くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「名もなき生涯」

「名もなき生涯」

美しい映像と独特のカメラワークで描く映像詩のような美しさのある一編、流石にテレンス・マリック監督見事です。

 

1939年オーストリア、第二次大戦で従軍していた農夫達は、フランスの敗北で一旦戻ってくる。ところが、ドイツから徴兵の依頼が来る。戦争で善良な人々を殺戮することが許せないフランツは招集に応じず、さらにヒトラーへの宣誓も拒否したために逮捕されてしまう。

 

残った妻フランチスカは、夫を信じひたすら過程を守ろうとするが、異端的な行動をとるフランツに村の人々の視線は厳しく、フランチスカも村八分のような仕打ちにあってしまう。

 

映画は、ひたすら自分の信念を貫くフランツの収容所での姿と、必死で田畑を守るフランチスカの姿を、時にイマジナリーラインを自由に行き来する独特のカメラワーク、かなたにそびえる美しい山並み、広がる麦畑、モノクロの戦場フィルムなどを交えて、映像で物語を語っていく。

 

ドイツの激しい言葉は字幕さえも入れず、その音程だけでその内容を表現させるという演出も多用し、フランチスカやフランツへの厳しい視線や態度は、細かいカットの積み重ねや聞こえるか聞こえないかのセリフだけで表現していく。

 

戦況は激しくなるものの、周りのさまざまな提案を拒否し続けたフランツは、死刑を宣告され、彼の処刑によって映画は終わっていく。泣き崩れるフランチスカの姿、広がる自然の山々、殺伐として収容所の壁など、まさに映像で語るとはこのことだと言わんばかりの傑作でした。