたことで銃弾を受けていて、ハーモニカのそばで息をひきとる。ハーモニカはシャイアンを馬に乗せいずこかへ去る。

 

やがて鉄道がジルの家の前に入ってくる。駅舎がなんとか完成している。一つまた時代が流れていく。映画はここで終わります。

 

さりげなく見せる男のロマン、過去のものになりつつあるガンマンたちの姿、夢を追いかける男たち、そして、労働者として存在するインディアンのカットなど、きめ細かな演出が素晴らしい。映画とはこういうものである。ラストの、ジルの尻を触るシャイアンのユーモアも最高。これが映画です。