くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「屍人荘の殺人」「カツベン!」

「屍人荘の殺人」

ミステリーなので、物語の点から見れば、なるほどこういう切り口もあるんだなという感じである。原作通りだとすれば、すでに謎解きの種は尽きたといえば尽きたのだろう。映像としてみれば、特に個性的な演出はされてないし、完全に蒔田光治脚本のままに演出されたというだけで、しかも蒔田光治のテンポが把握し切れていないのが残念。テレビならこの程度で行けたのにという仕上がりでした。ただ、名作ミステリー映画のネタを取り入れたノリは楽しいし、なんといっても可愛い衣装に次々変わる浜辺美波が最高に可愛いので、それだけでドキドキしたので、充分に満足でした。監督は木村ひさし。

 

大学の学食で、明智と葉山が、依頼された食堂のおばちゃんの横領事件を調査するところから物語が始まる。チラチラ出て来くる剣崎の可愛いカットが素敵なのだが、明智のコミカルなキャラクターが秀でて来ないのは残念。中村倫也は下手な役者ではないのに、演出力不足か。

 

続いて、テスト用紙が盗まれる推理へ進み、剣崎が鮮やかに謎を解く展開が、これも今ひとつ面白みに欠ける。そこで、剣崎は明智たちに音楽フェスの合宿に来て欲しいと依頼する。三人の乗ったバスに「悪魔の手毬唄」のおはんが乗ってたりするノリがまず蒔田光治脚本です。

 

紫湛荘に着いた三人は、まずバーベキュー大会へ。一方ロックフェスでは、怪しい男たちがこれまた怪しい注射を観客に打って、観客は何やらゾンビのようになっている。バーベキューも終えた明智たちはロックフェスへ。そこでゾンビと化した観客と出会い、音楽サークルのメンバーは紫湛荘へ逃げ込んで本編となる。

 

ゾンビが迫る中、紫湛荘内で起こる殺人事件を解いていく展開なのだが、どうも殺人事件の部分とゾンビ部分の緩急が同じのためにまとまって来ないのがとっても残念。紫湛荘の最上階に鐘があって、風景といい、空間といい明らかに「めまい」を意識した絵になっている気がするが、原作は如何なものか。

 

次々とゾンビに変わったり、謎の死を遂げたりという伏線が張り巡らされているのですが、どうも、一本筋が通ったものが見えないミステリーになってしまった。浜辺美波を活かしきれない演出も実に勿体無い。

 

結局、カードキーやらゾンビウイルスやらを巧みに使ったトリックで、犯人は、この別荘の持ち主の金持ちボンボンとその友達に乱暴された、去年この合宿に来た女性の妹美冬ということでエンディング。謎解き部分は鮮やかながら、どうもゾンビがらみでぼやけてしまった。

 

面白く作れるはずが、ちょっと舞い上がった感じの仕上がりになってしまって、期待していたものとしてはちょっと物足りなかった。剣崎が葉山に約束するキスのオチも今ひとつだし、ゾンビに変わったはずの明智が最後の最後に登場して、生きていたかと思えばやはりゾンビだった展開もインパクトが弱かった。

とはいえ、浜辺美波は可愛い。それに尽きる。ドキドキして映画を見終えました。

 

「カツベン!」

こういう映画だろうなと思っていた程度の作品で、期待以上でも以下でもなかった。楽しくて面白いのですが、今ひとつ乗り切らないのは、制作側の思い入ればかりが前面に出てしまって、映画黎明期を知らない観客を無視したせいではないかと思います。周防正行監督の全盛期はすでにすぎたのかなという感じでした。監督は周防正行

 

時は大正時代、田舎の悪ガキたちがサイレント映画の撮影場所を走り回るさりげないノスタルジーのシーンから映画は幕を開ける。主人公俊太郎は、駄菓子屋からキャラメルを盗み、たまたま知り合った梅子と映画館に忍び込んで映画を見る。そこで聞いた活動弁士山岡秋聲に俊太郎は憧れていた。そして、梅子に得意の活弁の続きを話すために、キャラメルを盗みに行って捕まる。待ちぼうけの梅子のカットから時は10年経つ。

 

活弁の仕事だとありついたところは、映画を上映してる隙に泥棒を繰り返す輩の集団で、なんとか逃げたいが抜けられない俊太郎。ある時、警察に目をつけられ、逃げる途中で、大金の入ったカバンごと車から落ちた俊太郎は、そのままある街に流れ、青井館という映画小屋にやってくる。そこで雑用をしながら過ごすが、活弁主任は大人気の茂木貴之。憧れの山岡秋聲は飲んだくれになっていた。

 

一方かつての泥棒仲間は、敵対する映画館橘館に雇われ、やがて、俊太郎が見つかる。その少し前、たまたま、山岡がでれなくなり、急遽助っ人した俊太郎の活弁が人気になる。そして、みるみる人気が出る俊太郎だが、茂木の愛人は、かつての梅子で、今は松子と名乗って女優を目指していた。俊太郎は梅子と再会するが、俊太郎を執拗に狙うかつても泥棒仲間や橘館とのすったもんだが巻き起こり、やがて、警官も絡んでの大捕物。まさにサイレント映画のチャンバラのごとき展開となる。

 

松子は、俊太郎とどこかへいく約束をし、駅で待つが、そこに、阪妻を主演にした映画を作る計画の監督がやってきて、松子と京都へ旅立つ。俊太郎は、とうとう刑事に捕まり、独房で得意の活弁を披露。それを面会室で聞く松子。語り終わった後、先に帰った松子からキャラメルの差し入れをもらい映画は終わる。

 

久しぶりの黒島結菜はさらに綺麗になっていて、素敵な女優さんになっていました。映画は、周防正行ならもっとハイレベルを期待しましたが、まあ、彼の作品にしては並だったかなという感じです。でも楽しい映画ではありました。