くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「野性の呼び声」「新宿アウトロー ぶっ飛ばせ」「大幹部 無頼」

「野性の呼び声」

犬がCGでなかったらもっと可愛くて自然に感動しただろうに、CGゆえの不自然な擬人化が気になって、今一歩のめり込めなかった。それと、物語の中心になるソーントンとバックの話までの前置きがちょっと長すぎてバランスが悪い。ラストの引き込みもちょっと弱い。名作原作というのは難しいなという典型的な仕上がりだった。監督はクリス・サンダース。

 

町の名士の飼い犬バックは、この日、パーティでいたずらしすぎてベランダに締め出された。ところが金を掘るブームが来ていて、北へ行くための犬ぞりの犬の需要が多く、犬買いに誘拐されて遠く北の町に連れていかれる。そこで、犬ゾリで郵便配達している黒人の男に買われ、犬ぞりチームに入る。間も無くバックは持ち前の頭の良さでチームのリーダーになるが間も無くして郵便制度がなくなり、犬ぞりの犬はみんなお払い箱になる。

 

バックたちを買ったのは欲に目が眩んだハルたちだった。たまたまその町に住んでいるソーントンの制止も聞かず、無理やり危険な森へ進むハル。間も無くして犬たちは疲弊し、短気を起こしたハルがバックを撃ち殺そうとしたところへ、駆けつけたソーントンに助けられる。

 

ハルたちは案の定命かながら戻ってくるが、一方ソーントンとバックは、ソーントンがかつて息子と目指した秘境の地へと向かった。ソーントンがその地にたどり着くと、そこは金が取り放題の場所で、しばらくソーントンとバックは楽しく過ごしたが、バックはその地の森狼と親しくなり野生の血が目覚めていく。

 

ソーントンはバックを残して去る決心をするが、そこへソーントンに恨みのあるハルがやってきてもみ合いとなり、ソーントンは銃で撃たれる。バックがハルを倒すもソーントンの命は消えていく。

 

やがてバックは狼のリーダーとなり家族もできるが、毎年ソーントンの死んだ小屋を訪れるようになりエンディング。バックがあまりにも擬人化しすぎているための感情移入できなかったのと、エピソードのバランスが悪いので物語がまとまってこないのが残念。でも、軽く楽しむには十分でした。

 

「新宿アウトロー ぶっ飛ばせ」

これはなかなかの一品、荒削りなストーリーですが全体が実に個性的でバイタリティあふれ、しかもテンポが実にいい。監督は藤田敏八ですが、冒頭から彼の色がくっきり出ていてものすごく懐かしかった。

 

主人公勇次が刑務所を出てくるところから映画が始まる。待っているのは松方という男。勇次はそんなこと知らず勝手にタクシーに乗り東京へ。松方が後を追い、勇次が降りたところでタクシー代を払ってやり物語は始まる。実は松方は勇次とは友達でもなんでもない。自分の女、笑子の弟が薬の取引で行方不明になり、横取りされた金と薬を取り戻そうと死神の異名のある勇次を誘った。

 

松方の周りには暴走族風の若者力哉らがいる。一方薬を横取りした組織の用心棒には、タチの悪いサソリという男が絡んでいる。松方らはそのサソリたちに戦いを仕掛けていく。

 

物語は単純で、あとはこの争いがバイタリティあふれるタッチとテンポ、さらに藤田監督らしい画面の構図と編集でスピーディに描かれていく。とにかく、退屈しないし、終盤、笑子が殺されてからの畳み掛けも肩が凝らずに素直に見ることができる。

 

オープニングの原田芳雄のカットとその後ろの渡哲也の構図からラストのヘリコプターで団地の間をすり抜けるシーンにかぶる「終」の文字も最高。これが藤田敏八監督全盛期の日活の魅力ですね。良かったです。

 

大幹部 無頼

渡哲也の無頼シリーズ第二作目。全体にまとまった仕上がりで、無難な作品で見応えありました。監督は小澤啓一

 

前作のあらすじが冒頭で語られ、主人公藤川が東北の姉さんの元を訪ねるところから物語は始まる。そこに雪子という女性がいて、さらに夢子という女性とも出会い、配役が出揃う。

 

どうしても金がいる藤川は気乗りしないながらも横浜の木内組の用心棒となる。その関わりで、先輩の浅見らとも再会する。あとは例によっての縄張り争いの中で恋が生まれ男と女の切ない出会いと別れがあり、ラストは浅見が殺されて、その仇に木内組組長を殺した藤川がバレーボールの練習をしているコートに傷だらけで転がり込んでエンディング。

この手のシリーズものでは群を抜いて完成度の高い作品で、見応えのある映画でした。