くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「空の青さを知る人よ」「ボーダー 二つの世界」「エセルとアーネストふたりの物語」

「空の青さを知る人よ」

日本のアニメーションの実力を見せつけられたような秀作。とっても良かった。アニメでしか表現できない描写を随所に盛り込んで、テンポいいストーリー展開で見せる。ラストの処理もうまい。いい映画でした。監督は長井龍雪

 

あおいが一人でベースの練習をしているシーンから映画が始まる。細かいカットを繰り返して物語の舞台を説明していくこの導入部にまず引き込まれます。そして、あおいの子供時代。姉のあかねの膝で、お寺のお堂で練習する慎之介らの高校生バンドを見ている。慎之介のベースに憧れるあおいは、大きくなったらベースをやりたいと言い、慎之介、通称シンノに可愛がられる。

 

あかね姉妹の両親が事故で亡くなり、あかねとあおいは二人で生活を始める。慎之介は東京へ出てミュージシャンになると言って、好きなあかねを誘うもあかねは行かないと断る。あかねにはあおいの面倒を見る必要があった。

 

時が経ち、あおいは高校生になり、ベースの練習に余念がない。卒業後は東京でミュージシャンになると言うが、実はシンノが好きだった。あかねは市役所勤めだが、そんな時、市のイベントで演歌の大御所新渡戸団吉がやってくる。そして彼のバックギターが慎之介だった。

 

一方、お寺のお堂で練習しているあおいは、ある時、高校時代のシンノがいることに気がつく。シンノはお堂から出ることができず、なぜここにいるかもわからなかった。

 

物語は、シンノと慎之介、あおいとあかねの淡いラブストーリーを中心に、ファンタジックな青春ドラマが展開していきます。

 

新渡戸団吉のイベントをクライマックスに、現代の慎之介が、忘れていた夢を再発見し、あかねに気持ちを伝える。あおいはシンノに恋していたことを告白、やがてシンノは消えてしまい、誰もが未来への一歩を踏み出して映画は終わります。

 

物語の展開のテンポが非常によく、クライマックス、シンノがあおいを連れて空を飛び、トンネルに閉じ込められたあかねの元へ向かう爽快なシーンも絶妙のインパクトで心踊ります。

背景にリアル映像を重ねた絵作りも美しく、日本アニメの魅力を垣間見た感じがしました。

 

「ボーダー二つの世界」

外観に隠された純粋な愛の世界を描いたと言う感じで、「ぼくのエリ200歳の少女」に共通したメッセージが伝わってくる作品ですが、虫を食べる場面や、主人公の容貌、赤ん坊や、生殖シーンのリアルさはさすがに北欧の空気感がどんよりと重苦しく感じてしまいました。監督はアリ・アッパシ。

 

主人公ティーナが、虫を捕まえて話すシーンから映画は幕を開ける。入管所で、怪しい人物を嗅ぎ分ける才能のある彼女が仕事についている。彼女の見た目は人と少し違って、正直醜い。彼女は未成年ポルノのデータを発見したことから、警察に協力し、赤ん坊を利用しているアジトを発見する。

 

ある時、入管所で一人の異様な風貌の男ボーレと出会う。何かを感じた彼女はボーレを自分の家の離れに住まわせるようにする。実は彼は虫を食べ、ティーナに自分と同類だと説明する。そして、尾てい骨の上にある傷は赤ん坊の頃尻尾があり、それを切除したものだと告げる。

 

ティーナの父は、介護ホームにいたが実は自分の本当の父ではないとわかり、ティーナは詰め寄る。一方、ボーレは時々、赤ん坊のような生物を無生殖で生み落すことを知る。ボーレは人間でいう女性の生殖器も持っていた。

 

ティーナはボーレと体を合わせSEXをする。ティーナはボーレの部屋の冷蔵庫で彼が産み落とした赤ん坊を見つける。ボーレは赤ん坊入れ替えで、人間の赤ん坊を誘拐し、未成年ポルノの犯人に売っていたのだ。

 

ティーナはボーレを警察に逮捕させるが、ボーレは手錠のまま海に飛び込み逃げてしまう。数日後、ティーナのところに小包が届く。開けてみれば、赤ん坊が入っていた。ボーレとティーナの子供だと思ったティーナは、その赤ん坊を抱き上げて映画は終わる。

 

なんともグロテスクな話なのですが、その奥にある純粋な愛の形を見せたいのでしょう。ただ、「ぼくのエリ200歳の少女」のようなスタイリッシュな映像作りではないので、ストレートにグロテスクに見えてしまう。メッセージは崇高で、シュールな物は見え隠れする作品ですが、あまりにリアルという感想も有りかと思います。

 

「エセルとアーネストふたりの物語」

綺麗なアニメーション画で綴る、ストレートなイギリスの歴史、日常、人々の姿が、とっても新鮮で美しい作品でした。

 

物語は素朴で、エセルとアーネストが知り合い、結婚し、子供ができて、やがて死んでいくまでを、第二次大戦の惨禍や朝鮮戦争の歴史の流れを背景に、子供達の成長、イギリスの一般家庭の考え方などが丁寧に描写されていきます。

 

どこの国も同じであって、イギリスならではの姿も見られ、勉強にもなる素敵な映画でした。