くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「虫女」「水女」「火女‘82」

「虫女」

聞きしに勝る怪作とはこういう映画を言うのだろう。カットのつなぎやカメラワークは尋常ではないのだが、音楽センスや物語の描写が抜きん出て人間離れしている。癖になる映像とはある方向では、こういうのをいうのかもしれない。監督はキム・ギヨン。

 

一人の男が精神病院にやってきて、どうやら不能になったらしいのだが、医師に青春とはなど訳のわからない講釈を聞くところから映画は始まる。

 

場面が変わり、女子校で一人の貧しいミョンジャがクラスメートの持ち物を物色していて先生に見つかる。帰ってみれば兄を大学に行かせるためにミョンジャにホステスになってくれと母に頼まれる。母もまた愛人生活の女だった。

 

ミョンジャはホステスになり、やがて一人の男キムと知り合う。キムは不能者で、妻が実業家でバリバリやっているので自分は見下されてダメになったのだという。間も無く、ミョンジャはキムに囲われることになるが、本妻に負けたくないミョンジャは、キムの妻と対決する。一方、妻はキムを所有する時間をミョンジャと折半する代わりに金を払うと契約する。

 

こうして、キムとミョンジャ、キムの妻の三つ巴線となるが、ミョンジャが妊娠することを恐れた妻はキムに無理やり避妊手術を受けさせる。キムとミョンジャは一軒家を手に入れるが引っ越してみると引越し先の冷蔵庫に捨て子がいて、キムとミョンジャは自分らの子供として育て始める。しかしこの赤ん坊は、お腹が空くとなんでも食べるらしく、キムの娘が送ったネズミを食べたりする。

 

ここまで描写されると、なかば笑いさえでてくるのだが、赤ん坊が地下室の下水の中のネズミの住処に入って行ったりわけがわからない。ところが、この赤ん坊が突然いなくなり、ミョンジャは、次第に狂っていく。そしてある時冷蔵庫を開けると、そこに凍った赤ん坊を発見する。

 

ミョンジャとキムの関係も微妙に溝ができ始め、キムの妻の立場も取り戻しつつあるが、キムの息子が出征することになり、最後の夜、ミョンジャらの家に何か送り物をしたということを母にほのめかす。やがてキムとミョンジャが夜を過ごしているが、ミョンジャはキムを取られないために、キムを階段から突き落とし殺す。そして自分も死のうとするが死に切れず、場面が変わると刑事が検証している場面となる。

 

冷蔵庫にあったのは赤ん坊の人形であったりとする真相もあり、ミョンジャが果たして正気であったのか等の不可思議さも臭わせながらのエンディングはなんとも言えない奇妙さあり作品で終わった感じです。まあ、特異な演出がいたるところに見え隠れするまさにカルト映画という感じでした。

 

「水女」

これもまた異様な映画で、一見、ヒューマンな感動映画かと思いきや、どこか歪んでいる。その展開を真面目に見ていいものかというような映画でした。監督はキム・ギヨン。

 

ベトナム戦争で負傷し足を引きずりながら主人公チンソクが村に帰ってくるところから映画は始まる。村にいる吃音の女と結婚することになり、間も無くして子供が生まれるが、その息子も吃音で、不憫に思った女の父は町の有名な聾唖学校へ連れて行く。

 

チンソクは妻の竹細工を事業にして成功し、やがてトラックの運転手を雇い、村を豊かにしていくが、その運転手は水商売の派手な女を連れてきて、村で水商売を始める一方で、二人でチンソクを陥れて事業を奪おうとする。

 

チンソクの妻は息子の吃音の原因が自分にあると、口を閉ざして喋らないことにするが、夫チンソクは水商売の女と浮気をしているのを知る。水商売の女は巧みにチンソクをたらしこみ、恋人の運転手を殺すように仕向け、チンソクは毒を飲ませて運転手を殺す。さらにチンソクの妻も殺すように水商売の女は巧みにチンソクを操るが、チンソクは妻を殺せずに戻ってくる。

 

そこへ聾唖学校から息子が帰ってきて、流暢に児童憲章を朗々と語り、村人たちも大合奏、妻も吃音もなく合奏し、チンソクは運転手らに騙されたことを知って映画は終わる。えっ?なんなんだという映画だった。

 

「火女’82」

傑作「下女」のセルフリメイクで、やりたい放題、笑ってしまうくらい異様な演出の数々にあっけにとられてしまいました。これもまたカルトですね。監督はキム・ギヨン。

 

養鶏場で成功している主人公の夫婦のところに一人の家政婦が雇われてくる。夫は音楽家で、養鶏場は妻が仕切っている。家政婦はきた時から子供達には見下げられ、さらに、夫は若い教え子と浮気をしそうな雰囲気である。

 

ある時、妻が実家に帰る用事があり、家政婦に夫の浮気に注意するように言われ、夫と若い教え子に強い酒を飲ませるが、酔った夫は教え子と間違えて家政婦をレイプしてしまう。

 

妊娠した家政婦は妻に巧みに堕胎させられたことをネタに夫婦を脅し、自分の好きなように夫との関係を続けていく。そして、自分にとって都合の悪い人間を殺そうとするのだが、そこかしこに、フェイクやこれでもかというブラックなネタをちりばめ、怖さよりも笑いが繰り返されていく。

 

人間を殺して鶏の餌にミンチにしたりする幻覚や、その鶏の卵を食べる下り、さらに息子に猫いらずを飲ませたかのように脅す家政婦の行動や、とにかく、大笑いするほどに面白い。

 

ラスト、夫と家政婦が猫いらずを飲んで心中。階段を引きづりおろしてくる夫のシーンからステンドグラスが次々と割れるシーン。その前の身体中に金属粉を塗ってのSEXシーンなど独特な演出も面白い。

結局妻と娘が生き残り、浜辺のシーンでエンディング。まあ、これもまたカルトの極みというゲテモノ映画でした。