「人間の時間」
描きたいことはわかるが、他に描写する方法あるだろうにと思う。食事の前後にはオススメしない映画ナンバーワンですね。とにかく、グロいのだが、全編グロいので、慣れてしまう自分が怖い。監督はキム・ギドク。
かつて軍艦だったが、退役後クルーズ船になっている船の甲板で映画は幕を開ける。新婚旅行で来たイヴとその夫、大統領候補の国会議員とその息子、この議員に取り入ってくるチンピラ、甲板の土を集める謎の老人などなどが航海しているが、チンピラを中心にした国会議員らの横暴に船内はギクシャクしたムードである。
船内のならず者たちが、まず客であるイヴらをレイプするところから事件が起こってくる。さらに目覚めると船は空を飛んでいて、何が起こったかわからない状況になる。そして、一番の危惧である食料に関し、国会議員と彼の取り巻きのチンピラ連中が船を牛耳るようになり、食料を搾取し、他の客を支配していく。
そんな中ひたすら集めた土に種をまいて植物を育て、卵からヒヨコを返して育てている老人がいる。いつのまにか恋人は殺され、イヴはこの老人のそばにいるようになる。船内ではどんどん諍いがエスカレートし、とうとう死人が生まれる。老人はその死体をバラバラにして砕き、土として植物の栄養にしていく。さらに死体が増えるに従い、死体に種を植えたりもする。
間も無くしてイヴは妊娠したことを知る。だれの子どもかわからない中、老人は無言でそのまま産むように促す。イヴをレイプした男の中には国会議員の息子もいた。
食料が尽き、人々は死体を食べながら空腹を紛らわせていく。そして老人とイヴ、国会議員の息子以外全て死に絶え、老人は自らの肉体をイヴに与え消えていく。国会議員の息子は耐えきれず、鶏を食べようとするがイヴは彼を殺す。間も無くして出産。
時が経ち船の上は植物で覆われ、イヴの子供も大きくなる。ある時、性に目覚めた息子は母イヴを追いかけて映画は終わる。まあ、そういうことなのですが、こんなグロテスクな描写が必要だろうかと思ってしまう。一方で、これくらいショッキングな描写があって初めて人間の業、自然の摂理が描けるのかもしれない。いずれにせよ、好きな映画ではなかった。
本来ドキュメンタリーは見ないけれど、三島由紀夫は個人的に興味深い人物でもあり、見に行きました。印象は、三島由紀夫の恐ろしいほどの頭脳のすごさです。監督は豊島圭介。
1969年5月、東大駒場キャンパスで、東大全共闘の学生千人に三島由紀夫が招かれ、討論の場に単身でやってくる。映画は、当時のニュースの映像に、生き残っている関係者へのインタビューを交えて描いていく。
学生側の意見を絶対に否定せず、それでいて持論を絶対に曲げず、巧みに切り返していく三島由紀夫の天才的な頭脳を目の当たりするにですが、繰り出される数々の言葉の理解には正直ついていけなかった。しかし興味深い映画だったと思います。
「ハーレイ・クインの華麗なる覚醒」
マーゴット・ロビー目当てだったし、気楽な娯楽映画のつもりで見に行ってるので、いいかといえばそれまでですが、アクションシーンがスピード感がないしキレがなく、スローモーションで安易に処理した演出が残念。さらに悪役であるユアン・マクレガーのサイキックな空気感が物足りなくて映画がしょぼくなった感じでした。監督はキャシー・ヤン。
ジョーカーと別れたハーレイ・クインは、最後に派手に思い出の化学工場を爆破。そんな時、ゴッサムを牛耳るシオニスは、高価なダイヤモンドを手癖の悪い少女カサンドラに奪われる。
さらに、家族を殺され復讐をして回っているクロスボーキラー、何かにつけて柄を横取りされる女刑事が絡んで、時間を前後させての交錯したストーリーで描いていく。
ハーレイ・クインのぶっちゃけたキャラクターが今ひとつ際立たない上に、サイケデリックなアクションに今ひとつキレがないので、雑に見えてくる。ただ、クライマックスの遊園地の場面からのローラースケートでのアクションシーンはハーレイ・クインのキャラクターが際立ってきて面白かった。
まあ、娯楽映画なので構わないけど、もうちょっと悪可愛キャラが度肝を抜くくらいならもっと楽しめたかもしれない。