くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「AI崩壊」「あなたを、想う。」「サイゴン・クチュール」

「AI崩壊」

壮大な娯楽映画の凡作。面白いのだけれど、今更目新しくもない話なので、映像化する時点でもうちょっと工夫が欲しかったです。原作レベルで楽しむ一本だったかもしれません。監督は入江悠

 

物語は2023年、ガンで闘病を続ける望の夫桐生浩介はAI治療の認可を待っていたが却下されたところから始まる。間も無くして、AI治療は認可されるがすでに望はこの世を去っていた。桐生と娘の心はシンガポールに移住する。

 

一方、桐生の弟西村はAI治療の会社HOPEの代表となり、技術の進歩を尽くし、今や日本の八割近くがHOPEによって医療管理されるようになる。そんな時、桐生は総理大臣賞受賞のため日本の招聘される。西村に迎えられた桐生と心は、HOPEの会社で、捜査システムにAI導入を進める桜庭と出会う。間も無くしてHOPEのAIシステムが暴走を始め、その原因を作った犯人を桐生と断定する。

 

桜庭はすでに構築し始めていた警察システムを起動し桐生を追い始める。物語は真犯人を追う桐生、HOPEの中枢に閉じ込められた心、そしてAI暴走で、数値的に不要な人類抹殺へのカウントダウンというタイムリミットストーリーで展開する。おそらく原作の活字なら緊迫感あふれ面白くなるところだが、映像になった時にあまり工夫が見られず、ただ物語を追っていく形になったため、桐生の周りに絡んでくるジャーナリストや古参の刑事が完全に薄っぺらくなってしまった。

 

犯人が桜庭であるのはその登場してから明らかに見えているし、桐生がコンピュータで追跡される下りも目新しさも驚きもない。命の危機が迫る心の物語も適当で、要するに、中身が詰め込みすぎという感じです。

 

結局、右往左往した挙句、書き換えたプログラムを再度読み込ませてハッピーエンドだが、西村の死も含め、それぞれのエピソードが実に弱い。まあ、退屈こそしないが、といってそれほどのワクワクもなかった。

 

「あなたを、想う。」

静かな物語ですが、とっても上品で綺麗な作品でした。所々に挿入される波のカットや空のショットが素敵な画面を作り出しています。監督はシルビア・チャン

 

一人の女性ユーメイがボクサーの恋人の家を訪ねてくるところから映画は始まる。体を重ねるものの、どこか疎遠な空気が漂う。恋人のヨンシャンは網膜剥離を起こしていて、それを隠して試合に出ようとしていたが、とうとうバレてしまい資格を剥奪される。同時にユーメイトも別れてしまうが、実はユーメイは妊娠していた。一方のユーナンは観光ガイドをしていたが孤独な日々を送っていた。

 

ユーメイは画家で、モダンアートを書いていた。たまたま乗っていたバスが事故で立ち往生した時、近くでヨンシャンは釣りをしていた。時が経ち、ヨンシャンとユーメイは結婚し女の子を設けている。絵本作家となったユーメイは書店でサイン会をしていた。そこへたまたまユーナンがで出くわし、何十年ぶりかの再会をして映画は終わる。

 

幻想的な場面をちりばめ、幼い兄弟の人生を切り取った物語が、不思議なほどに美しくピュアな色合いで描かれる様が魅力的な作品でした。

 

サイゴン・クチュール」

軽いタッチの娯楽映画として楽しい一本でした。ベトナムのファッション界と、カラフルなデザインの服のオンパレードが華やかで楽しかった。監督はグエン・ケイ。

 

アオザイという伝統衣装の老舗タン・イーを営む母の姿を、いつも反抗的に古臭いとするニュイは、自分のセンスで洋装店をやりたく、伝統衣装の勉強もせず勝手気ままに暮らしている。しかもミス・サイゴンに毎年選ばれる美貌とセンスには恵まれていた。そんなニュイを改心させるべく、母は昔から伝わる生地と翡翠で1着のアオザイを作る。。

 

ニュイは母に黙ってそのアオザイを着ると、なんと2017年にタイムスリップしてしまう。そこで未来のニュイはアン・カインという名に変わり、店を失敗して自殺しようとしていた。ニュイは未来で、母の店の後を継いだタン・ロアンに会い、さらにファッション界でトップに立つヘレンと出会う。

 

ニュイはタン・イーの店を再興させるべくヘレンの会社に入り、みるみる頭角をあらわすが、ヘレンはニュイに、苦手なアオザイのデザインを任せる。アン・カインは、タン・ロアンに会い、かつての母の秘伝を受け、それを元にニュイとアオザイ作りを始める。そしてアオザイのファッションショーで大成功、ニュイは店を再興し、過去に帰っていく。

 

物語はシンプルで、別にタイムスリップは必要ないような気もするが、テンポのいい楽しい映画でした。