くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ナイチンゲール」「淪落の人」

ナイチンゲール

うじうじダラダラとした鬱陶しい映画だが、映像の作り、構図、カメラワークの面白さなど、作品のクオリティはなかなかのものだった。監督はジェニファー・ケント。

 

イギリス植民地時代のオーストラリア、タスマニア地方、ある酒場でいかにも柄の悪そうなイギリス兵士が飲んでいる。一人の女クレアが歌を披露し、酒を注いで回る。クレアはアイルランド人で、盗みを働いて囚人だったが、イギリス将校ホーキンスに囲われ仮釈放になっている。夫エイデンも、赤ん坊もいるが刑期を終えても拘束されたまま、ホーキンスの慰み者だった。

 

クレアはは、解放を要求し、エイデンもたまりかねて二人で逃げようとするが、ホーキンスに見つかり、逆上してエイデンも赤ん坊も殺された挙句、ホーキンスの部下にレイプされる。殺されたかに見えたクレアは息を吹き返し、原住民のビリーを道案内に、街へ向かったホーキンスたちに復讐するべく後を追う。映画の前半は、ひたすら後を追うクレアのシーンとなるが、月や森の枝のショットなど幻想的なシーンが続く。

 

一方ホーキンスらは途中で原住民の女をレイプし、原住民に襲われ、道案内に使っていたビリーの叔父のチャーリーも殺して、途方にくれて森の中をさまよっていた。そこへクレアたちは追いつくが、クレアはホーキンスの部下の若い兵士は殺したが、そのあとホーキンスらに出くわしたクレアは、躊躇して逃げ出してしまう。

 

ビリーは捕まり、ホーキンスらの道案内をさせられ、街までの道に出たところで、ビリーは逃げる。一方のクレアもなんとか街までの道に出て、そこでビリーと再会。街に着くと、そこにホーキンスらを見つける。しかし、クレアは、ホーキンスを罵倒するだけで手を出さない。ビリーは原住民の姿になり、ホーキンスらを槍で殺すがその時銃弾を受ける。そんなビリーをクレアが助け出し、馬で逃げて浜辺まで行く。ビリーはそこで死んで、映画は終わる。

 

結局、クレアが周りの男たちを翻弄したようになる展開がなんとも言えないが、原住民を支配していく白人の横暴がテーマなのだろう。映像は見事だし、映画としては優れているのですが、ストーリー構成が特に後半引っ張った感じがしてちょっと残念。全体に暗い印象の作品でした。もう少し、クレアの復讐劇を生かして欲しかった気がします。

 

「淪落の人」

これは良かった。名優アンソニー・ウォンの人間味あふれる名演が映画を引っ張るのですが、余計な描写をカットした行間で語る脚本と演出がうまい。三時間ほど語れるボリュームの話を二時間ほどに凝縮した構成に引き込まれる作品でした。終盤涙が止まらなかった。監督はオリバー・チャン。

 

半身不随で車椅子生活をする中年男性のチョンウィンが新しい家政婦エブリンをバス停で迎えるところから映画は始まる。広東語の喋れないエブリン、英語の喋れないチョンウィンは、最初は意思疎通もできず、お互い落胆を隠せないが、フィリピンの家族のために必死で尽くすエブリンにチョンウィンも応えるように英語を勉強し始める。

 

時々、チョンウィンの友人ファイが訪ねてきては賑やかに毎日が過ぎるが、チョンウィンの妹とはなかなか意思疎通がうまくいかない。外国で暮らし医師を目指すチョンウィンの息子の成長がチョンウィンの楽しみでもあった。

 

ある時、チョンウィンは、エブリンの夢が写真家になること、大学進学も諦めたことを知り、高価なカメラをエブリンにプレゼントするが、エブリンはフィリピンの母に頼まれ、内緒で売ってお金を送る。カメラをなくしたというエブリンに、その事情を聞くことなくチョンウィンはカメラを再度プレゼントする。さらに、諦めた大学に入学できるように、エブリンの作品集を隠れて作り始める。

 

そんな時、エブリンは、応募した写真が入選し、その会場でチョンウィンは有名な写真家と知り合い、エブリンに黙って、チョンウィンはエブリンの夢を叶えるように、その写真家にエブリンの作品集を託す。そして、エブリンにパスポートを返したチョンウィンは、夢に向かうようにエブリンを送り出す。

 

映画の冒頭と同じバス停で、エブリンを見送るチョンウィン、そして、坂を去っていくチョンウィンの姿で映画は終わる。

久しぶりに心があったかくなるいい映画に出会いました。周りの登場人物がみんないい人だし、展開に無駄がないし、こうなればいいのにという思いが伝わっていく物語がとっても素敵。しかもアンソニー・ウォンの演技がとってもあったかくて、自分の人生に前向きになっていきます。勇気をもらえる映画に久しぶりに出会いました。