くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「蝶々夫人」(八千草薫版)「ドミノ 復讐の咆哮」「スピリッツ・オブ・ジ・エア」

蝶々夫人」(八千草薫版)

八千草薫がまだ現役タカラジェンヌであった時代の、ある意味珍品フランス映画ですが、八千草薫が自ら吹き込んだ歌声に合わせる演技の素晴らしさにただただ圧倒されてしまいます。物語はあまりに有名な作品ですが、それほどの駄作には仕上げず、しっかりと作られている大作という感じなのがいいです。監督はカルミレ・ガローネ。

 

アメリカ軍人ピンカートンと日本の芸者蝶々の結婚式の場面から始まり、間も無くしてピンカートンは軍艦に乗り去る。そして三年間ひたすら蝶々夫人は帰りを待つ。その間に子供も生まれるもピンカートンは帰って来ず、三年目の日、帰ってきたと思ったら妻を連れていた。そして子供も引き取りたいと言われ、子供を託したのち蝶々夫人は自ら自害する。

 

豪華なセットで屋内撮影のワンシーンのみの演出で、八千草薫の歌う姿が延々と展開する様はある意味圧巻です。珍しい作品で、冒頭の約十分のフィルムが紛失されているとはいえ、タイトルの途中から始まるだけで影響のない映画でした。八千草薫の演技力だけでも見てよかったと思える作品でした。

 

「ドミノ復讐の咆哮」

出来損ないのヒッチコック映画という感じの作品で、所々にパルマらしいヒッチタッチは見られるのですが、物語の構成が雑なために、だらけた仕上がりになってしまいましたね。音楽がピノ・ドナッジオというのも見どころです。監督はブライアン・デ・パルマ

 

デンマーク市警のラースとクリスチャンがパトロールしている場面に始まり。翌早朝からのパトロールに向けて準備して、ラースがクリスチャンを迎えに行くが、クリスチャンは慌てて拳銃を忘れたままラースの車に乗る。そんな時、家庭内暴力の通報が入りそこに向かうと、エレベーターで怪しいアラブ人風の男と出会う。そしてその男を拘束し、クリスチャンはラースに拳銃を借りて目的の部屋へ。そこでは男が殺されていた。一方拘束したアラブ人の男は、手錠を抜け、ラースの首を刺して逃走。クリスチャンがそれを追うが屋根から二人落ちる。クリスチャンが気を失う直前、アラブ人の男が何者かに拉致されて行くのを見る。

 

アラブ人の男はタルジという名で、テロリストのリーダーに家族を拘束されているためそのリーダーを追っていた。そんなタルジをCIAが利用するため拉致したのだ。ラースは死に、クリスチャンはアレックスというラースの愛人とコンビを組んでタルジを追うが、その途上、テロリストのリーダーを見つけてしまう。

 

テロリストは闘牛場で大量殺戮しようとしていた。ドローンを使ったサスペンスシーンを見せ場にクライマックスを作るが、取ってつけたようなヒッチコックシーンである。そして、爆破を阻止したクリスチャンとアレックスは、結局テロリストのリーダーを殺してしまった上にアレックスはタルジを撃ち殺してしまう。

 

スプリットイメージや、エレベーターを使ったサスペンス、冒頭の屋根のカットの独特の構図などヒッチコックを意識し、パルマ流の得意シーンが羅列されているが、いかにもストーリーが雑で、ごっちゃになって、それぞれの人物が描ききれないままに終わる。キレが悪いというより適当に書いた脚本という感じの映画でした。

 

「スピリッツ・オブ・ジ・エア」

アレックス・プロヤス監督のデビュー作で、ローアングルと広角レンズを使った前衛的な映像と物語が独特の雰囲気を醸し出す作品でした。

 

巨大な十字架が乱立するシュールな画面、一人の男が歩いているところから映画は始まる。ローアングルから見上げるような構図、広い画面作りでいくつかのカットの後、一人の女が妙な弦楽器を弾いている。はるかに見えた男を見つけて慌てて家の中へ。そこには車椅子に乗った兄フェニックスがいて、何やら研究している。

 

女の名前はベティ、兄妹でこの家に暮らしている。そこへスミスという男がやってくる。ベティは、兄との平和な暮らしを乱されるのが嫌で追い出そうとするがフェニックスはスミスを迎え入れる。実はフェニックスは飛行機を作ろうとしていた。

 

かつて二人の父とフェニックスは飛行機を作ろうとして父は死に、フェニックスは車椅子になってしまった。ベティはまた不幸が来ると恐れるが、フェニックスはスミスを巻き込んで飛行機を再度作り始める。

 

何度かの失敗の後ついに人が乗れるものが完成、三人で飛んで北の山の向こうへ行く計画だったが、父の墓を守るベティは拒否し、そんな妹を見たフェニックスもいくのをやめる。

 

風が吹いてきて、スミスは飛行機で大空へ飛び去る。なにやらがやってくる。これが何かの説明はなく映画は終わる。SFという前提らしいがそういう感じは全くないし、ただただ広角の広い構図の画面とシュールなインサートカットが印象的な一本で、デビュー作らしい作品でした。