くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「娘は戦場で生まれた」「もみの家」

「娘は戦場で生まれた」

コロナウイルスの自粛で、映画館が新番組を出さないので、本来見ないドキュメンタリーを見る。シリア内戦の状況をスマホやカメラ、ドローンを駆使して描いた映像世界は、やはりリアルだし、母の目で捉える様々な悲劇の現実は胸に迫ってきました。監督はワアド・アルカティーブとエドワード・ワッツ。

 

女の子の赤ん坊のアップから映像は始まる。彼女の名はサマ、今回映像を撮っているワアドの娘である。時は2016年シリアのアレッポという街。画面は5年前に遡る。

 

ワアドはアレッポの大学に進む。そこで時の政権に反旗を翻したデモに参加。政府はロシアの援助を受けて強硬策にでくる。アレッポの街は、立てこもって政府に反抗を始めるが、政府軍は爆撃機などを駆使して熾烈な攻撃を進めてくる。

 

ワアドは間も無くして医師のハムザと結婚、そして娘サマが生まれる。ワアドはこの国の現実を世界に訴えるべく、スマホやカメラを使って映像を撮り始める。そこは1人の母親で、視点は子供たちの姿に集中している気がします。

 

平気で爆弾や死について話す子供、ワアドの娘サマも近くで爆撃の音がしても泣きもしない現実。病院に担ぎ込まれてくる怪我人は一般市民、特に子供ばかりが目立つ。政府は病院への攻撃も始め、一時は別の建物に移ったものの、とうとう街を捨てる決心をする。

 

そして廃墟のようになるアレッポの街の場面で映画は終わる。これが、世界のある地域の現実なのです。手持ちカメラだけでなく、大きく空中に俯瞰した映像はドローンでしょうか、映像のテクニックも駆使して、世界のある地域の現実を訴えてくるワアドの視点に、時に涙し、目を背けられない。シリア内戦についての知識は皆無に近いですが、これを機会に勉強してみたいと思いました。

 

「もみの家」

なんの変哲もない人間ドラマです。まあ、こういう映画も映画の中にはあるという一本でした。監督は坂本欣弘

 

不登校になって半年になる主人公の彩花は、母の勧めで田舎にある“もみの家”という施設に行くことになる。そこには、なんらかの問題で生活に支障のある若者たちが集まり、地元の田んぼで農業をして共同生活をしていた。

 

彩花はそこの人たちとの交流、農業の体験、淡い初恋、親しい人の死などを通じ、次第に心を開いていく。そして、現地にある高校に通うようになって映画は終わる。これというものもない一本ですが、余計なエピソードは詰め込まずにストレートに描いていく物語は素直で心地よいし、みなければ知らなかった世界を知ったような気がしました。